持続可能な林業経営確立のためには林業の採算性を改善することが不可欠である。そのためには立木価格や素材価格の向上は検討しなければならない事項であることから、本研究では木材需要の中で需要量が多く単価も高い製材用素材価格を取り上げ、1990年代以降を主たる対象として人工乾燥や製材工場の経営に強く影響する製材歩留まりとの関係を解明することを目的とした。研究手法としては、まず統計調査データを用いて製材品価格、素材価格、立木価格の推移や製材工場を巡る状況の変化を分析した。その結果、1995年以降、プレカット加工率や人工乾燥材率の上昇、製材品の区分において角類が減少するなどの変化が同時に進行し、製材歩留まりが顕著に低下していることがわかった。
また、国産材製材工場において製材木取り等に関する聞き取り調査を行い、製材歩留まりが低下している実態を把握した。これらを踏まえて製材歩留まりの製材工場経営に及ぼす影響を試算すると、製材歩留まりが低下すると粗利益が減少すること、製材工場の付加価値率はほぼ変わらない水準にあることが明らかになった。以上から、製材工場は製材歩留まりの低下による粗利益の減少に対応して、素材の仕入れ価格を低下せざるを得ず、これが1995年以降の製材用素材価格下落の主な原因であると考えられることを指摘した。
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