本稿は、市町村における伝統的工芸品産業に対する公的支援の現状について、全国1,719市町村を対象とする全数調査の結果をもとに、その傾向および今後の課題を抽出することを目的としている。具体的には、(1)市町村独自の条例等の整備状況、(2)各行政機関における業務分掌や他の行政機関等との連携と期待、(3)公的支援に関する木工品等とその他製品との差異等の三点に着目し、分析した。市町村が把握する伝統的な工芸品(合計941品目)について分析した結果、(1)独自の条例等を有しているのは全体の約10%の市町村に過ぎないこと、(2)約66%の行政機関において専門・専属の担当者は配置されていないが、当該市町村の属する都道府県と連携する市町村は約48%あり、それらの市町村では主に広報活動支援を中心に行っており、観光・地域振興面での期待がもたれていること、(3)市町村が行う公的支援には製品種による明確な特徴はみられないこと等が確認された。
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