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2023 年 29 巻 p.
0-
発行日: 2023年
公開日: 2023/10/31
ジャーナル
フリー
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甲斐 達也, 横尾 啓介, 中谷 祐介, 吉川 泰弘
2023 年 29 巻 p.
1-6
発行日: 2023年
公開日: 2023/10/31
ジャーナル
フリー
寒冷地河川の取水施設では,厳寒期に晶氷が多量に発生すると,取水口に晶氷が流れ込み取水停止に追い込まれる危険性が高まる.このような取水停止を未然に防ぐには,監視カメラなどで流下する晶氷の監視を行わなければならないが,24時間の監視体制となり,人的な労力の負担が大きくなる.そこで,本報告では廉価なトレイルカメラで撮影したリアルタイム画像を用いて晶氷検知の深層学習モデルを構築し,アラート配信することで,これまで作業員が目視で行っていた晶氷監視作業の省力化に資するモデルの構築を目指した.結果,モデルのIoU(Intersection over Union)の平均値が0.655と良好な結果が得られたことから,廉価なトレイルカメラの静止画でも晶氷監視には十分耐えられる仕様であることを確認した.
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大原 由暉, 茂木 大知, 村松 正吾, 早坂 圭司, 安田 浩保
2023 年 29 巻 p.
7-12
発行日: 2023年
公開日: 2023/10/31
ジャーナル
フリー
河道設計においては洪水のピーク時における流量の確実かつ正確な観測が不可欠である.しかし,常用される観測手法は昼夜と天候の影響を受けるためその実現は難しい.本研究では,可視光に依存しない地上マイクロ波レーダーから得られたエコーデータを用いた流量の定量化を試みた.まず,レーダーで測定されたノイズや誤差を含むエコーデータに対して信号処理を行い,ノイズ除去と欠損補間ができることを示した.信号処理後のエコーデータにSTIVを適用し,時空間画像と流速の横断分布を得た.この時空間画像中の流れに由来する縞模様は概ね同じ角度となり,エコーデータに対するSTIVの適用性が認められる.推定流速と横断測量データを用いて算定した流量は,2つの洪水において水文水質データベースで公開される流量と概ね一致する結果を得た.
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江口 翔紀, 大中 臨, 赤松 良久
2023 年 29 巻 p.
13-18
発行日: 2023年
公開日: 2023/10/31
ジャーナル
フリー
衛星リモートセンシングは,長期間および広範囲での定点観測が可能であり,河道内の地被状況とその経年変化を把握するために有用である.本研究では,8バンドを有するWorldview-2衛星画像の河川区域に対して,NDVI,決定木および深層学習を用いて地被分類(水域,植生,裸地)法を比較検討した.決定木および深層学習のモデル作成には,山口県の佐波川流域を撮影した衛星画像を用いた.また,モデル 作成に用いた衛星画像のリーチスケールと広域での精度検証を実施するとともに,山口県の島田川流域を 撮影した衛星画像に各手法を適用し,汎用性の検証を行った.これらの検証の結果,NDVIや決定木を用いた分類法は異なる地被カテゴリーの反射特性が含まれるミクセルにおける誤分類が顕著であった.また,深層学習を用いた分類法は,多様な反射特性を考慮でき,検討した手法で最も分類精度が高く,モデル作成に用いていない衛星画像へ適用した際も高精度な地被分類が可能であることが明らかとなった.
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國谷 岳, 手計 太一, 加藤 拓磨, 向山 公人
2023 年 29 巻 p.
19-24
発行日: 2023年
公開日: 2023/10/31
ジャーナル
フリー
令和4年7月,国土交通省は,河川上空を活用したドローン物流のさらなる活性化を目的とした実証実験を開始した.また,河川管理の分野においてもドローンの利活用が進められている.しかし,河川上空空間でのドローン等の自動航行には,河道の地形データも必要である.本研究では,河川が十分な河道幅と河道深さを有しドローンの飛行が可能な河道をドローンウェイと定義した.オープンデータである国土地理院の数値標高モデルを入力として,河川がドローンウェイであるか否かを簡便に判定するための,河道断面幅と河道深さを自動抽出するアルゴリズムを開発し,ドローンが河川上空を飛行するための情報(河川ドローンウェイデータ)の試作を行った.本研究の提案手法では河道断面ごとの標高値の変動係数を変数とする関数を利用することで,ある一定の精度で河道幅と河道深さを推定できることが示された.また,複数の河川を対象にして推定精度の比較を行った.本研究での提案手法では河道形状やその規模によって推定精度が大きく異なったため,本手法の適用範囲に関する検討も行った.その結果,特に河道幅が25m未満の矩形断面における本手法の有用性が示唆された.
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山本 亮介, 鈴木 準平
2023 年 29 巻 p.
25-30
発行日: 2023年
公開日: 2023/10/31
ジャーナル
フリー
本研究では,少ない労力で広範囲の河床材料を調査する技術の確立を目指して,3DスキャナやUAV-SfM測量等で河床表層材料の詳細な3次元形状データを取得し,これを自動解析して粒度分布を把握するための手法を構築した.そして,手法の妥当性を検証するため,実河川の複数地点で河床表層形状の3Dスキャナ計測やUAV-SfM測量を実施し,その解析結果をふるい分析や写真測定法といった従来手法による計測結果と比較した.その結果,本手法による粒度分布解析結果は,細粒径砂礫の測定に限界があるものの,従来手法による結果と比較的良く一致し,本手法を用いて河床表層材料の粒度分布を概ね正しく把握できること,UAV-SfM測量と組みあわせる事で広範囲の河床表層材料調査にも有効であることを確認した.
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西口 亮太, 善光寺 慎悟, 高木 康行, 一言 正之
2023 年 29 巻 p.
31-36
発行日: 2023年
公開日: 2023/10/31
ジャーナル
フリー
本報告では,機械学習を用いた流出解析において,画像解析を得意とするCNNを用いて,気象庁解析雨量のみを入力条件とする手法を提案し,江の川水系土師ダム流域を対象として検証を行った.また,入力条件となる解析雨量の時系列や空間分布の設定が,計算精度に与える影響について比較検討を行った.本手法では,過去48時間分の解析雨量データを入力条件に与えるだけで,実用上十分な精度で流量を推定可能であった.さらに,解析雨量データを合理的に平均化処理することで精度が向上することを示した.また,地上雨量による流域平均雨量を用いたDNNモデルより,解析雨量を用いたCNNモデルのほうが,高精度であることを示した.
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佐々木 章允, 渡邊 康玄, 井上 和哉, 森岡 洸太朗, 大島 省吾
2023 年 29 巻 p.
37-42
発行日: 2023年
公開日: 2023/10/31
ジャーナル
フリー
北海道東部の常呂川下流に位置する上川沿水位・流量観測所は浮子観測を行う橋梁が高水敷冠水時に使用不可能となるため,代替策として高水敷冠水後は約9km下流の河口付近の橋梁で浮子観測を行っている.しかし,代替地点は,本来の観測地点との距離が遠いだけでなく,河口に近いため潮位の影響を受け正確な流速・流量が観測できない等の問題があった.本稿では,これらの問題を解決するため,無人で夜間も連続して撮影可能な遠赤外線カメラの映像を画像処理型流速測定法(以下,画像解析)で解析する手法並びに,ADCP曳行観測,H-ADCPを用いる手法を実施し,その手法の組合せ等も加味して,流量算出手法の検討を行った.画像解析では一般的に用いられる更正係数0.85を使用すると当観測所では流量が20~30%程過小に算出されるが,対数分布則を用いることで画像解析,H-ADCP共にADCPとの差は数%程度となった.また,観測水位毎のksは横断方向にも時系列的にも変化していることが確認され,流量算出においては,この点も考慮する必要があることが明らかとなった.
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南 まさし, 吉武 央気, 井上 敏也, 松下 晃生, 松田 浩一, 旭 一岳, 宮本 仁志
2023 年 29 巻 p.
43-48
発行日: 2023年
公開日: 2023/10/31
ジャーナル
フリー
本研究では,UAV 写真測量のDSMに対して直接的な測地精度の向上を志向するのではなく,水理解析を介して洪水時の水位予測に資するための実用的なUAV写真測量のDSM活用手法を提案し,その検証を行った.具体的には,流水部におけるUAV写真測量に基づくDSM補正手法の複数提案,提案補正手法の実河川DSMへの適用,補正後のDSMを用いた平面二次元流況解析の実施,水理解析による水位の再現性検証,提案補正手法の汎用性に関する考察を行った.提案した手法を用いて河道地形を補正することにより,補正前と比べて水位予測精度が向上したため,UAV写真測量は洪水時の水位予測に資するための実用的なデータであることを確認した.また,提案手法を複数年度に適用した結果,水位予測の再現性向上が同様の傾向であった.よって,本提案手法に汎用性があると考えた.
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溝口 裕太, 手塚 透吾, 斉藤 展弘, 崎谷 和貴
2023 年 29 巻 p.
49-54
発行日: 2023年
公開日: 2023/10/31
ジャーナル
フリー
モウソウチク林を対象に,河道内植生管理の基礎情報である稈密度(立竹位置)と体積を推定するため,航空レーザ計測データの解析手法の構築を試みた.稈密度を計算する上で前提になる樹頂点抽出に関しては,その精度を意味するF値は最大で0.60,また,稈密度については,推定値と実測値の比は1.01倍になるなど既往研究と比較して高い精度が確認された.竹林の体積は,実測値と比べて1.68~1.70倍ほど過大に推定されたが,これは,数値表層モデルから求まる稈長の過大な推定が主因であることがわかった.一般には,植物の本数を精度よく推定するために樹頂点抽出手法の開発に焦点があてられるが,モウソウチクの体積を求める上では,稈長を精度よく捉えることの相対的な重要性が示唆された.
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宮脇 成生, 野村 大祐, 木下 長則, 鈴木 研二, 鈴置 由紀洋, 池内 幸司
2023 年 29 巻 p.
55-60
発行日: 2023年
公開日: 2023/10/31
ジャーナル
フリー
本研究は,河川域における植生図作成に用いる植生分類モデルの構築方法を検討した.渡良瀬川(34~44km)で取得した人工衛星画像(地上解像度0.5m),LPデータ,現地調査による植生区分のデータを用いて,機械学習(勾配ブースティング決定木)により植生分類モデルを作成した.ここでは,植生分類4区分(草地,樹林,裸地,水面)および7区分(イネ科高茎草地,その他の草地,ヤナギ類,ハリエンジュ,その他の樹林,裸地,水面)について,それぞれ特徴量に「植生高」を含めるモデル・含めないモデル(計4モデル)を作成した.解析の結果,4区分・植生高ありのモデルの分類性能指標macroF1scoreは0.976(中央値)と4つのモデルで最も高い分類精度を示した.この結果より,河川における樹木管理への用途において,衛星画像及びLPデータから作成する植生図が活用可能であることが示された.
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中田 一騎, 佐伯 雄一, 内田 龍彦, 松尾 大地, 阪上 健, 寺井 一弘
2023 年 29 巻 p.
61-66
発行日: 2023年
公開日: 2023/10/31
ジャーナル
フリー
太田川水系根谷川に設置されている観測桝で洪水中の土砂堆積高を測定するために,土砂動態の連続観測を安価に行うことができる計測装置を計4つの異なる計測パターンで比較,検討した.この装置は,ビニール袋(以下、袋体タイプと略)とゴムチューブ(以下、プレートタイプと略)からなり,観測桝の中央と観測桝の底部全域に設置した.計測装置の計測原理は,水で満たされた容器内と容器外に圧力式水位計を設置し,土砂堆積後の容器内の圧力計は堆積土砂の全応力を計測し,容器外の圧力計は間隙水圧を計測し,その差によって土砂堆積高を求める手法である.2022年の出水を対象に計測を行った結果,プレートタイプおよび袋体タイプの中央設置型では,適切に土砂堆積高を評価することができなかった.プレートタイプ全域設置型では,現地実験による補正式および時間減衰補正式を適用することで,ある程度土砂堆積高を評価することができた.袋体タイプ全域設置型では,キャリブレーションを必要とせず,土砂堆積高を評価することができた.
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林田 寿文, 河野 誉仁, 森 照貴, 中村 圭吾
2023 年 29 巻 p.
67-72
発行日: 2023年
公開日: 2023/10/31
ジャーナル
フリー
河道地形の3次元モデルを活用する河川CIMの普及が始まったが,現在,この技術が河道計画を検討する際に有効活用されているとは言いきれない.そのため,3次元モデルを使った一連の河道設計法を支援するツールの確立が重要な課題である.また,河道設計に利用されてきたソフトウェアは,主に洪水時における流れと河床変動に特化した解析手法であった.そのため,多自然川づくりで重要となる河川の自然環境や人の利用について,河道設計段階から検討するための支援ツールが不足していた.このような課題に対応するため,我々は「3次元の多自然川づくり支援ツール」の開発を進めている.本ツールは誰もが利用できるように無償で公開しており,河川管理者などに活用してもらうためセミナーなどを通じた普及活動を行ってきた.本報告は,以上の要点を紹介し,本ツールおよび河川CIMの推進に向けての活用について述べるものである.
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南 良忠, 藤田 一郎, 山内 翔太, 渡辺 健, 井口 真生子
2023 年 29 巻 p.
73-78
発行日: 2023年
公開日: 2023/10/31
ジャーナル
フリー
河川表面流を対象とした画像解析手法では,通常,河川監視カメラ等で斜め撮影した歪み画像を用いるため,河岸に設置した標定点(6個以上)の三次元座標を測量して画像の幾何補正を行う.しかし,この標定点関連作業は急峻な渓谷や河岸に樹木が繁茂した河川等では容易ではない.そこで,本研究ではスマートフォンやタブレットPCに搭載された高性能な加速度センターを活用することで標定点を使用せずに幾何補正を行い,オンサイトで直ちに画像解析を行いSTIVによる流速・流量計測が可能なシステムを開発した.開発機器について,室内試験でセンサーによるカメラパラメータの取得精度を検証し,また,実河川においてADCPの観測結果との比較等を行うことで,計測精度や適用限界を明らかにした.
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木村 延明, 皆川 裕樹, 福重 雄大, 馬場 大地
2023 年 29 巻 p.
79-84
発行日: 2023年
公開日: 2023/10/31
ジャーナル
フリー
本研究では,近年,洪水予測計算に利用されるニューラルネットワーク(ANN)について,転移学習を用いて,予測精度の向上に資する,網羅的な河川洪水の水位変化のパターン(特徴量)を学習した事前学習モデルを構築し,事前学習モデルを用いて,特定の洪水イベントについて予測精度の改善を試みた.方法について,まず,九州地方の主要河川で収集される洪水イベントの観測値を利用して,事前学習モデルを構築した.次に,複数の対象地点について,期間最大洪水イベント(TOP1)を除く洪水イベントの観測データでモデルを再学習し,TOP1の水位変化を予測した.予測結果について,再学習のための観測データが比較的多い場合には,再学習回数が多くなるほど収束し,事前学習モデルを利用しない従来型ANNと比べて,同程度か,多少の予測精度の改善が見られた.他方,再学習のための観測データが少ない場合に,事前学習モデルをそのまま利用すれば,大幅な予測精度の改善が見られた.加えて,複数の急激な水位変化が見られる洪水イベントの予測では,ピーク水位時の時間ズレが顕著になった.
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岡峰 奈津美, 此島 健男子, 米勢 嘉智
2023 年 29 巻 p.
85-90
発行日: 2023年
公開日: 2023/10/31
ジャーナル
フリー
近年,山地や市街地などを含めた水系一体でモデル化した洪水予測の運用事例が増加しており,これらの水位予測モデルの最適パラメータの探索にはSCE-UA法等の広域的探索手法が広く活用されている.その探索手法における再現精度の評価には,RMSEやピーク誤差等の指標が使われる事例が見られるが,それぞれの誤差の次元や取りうる範囲が異なるため,複数の誤差指標を均等に取り扱うことは難しい.そこで,複数の目的関数を評価する多目的最適化手法として,順位合成手法を提案した.また,洪水予測において継続的に精度向上を行うために,新たな経験洪水を取り込み,SCE-UA法を活用した追加学習手法を提案した.さらに,SCE-UA法の初期ポピュレーションの設定方法を工夫することにより,効果的に流出ハイドログラフの再現性を向上することが可能であることを示した.また,これらを実流域におけるRRIモデルを対象に適用し,有効性を実証した.
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池上 龍, 澤 海人, 杉本 博幸, 堀江 克也, 藤﨑 大樹
2023 年 29 巻 p.
91-96
発行日: 2023年
公開日: 2023/10/31
ジャーナル
フリー
近年,計画から施工データ作成までの工程におけるデータ不連続性を解消するため,ゲームエンジンやiRICソフトウェアなどを活用した検討ワークフローが提案されている.また,iRICソフトウェア等の川づくり支援ツールを活用して治水・環境の一体的な河道設計が試行されており,その有効性の確認や課題が報告された.しかしながら,これらツールを複合して活用した一連の検討フローを実河川において適用した事例は少ないため,一級河川の川内川の菱刈地区を対象として,その有効性の確認などを行った.
ゲームエンジンの活用により,目標とする川づくりのイメージ共有を図ることができ,iRICによって治水面・環境面及び維持管理面の多面的な観点を評価した河道設計が実施できた.また,一連で同じ三次元データを用いることで効率的な検討が可能となること,ICT施工への受け渡しにおける留意点を確認した.
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大中 臨, 赤松 良久, 宮園 誠二, 丸山 啓太
2023 年 29 巻 p.
97-102
発行日: 2023年
公開日: 2023/10/31
ジャーナル
フリー
本研究では効率的に河川水面下の表層河床材料を把握する手法を開発することを目的として,山口県の佐波川において水上・空中両用ドローン(Splash Drone 4:SPD4)を用いた現地調査と,画像から河床材料を自動で計測する画像解析手法(BASEGRAIN)を用いた画像解析を実施し,SPD4より撮影された画像と当該地点の水深から河床の粒径を計測する手法(WADPSM法)を検討した.その結果,WADPSM法は河床が確認できる場合,水深0.5m以上の水深において適用可能であった.また,得られた粒度分布は従来手法である面積格子法とほぼ同等の値を示し.SPD4とUAV写真測量を組み合わせることで河川内に侵入することなく,効率的に水面下の河床表層の粒度分布を把握できる可能性が示された.
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福丸 大智, 赤松 良久, 新谷 哲也
2023 年 29 巻 p.
103-108
発行日: 2023年
公開日: 2023/10/31
ジャーナル
フリー
本研究では,深層学習を用いて山口県全域の主要12河川を対象としたリアルタイム河川水位予測システムを構築し,令和4年台風第14号の増水を含む期間において,実際にシステムを運用し,その有用性を検討した.開発したシステムにより,リアルタイムのデータ取得から1~3時間先における流域一貫の水位予測結果の表示までを一体的に実施することが可能になった.また,各河川流域における精度検証の結果,1時間予測は流域全体で実測水位を極めて高精度に予測した.さらに,2~3時間予測に関しても上流域における3時間予測の再現性に課題はあったものの,中下流域においては立ち上がり時から逓減時の水位変化を良好に再現し,3時間予測における高水位時のNash係数は0.7以上,ピーク水位の誤差率(Jpe)は10%以下,ピーク水位発生時刻の遅れ(TE)は1.5h以下であった.したがって,このシステムにより3時間先までの中下流域の多地点における水位を概ね良好に予測可能であることが示された.
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大本 照憲, 張 浩, 濵砂 翔
2023 年 29 巻 p.
109-114
発行日: 2023年
公開日: 2023/10/31
ジャーナル
フリー
橋脚の局所洗掘に関する対策工としては,河床洗掘の防御のための保護工または強い下降流を伴う馬蹄形渦の制御が挙げられる.日本では局所洗掘の対策工として前者を採用する場合が多く,橋脚周りに礫を用いた透過型の捨石工やコンクリートブロックを用いた不透過型保護工を適用した研究事例がある.後者には,橋脚の形状を流線形に改善した事例や橋脚の上流にベーンや杭を設置した事例があるが,系統的条件では検討されておらず不明な点が多い.本研究では,環境負荷の小さい後者に着目し橋脚の直上流に導流工を設置して橋脚周りの馬蹄形渦および橋脚前面の下降流を抑制して橋脚の洗掘を低減させることを目的とした.実験結果から無対策に較べて導流工を設置した場合橋脚周りの最大洗掘深が約50%,洗掘孔の体積は約20%にまで抑制され,橋脚と導流工先端部の局所洗掘は,橋脚径の約4倍以上の流軸方向の長さであれば独立した形態をしめすことが明らかにされた.
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猪股 広典, 小関 博司, 新保 友啓
2023 年 29 巻 p.
115-120
発行日: 2023年
公開日: 2023/10/31
ジャーナル
フリー
洪水発生時において,橋梁橋脚が洗掘を受けて沈下する被災事例が増加している.本報告では,2019年以降に発生した6件の沈下被災事例について,航空写真や現地調査等を通じて被災要因の推定を行った.被災要因の推定の結果,調査した6件中4件が砂利区間における河道の二極化が被災の一因であると考えられ,これまで発生してきた砂利採取に伴う河床低下に起因する沈下,大洪水時の水位上昇に伴う取付盛土流出,橋脚・橋台の被災とは異なる被災形態として近年件数が増加していることが分かった.併せて,被害の防止・軽減に向けて今後必要となる事項について考察を行った.
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長田 健吾, 清水 義彦, 赤川 優太
2023 年 29 巻 p.
121-126
発行日: 2023年
公開日: 2023/10/31
ジャーナル
フリー
橋脚や橋梁欄干部に流木が堆積すると,その横断遮蔽効果により水位上昇とともに強い下降流が生じる場合があり,河床洗掘が発生することが指摘されている.このような河床洗掘は橋梁等の沈下・倒壊に繋がる可能性があり,洗掘形状や最大洗掘深を推定できることは災害予防の観点で重要である.本研究では,流木堆積に見立てた横断遮蔽物により生じる河床洗掘現象に関する基礎実験を実施し,その現象を説明できる解析モデルについて検討を行った.流体解析および流砂解析について,実用性を考慮した非静水圧モデルと非平衡流砂モデルをそれぞれ提案し,それらを組み合わせた解析モデルを構築した.本解析モデルは,既往の解析モデルと比較して実験の河床洗掘現象について再現性が向上することを明らかにした.
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西嶋 貴彦, 三好 朋宏, 三尾 奈々恵, 福島 雅紀
2023 年 29 巻 p.
127-132
発行日: 2023年
公開日: 2023/10/31
ジャーナル
フリー
吸出し防止材で堤防裏法面を被覆する粘り強い河川堤防の構造について,堤体の侵食を抑制する効果を確認するためには,堤体に作用する流速を適切に算定することが重要となる.吸出し防止材が堤体に作用する流速を低減する効果があることは指摘されているが,吸出し防止材の厚さや材質による違いは明確でない.そこで,本研究では,厚さの異なる複数の吸出し防止材や材質の異なる他のシート材を用いた堤防越水実験を行い,吸出し防止材で覆われた堤体裏法面に作用する流速を計測した.その結果,吸出し防止材の厚さが薄い場合や,吸出し防止材よりも空隙が大きいシート材を用いた場合には,流速を低減する効果が減少することが確認された.
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小池 進太郎, 田島 憲一, 田口 恵子, 天野 邦彦
2023 年 29 巻 p.
133-138
発行日: 2023年
公開日: 2023/10/31
ジャーナル
フリー
本研究では,直轄河川における堤防点検(目視点検)の記録を分析した.①平常時の変状の経年変化と②大規模出水後に発生した変状に着目し,それぞれの特性を明らかにすることを目的とした.10年分の点検記録から,経年的な状態(評価)変化を分析したほか,出水前後の継続変状に着目し,出水後の状態変化についてセグメント毎に分類して傾向分析を行った.加えて,点検記録を発生要因別に再分類し出水の影響について関連性を分析した.①の分析より,出水のインパクトを受けても悪化方向に変化する変状は少なく,適切に維持管理が実施されていることが判明した.②の分析においては,出水で発生・進行するような変状の変化は目視で確認できるものではなく,工学的解析等の必要性が明らかになった.
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山本 嘉昭, 宝藤 勝彦, 田口 恵子
2023 年 29 巻 p.
139-144
発行日: 2023年
公開日: 2023/10/31
ジャーナル
フリー
堤防の築造時等には法面保護を目的とした張芝が行われ,基本的に芝の育成を目的とした抜根等の養生工が行われる.しかしながら,高草丈の外来植物等が発芽や侵入により生育・繁茂すると,芝が被陰されて衰退する.芝の衰退や外来植物等の侵入は堤防法面の耐侵食力の低下,高草丈草本による堤防点検等の目視確認への支障等,堤防管理に影響を与えることになる.筆者らは,この様な問題解決のため,芝以外の植生の侵入・生育の要因として張芝及び堤防工事で用いられる土砂に着目した.
本稿では,施工直後における張芝及び土羽土からの発芽抑制に着目し,植調剤等を用いた高草丈草本等の発芽抑制及び張芝の保護が可能となる施工及び芝養生手法を提案する.
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島田 友典, 渡邊 康玄, 前田 俊一, 大串 弘哉, 長谷川 武春, 猪子 長
2023 年 29 巻 p.
145-150
発行日: 2023年
公開日: 2023/10/31
ジャーナル
フリー
河川堤防整備が進んでいる今日でも破堤などの大規模水害の発生リスクが高まってきており、例えば令和元年台風第19号による洪水では,全国の河川堤防308箇所から越水が確認され,破堤した142箇所のうち122箇所が越水によるものと推定されている.破堤に至る・至らなかった要因を明らかにすることだけでなく,破堤に至った場合であっても越水からどのように堤防が決壊し,破堤拡幅が進行するかを理解することは,破堤被害軽減技術を検討する上でも重要な知見となる.越水破堤現象の理解を目的に,堤体形状および堤体材料の相違に着目した模型実験を行った.これより越水から堤防決壊に至るまでは特に堤体材料の相違が,破堤拡幅段階においては特に堤体形状の相違が影響を与えることなどを示した.
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前田 俊一, 阿部 孝章, 横山 洋, 大串 弘哉
2023 年 29 巻 p.
151-156
発行日: 2023年
公開日: 2023/10/31
ジャーナル
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いわゆる粘り強い構造の河川堤防の整備が求められているが,越水対策としては堤防強化の他にも水防活動も考えられる.しかしながら,越水時に効果を発揮する堤防裏法面等をシートで被覆する水防工法(裏シート張り工)については,効率的なシートの敷設方法や越水時の堤防侵食の抑制効果に関する知見が不足しており,工法として未確立と言える.そこで本研究では,裏法面等をシートで被覆した断面二次元の模型堤防を直線水路に設置して越水実験を行った.まず,予備実験を行って裏法尻部平場のシート被覆長を決めた後に,シートの接合方法を変えた本実験を行い,シートの接合方法の違いによる越水時の堤防侵食量の違いを計測した.実験により,裏法尻部平場の被覆すべき範囲を明らかにするとともに,裏シート張り工が越水時に決壊を遅らせる一定の効果を有することを確認した.また,繋ぎ目処理の簡略化によりシート設置時間の短縮を図っても,十分な侵食抑制効果を発揮する可能性を示した.
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坂野 アイカ, 鈴木 克尚, 天野 邦彦
2023 年 29 巻 p.
157-162
発行日: 2023年
公開日: 2023/10/31
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河川管理においては,洪水時の外力に対して堤防や護岸等の安全性を確保することが必要である.本研究は,侵食・洗掘による破堤危険性を事前に定量的予測に基づいて評価する技術を確立することを目的とし,破堤に至る過程を個別の事象に展開したFault Tree図(以下,FT図)と平面流況計算を統合して危険性を評価する手法を提案するものである.まず,複断面河道を対象に,破堤に至る過程を整理してFT図を構築した.次に,流況計算と実績の比較により,堤体侵食・高水敷洗掘の発生を判断する閾値を設定し,FT図で示す破堤につながる重要な事象の生起可能性を評価することで危険性が高いと推定される箇所を抽出した.これにより,河道や河川施設の特性を反映して相対的に破堤危険性が高いと推定される箇所とその原因について抽出することが可能となった.本手法は一般性を持つもので他河川においても容易に活用することが可能であり,河川管理においても有用性が高いと考える.
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井澤 良太, 楠部 寧々, 岡村 未対
2023 年 29 巻 p.
163-168
発行日: 2023年
公開日: 2023/10/31
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河川堤防にパイピングが発生する洪水時の水位を予測する方法が研究され発展してきたが,予測法におけるパイプの形状の設定は依然として重要な課題である.多くの模型実験で実験終了後のパイプ形状は計測されてきたが,洪水中のパイプ進展に伴う形状の変化は明らかでない.本研究ではラインレーザーを用いた方法を開発し,パイプの進展に伴う形状の変化を計測した.その結果,洪水中のパイプ形状は,既往の研究報告のそれと特にパイピング幅が大きく異なることが明らかとなった.またパイプの縦断形状に関しては,パイプ先端部が6°程度の勾配を持っており,パイプ内の砂粒子の掃流条件には流れによるせん力だけでなく先端部ではこの勾配が影響していることが明らかとなった.さらに,せん断部の形状は,地盤の透水係数や層構造によらないこともわかった.
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澤村 直毅, 前田 健一
2023 年 29 巻 p.
169-174
発行日: 2023年
公開日: 2023/10/31
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河川堤防の強化工法の1つに矢板の設置が挙げられるが,現状その効果については不明な点が多い.そこで,本研究では河川堤防のパイピング破壊のメカニズムおよび矢板の効果解明を目指し,実スケールの浸透流解析および簡易模型実験を実施した.その結果,浸透流解析より,矢板は高水位の継続時間が任意の時間内であれば,地盤浸透を抑制する効果を発揮することが分かった.また模型実験より,矢板は噴砂発生を抑制する効果はないが,パイピング破壊に至る時間を遅延する効果があることが分かった.その評価方法としてパイピング破壊曲線(外水位の作用時間に対する堤防強度の疲労曲線)という新たな見方を導入した.これは矢板の効果を地盤損傷に影響を与えない最大の動水勾配の上昇幅と考えることができ,動水勾配とその継続時間によって定量的に判断できるという点において矢板の効果を評価する際に有効である.今後,実河川などにおいて矢板の効果を評価する際には,出水時の水位波形全体を考慮した上で漏水流量と地盤損傷の関係性を把握することが必要である.
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白石 芳樹, 田端 幸輔, 福岡 捷二
2023 年 29 巻 p.
175-180
発行日: 2023年
公開日: 2023/10/31
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流域治水では,洪水を緩やかに流下させることが求められるが,高水位が長時間継続するため,基盤浸透に対する堤防破壊危険性の評価と弱点箇所の対策が課題である.一般に,砂礫層の上に難透水層が被覆した互層構造では,洪水時に基盤漏水に起因した堤防被災が生じやすいが,火砕流堆積物によって形成されている川内川流域では,これまでに支川で噴砂が生じた他に大規模な被災は確認されていない.現状の堤体とその基礎地盤構造で大規模洪水に対しても安全であるかを工学的に判断し,必要に応じて対策を講じていく必要がある.本研究では,川内川流域を対象に本支川の土質構成,土質特性,堤防基盤脆弱性指標tb*を調べ,堤防破壊危険性を評価した.その結果,tb*は堤防基盤浸透現象に対する力学的相似条件であることが実証された.また通常の河川ではtb*>1かつUc*<3が,噴砂発生危険性の高い範囲となるが,シラスから構成される川内川では,tb*>2かつUc*<10が,噴砂発生危険性の高い範囲となった.
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津田 匠, 清原 正道, 井上 幸治, 大野 裕喜, 川崎 結菜
2023 年 29 巻 p.
181-184
発行日: 2023年
公開日: 2023/10/31
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九州地方整備局は,1級河川を20水系管理しており,長大な堤防,膨大な河川管理施設及び毎年変動する河道の点検・評価に毎年多くの時間と労力を要している.一方で,令和7年度までに管内の河川を対象に三次元河川管内図の整備を進めており,三次元点群データを活用した河川管理分野におけるDX(変革)も目指している.しかし,河川管理施設の点検・評価における最新の研究事例は,三次元データによる変状の可視化や検出,計測手法の技術的評価までに留まり,三次元河川管内図で構築された河川空間で点検・評価を行った事例報告はない.
本報は,九州三次元河川管内図で点検・評価を試行し,その実現性及び実装に向けた技術開発の方向性を確認したので報告する.
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八木 裕人, 伊川 耕太, 長内 博昭, 高岸 智紘, 井上 宏基, 藤沼 修
2023 年 29 巻 p.
185-190
発行日: 2023年
公開日: 2023/10/31
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国土交通省下館河川事務所が管理する鬼怒川・小貝川では,近年,堤防への竹の侵入により,除草工事及び堤防点検・巡視への支障,竹の根が堤体機能へ及ぼす影響が懸念されている.
本調査では,堤防に侵入した竹の抑制等の対策を試みるとともに,竹が繁茂する堤防において堤体への影響を把握するため,竹の根の実態を確認し,堤体への影響を検討した.その結果,堤防に侵入した竹の根は,侵入源である高水敷側が最も多く,天端に近づくほど少なくなり,根の深さは40cm程度までで,堤体内部への影響は小さいことがわかった.また,堤防に繁茂する竹については,除草の回数を3回以上とすることで対処が可能であり,視認性が確保でき,竹を抑制する可能性もあることが考えられた.
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梶川 勇樹, 加芽田 百合子, 茨木 琉汰, 和田 孝志, 黒岩 正光, 三輪 浩
2023 年 29 巻 p.
191-196
発行日: 2023年
公開日: 2023/10/31
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河道制御施設の計画では洪水流速等を考慮することが求められるが,実務で頻用される平面二次元解析では,河川合流部などの複雑な流れ場の流速等を適切に評価できていない可能性がある.そこで本研究では,鳥取県東部の千代川と八東川の合流部を対象に,地形解像度と流況モデル(平面二次元,三次元)の違いが流れおよび河床変動解析に及ぼす影響について比較検討した.結果,水位分布については流況モデル間での差は小さく,平面二次元でも十分な評価が可能である.水深平均流速については,平面二次元では解像度が低い場合に澪筋内の最大流速を半分程度にまで過小評価する可能性がある.三次元では解像度の高低による流速への影響は小さい.河床変動については,三次元を基準とした場合,平面二次元では全体的な変動量を過小評価し,特に二次流の発達する領域でその過小評価が強く表れる可能性がある.
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田端 幸輔, 大谷 周, 福島 雅紀
2023 年 29 巻 p.
197-202
発行日: 2023年
公開日: 2023/10/31
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固定堰が連続する区間では,土砂堆積に伴う樹林化,流下能力不足等が顕在化している事例が増えてきており,堰の改築や可動堰化,河道掘削等の対策が急がれる.しかし,堰の影響を受けて土砂が分級を伴いながらどのように堆積するのか,また,土砂境界条件の違いが土砂動態にどの程度影響するのかについて基礎的知見が十分に得られておらず,現状把握や対策実施後の予測が困難となっている.
そこで本研究では,砂,礫,石を含む混合粒径土砂の供給を可能とした水理模型実験により,堰が連続する区間の土砂堆積と分級の機構を把握した.また,河床変動モデルでどの程度現象を表現できるのかを確認し,再現性向上に資する計算条件設定法を提示した.
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柏田 仁, 二瓶 泰雄
2023 年 29 巻 p.
203-208
発行日: 2023年
公開日: 2023/10/31
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近年の河川分野では観測技術のDXが進む一方,解析技術もセットで河川技術DXに貢献すべきであるが,観測技術と比べて大きく出遅れている.本研究では,国内外における河川流・氾濫流解析モデルをレビューして,河川技術DXに資する解析技術の現況を調べることを目的とする.日本は河川流解析の論文数では世界3位であるが,3Dモデルの論文数の割合は米国や中国より低い.国内では,適用エリアとして河川が全体の9割を占め,氾濫域の適用事例が海外と比べて非常に少なく,氾濫解析の3D化は大きな課題である.3D/非静水圧モデルの適用区間長は最大20km程度であったが,Q3D/非静水圧モデル(BVC,Q3D-FEBS)はより長区間の河川流解析を河床変動計算も含めて実施しており,計算効率性と精度の面で優位性が示された.
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福岡 捷二
2023 年 29 巻 p.
209-214
発行日: 2023年
公開日: 2023/10/31
ジャーナル
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近年の大規模洪水の発生に伴う観測,解析技術の進展によって,新しい水理現象の出現や治水施設被害が認識され,これらに対応出来る非静水圧分布を考慮した準三次元運動方程式に基づく水理現象の解明と河道設計技術への適用が重要であることが認識されてきた.
本研究では,これまで行われてきた観測水面形に合致するように解析から準三次元運動方程式によって求めた三次元流速分布や圧力分布,水位分布の時空間的な値を洪水流のエネルギー方程式に導入することで,河道内の洪水流の三次元エネルギー分布を求め,その持つ意味について議論を行っている.この三次元エネルギー分布及びその勾配は,超過洪水を安全に流す堤防や河道断面形等河道設計のための重要な外力を与えることを示し,せんだん力など局所的外力に基づく従来の河道設計法には限界があることを述べている.三次元エネルギー解析法は,洪水流の作用するすべての外力項を考慮した解析法であり,これを用いた堤防と河道の一体的設計法の重要性とそれを用いた設計の一つの考え方を提示している.
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大森 大喜, 田中 耕司
2023 年 29 巻 p.
215-220
発行日: 2023年
公開日: 2023/10/31
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現在の治水計画では過去の降雨資料をもとに確率処理の後,降雨波形を計画規模相当に伸ばし,流出解析によって基本高水流量を決めている.しかし,治水計画で扱われる降雨は計画降雨継続時間内の流域平均雨量を用いており,降雨の時空間分布を厳密に考慮したものとなっていない.そのため,同じ総量となる降雨でも流出解析を介して得られる流量は幅があり,近年の災害を引き起こしてきた計画を超過する洪水に対して,降雨量との関係性を十分に説明することが困難な場合がある.本研究は,一事例として一級河川大和川水系を対象に,治水を目的とした合理的な降雨のサンプリングの検討を行った.従来の流域平均雨量に代わる,洪水到達を考慮した降雨を設定することで,洪水ピーク流量に直接寄与する降雨を扱った.これにより,従来では得られなかった降雨から流量への直接的な応答関係を議論することが可能となり,これまでの治水に潜在化する課題を解決する結果を得ることができた.
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宮園 誠二, 滝山 路人, 花岡 拓身, 宮平 秀明, 赤松 良久, 中尾 遼平
2023 年 29 巻 p.
221-226
発行日: 2023年
公開日: 2023/10/31
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国内外で在来魚類の減少が多数報告されており,水系全体の河川環境健全度を推定し,流域における魚類の保全を効率的に行うための河川保護区間の優先順位付けを行う必要がある.そのためには,広域の河川環境健全度を効率的かつ定量的に評価可能なモニタリング手法の開発が求められる.本研究では,環境改変が顕著である一級水系江の川の土師ダム下流を対象とし,環境DNA定量メタバーコーディングを用いて推定した魚類環境DNA濃度を基に,河川環境健全度(様々な生態的特性をもつ魚類が生息可能である河川環境の多様度)の指標となる生物的指数を算出し対象区間の河川環境健全度評価を行うことを目的とした.結果として,人為的な改変が相対的に少ない下流区間は,上流区間よりも多くの項目について生物的指数が高く,河川環境健全度が相対的に高いことが示された.また,上流区間においても,相対的に河川環境健全度が高い地点があることが明らかとなり,保護・修復すべき河川区間の優先順位付けが可能であることが示された.これらの結果から,環境DNA定量メタバーコーディングを用いて同一日,多地点観測により効率的な河川環境健全度評価が可能になることが明らかとなった.
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溝口 裕太, 赤松 良久, 宮本 仁志, 崎谷 和貴
2023 年 29 巻 p.
227-232
発行日: 2023年
公開日: 2023/10/31
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夏季と冬季の河川水温の感熱特性について流域規模での支配要因を明らかにするために,感熱特性を目的変数,流域,河川,気象に関する特徴量を説明変数としてRandom Forestを構築した上で,変数重要度分析と感度分析を実行し,感熱特性を説明する重要な特徴量の検出を試みた.その結果,冬季よりも夏季と年間において検出された特徴量が類似し,熱平衡偏差については針葉樹林と降水量,修正熱感度は主流勾配に一致がみられた.これは,夏季と年間の感熱特性の値の範囲が似通っていたことが一因だと推察された.このほか,修正熱感度は流域や河道の地形的な特徴量,熱平衡偏差は地形的な特徴量に加えて流域の質的な特徴量から説明されることがわかった.また,それら特徴量が河川水温に影響を及ぼす素過程は,水塊と大気との熱交換の時間や,河川流量の多寡を介した熱容量,基底流出の量や質に基づき解釈された.
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菅野 一輝, 篠原 隆佑, 中島 颯大, 村岡 敬子, 崎谷 和貴
2023 年 29 巻 p.
233-238
発行日: 2023年
公開日: 2023/10/31
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フリー
汽水域における環境DNA 調査では,捕獲調査との一致率が河川淡水域と比べて低いことが知られており,潮汐の影響や多様な岸際環境から地区を代表する採水箇所・採水タイミングの設定が課題である.本研究では,汽水域における調査精度を向上に資する情報を得るため,汽水域における時空間的な環境DNA の検出特性を把握することを目的とした.那珂川河口域の2km 区間内に9 地点を設定し,潮汐の異なる4 回(下げ潮,干潮,上げ潮,満潮)の採水を行い,MiFish法による環境DNA メタバーコーディングを実施した.検出された魚類相の類似性をNMDS により可視化した結果,下げ潮・干潮では地点間の魚類相が類似し,上げ潮・満潮では地点ばらつきが大きくなり,採水場所の空間的な違いより,潮汐タイミングによる時間的な違いが,環境DNA の検出種に大きな影響を与えることが分かった.また,検出種数は,干潮が満潮よりも有意に多く(P < 0.01),干潮と上げ潮・下げ潮の間には差がなかったことから,汽水域における採水は,満潮時を避け,干潮時を中心とした採水を行うことで,多くの魚種が検出しやすいと考えられた.
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谷口 裕美, 布川 雅典, 松木 悠弥, 工藤 光貴
2023 年 29 巻 p.
239-244
発行日: 2023年
公開日: 2023/10/31
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フリー
近年,防災を目的とした河川構造物の設置や河川改修が重要な施策となっている一方で,河川環境への人為的改変は生態系が激変すると問題視されており,双方の両立が課題となっている.河川生態系を支える底生動物群集は,河床の材料や流れ等をはじめとする物理的環境に影響され,単純な河床構造は底生動物の限られた種のみを優占させ群集の多様性を失う.そこで,本研究では,単一な河床での底生動物群集の多様性の回復技術を開発する目的で,人工河床の最適な物理構造と面積を調べるため野外実験を行った.本実験の結果から,底生動物群集の分類群数を高めるのは,一辺 2.5 cm 平方, 3 mm の厚さのタイルで操作された複雑性で,人工基質は一辺 15 cm 平方のサイズであった.本実験における人工基質の条件は,河川改修と生物群集保全の両立を図る河川技術として情報提供できると示された.
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小野田 幸生, 間野 静雄
2023 年 29 巻 p.
245-250
発行日: 2023年
公開日: 2023/10/31
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フリー
アユが河床を掘り返して河床内に産卵することを考慮すると,表層だけでなくその下層の河床材料を評価することが望ましいと考えられるがその知見は十分とは言えない.そこで,本研究では表層だけでなくその下層の「第二層」の粒径にも着目して,矢作川の中流域で8つの調査地点(A-H)を設定しアユ産卵場の評価を行った.アユ産着卵密度は2つの調査地点(E,F)で高く,シノの貫入深(約10 cm)が中程度であることが他の調査地点と異なった.河床材料については,表層粒径よりも第二層粒径の方が,アユの産着卵の有無との対応がよい傾向だった.また,第二層粒径とシノの貫入深との間には,全調査地点で相関関係が見られた.これらの結果は,アユの産卵場を評価する際には河床表層よりも河床内部の状態を計測することが重要であることを示唆する.河床材料の粒径に対する選好性の知見は,土砂供給に伴う河床環境の変化とそれに対する生物の応答の一連の評価に役立つが,アユ産卵場については表層だけでなく第二層の粒径についても知見を蓄積する必要があると考えられる.
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宮平 秀明, 宮園 誠二, 赤松 良久
2023 年 29 巻 p.
251-256
発行日: 2023年
公開日: 2023/10/31
ジャーナル
フリー
流域における外来沈水植物の季節的な繁茂特性を把握することは,季節を通して繁茂する外来沈水植物群落を特定し,繁茂抑制対策を考案するうえで重要となる.しかし,流域網羅的に外来沈水植物の季節的なモニタリングを行うには,多大な時間や労力を要する.そこで,本研究では,効率的な生物モニタリング手法である環境 DNA 分析を用いて,水系スケールにおける外来沈水植物オオカナダモの季節的な繁茂特性を検討することを目的とした.本研究では,オオカナダモの異常繁茂が報告されている江の川水系を対象に,環境 DNA 分析を用いてオオカナダモの生長期及び衰退期の繁茂状況の把握を行った.さらに,衰退期から生長期にかけたオオカナダモ環境 DNA の濃度差と環境要因との関係を検討した.結果として,土師ダム下流区間において環境 DNA 濃度の増加が大きく,オオカナダモ群落面積の増加が相対的に高い傾向がみられた.さらに,衰退期から生長期にかけてオオカナダモが河床勾配の緩やかで,休眠期の河川水温が相対的に高い河川区間で増加しやすいことが示唆された.
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滝山 路人, 赤松 良久, 小林 勘太, 宮園 誠二, 乾 隆帝, 中尾 遼平
2023 年 29 巻 p.
257-262
発行日: 2023年
公開日: 2023/10/31
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気候変動に伴う河川水温の上昇により河川魚類の生息域の変化や減少が予測されており,河川における魚類の多様性の減少を防ぐためにも,河川魚類と水温との関係を明らかにする必要がある.そこで,本研究では効率的に魚類の在・不在や密度を推定することができる環境DNA定量メタバーコーディング法を利用し,中国地方一級水系である太田川水系,江の川水系において複数魚種の環境DNA濃度と河川水温との関係を解析することで,各魚種における好適水温帯を推定することを目的とした.その結果,環境DNA定量メタバーコーディング法により検出された複数魚種について環境DNA濃度がピークとなる河川水温が確認された.また,魚種間で環境DNA濃度がピークとなる水温が異なり,魚類環境DNA濃度を用いて各種に固有に存在する好適水温帯が推定可能であることが示唆された.
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髙田 浩志, 佐藤 辰郎, 劉 義涛, 島谷 幸宏
2023 年 29 巻 p.
263-268
発行日: 2023年
公開日: 2023/10/31
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我が国ではこれまで,渓流再生工法として Step-Pool の石組み形状の形態を模倣し Step-Pool 形状を再生 する手法と Keystone を存置して流体力により Step-Pool を再生する手法の主に 2 手法が試みられている. 本研究では災害復旧において後者の理論に基づき Keystone(径 2-3m の巨石)の存置が行われた山附川に着 目し,河道地形変形と生物量が経年的にどのように変化したのかを明らかにするために、2009 年の竣工後, 3 年,10 年経過後の河道地形および生物のモニタリングを実施した.その結果,巨石をきっかけとして, 流送された礫を捕捉し,Step-Pool が発達することを確認した.魚類の個体数は年々増加しているが,近傍 の自然河川と同程度には回復していなかった.Keystone の存置による Step-Pool 再生技術は Step-Pool 構造 を十分に発達させており,Step-Pool 再生技術として有効であることが明らかとなった.
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森本 有祐, 立松 明憲, 福岡 捷二, 竹村 吉晴
2023 年 29 巻 p.
269-274
発行日: 2023年
公開日: 2023/10/31
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安倍川は中下流域に網状流路を持つ扇状地河川であり,洪水時における水衝部の移動機構の理解と予測が河川管理上の課題になっている.水深が浅く地形の起伏の大きい網状流路では,洪水時の水面模様に砂州の形状や水衝部位置等が反映されやすいと考えられている.両者の関係性の解明は洪水時における河岸の侵食危険箇所の推定等,危機管理上重要な情報になる.本研究では,安倍川網状流路を対象とした非静水圧準三次元洪水流・河床変動解析に基づき,洪水時の砂州の挙動と水衝部位置の移動機構,水衝部の移動状況と洪水時の解析水面の模様の関係を検討した.この結果,洪水減水期には流砂の非平衡性が強まり,砂州と水衝部の移動が活発になることを示した.さらに,洪水減水期では流れが砂州から澪筋へ落ち込む箇所の水面に線状の筋が形成され,水衝部の移動にしたがって水面模様も下流へ移動する傾向が見られることから,水面模様の時間変化から水衝部の移動状況が把握可能であることを解析と実測から示した.
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清家 拓哉, 渡邊 康玄, 濱木 道大, 大島 省吾
2023 年 29 巻 p.
275-280
発行日: 2023年
公開日: 2023/10/31
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北海道では,河床低下に伴う表層砂礫の流失により,侵食抵抗の小さい火山灰や岩盤が露出し急激に河床低下が進行する河川が増加している.低水護岸の機能喪失や橋脚の不安定化,産卵環境の劣化など河川環境への悪影響が顕在化しており,効果的な対策工法が求められている.このような状況の中,無加川では帯工群+巨礫による河床低下対策を段階的に実施中である.帯工は,経済性に優れかつ屈撓性の高い袋型根固めとし,既往の水理模型実験で提案された帯工下流の局所的な侵食防止にも対応する構造を採用しているが,本構造による現地での効果検証が不十分であった.
本研究では,段階施工中に実施したモニタリング結果に基づいた検証を行い,水理模型実験で提案された対策工構造の現地適用性,治水面環境面への効果を確認した.
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原田 大輔, 江頭 進治
2023 年 29 巻 p.
281-286
発行日: 2023年
公開日: 2023/10/31
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多量の土砂・流木を含む洪水氾濫が頻発する中,起こり得るハザードを予測するために,豪雨時に流域から流出する土砂・流木の量を推定する手法が求められている.本研究では,降雨-土砂・流木流出モデルを用いて土砂・流木の流出を解析する手法を示すと共に,2017年の九州北部豪雨時における寺内ダム流域を対象としてこのモデルを適用し,モデルの予測結果を左右する要素に対して適切な条件設定法を検討した.その結果,最上流の単位河道の勾配設定が解析結果を少なからず左右する要素であり,最上流の単位河道を土石流の堆積勾配の上限値に近い10度程度を含むように設定すれば,崩土の移動による単位河道への横流入と,流入した土砂・流木の単位河道での輸送過程を適切に評価できることを明らかにした.
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水口 大輔, 鈴木 克尚, 磯部 良太, 天野 邦彦
2023 年 29 巻 p.
287-292
発行日: 2023年
公開日: 2023/10/31
ジャーナル
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河道の維持管理を適切に行うためには,常に現在の河道が有する流下能力を評価する必要がある.しかし現状では,予算の制約下で,頻繁に全川を測量し流下能力の変化を把握することは困難である.そこで本稿では,河道の変化から将来的に流下能力低下の可能性が高い箇所を予め評価できれば,当該箇所の点検と管理を重点的に行うことによって流下能力低下を未然に防ぐことができると考え,既存の技術を再編し,重点的な点検の対象箇所を抽出することにより,効率的かつ効果的に流下能力の点検・評価を実施する新たな流下能力管理手法を提示した.
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