防災教育学研究
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1 巻, 1 号
防災教育学研究
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
  • 浦川 豪, 堀 芳美, 折橋 祐希, 福田 秀志, 難波 滋
    2020 年 1 巻 1 号 p. 5-18
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/10/19
    ジャーナル オープンアクセス
    災害が発生すると、学校は、生徒の安全確保、生徒の引き渡し、避難所の開設、運営支 援、教育の再開等、生徒や保護者の支援だけではなく様々な役割を担うことになる。災害 発生時は、地域社会の参画者の結束力が求められる。本研究では、住民、住民団体、行政 等をつなぐ結節点を地域防災・減災HUB と定義した。学校における防災・減災HUB 構 築の主要な要件を、①地域防災力向上に貢献するための地域参画、②学校防災体制の再構 築と継続的な運用とし、高等学校をフィールドとした実践的な取り組みを実施した。その 成果として、生徒と地域住民による「地域防災・絆マップ」作成、学校防災マニュアル見 直し手法及び訓練手法を提案することができた。
  • -全国規模アンケート調査の結果をもとに-
    柴田 真裕, 田中 綾子, 舩木 伸江, 前林 清和
    2020 年 1 巻 1 号 p. 19-30
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/10/19
    ジャーナル オープンアクセス
    日本の小学校,中学校,高等学校の防災教育の実情と課題についてアンケート調査によって明らかにした。 結果は次のとおりである。 1)防災教育を実施していない学校が非常に多く,その割合は,小学校が約20%,中学 校が約30%,高等学校が約40%であった。 2)ほとんどの学校で,防災教育の年間実施回数は,1 回から3 回程度であり,体系的な 教育がなされていない。 3)文科省が求めているような各教科による防災教育はほとんど行われていない。 4)教員の防災に関する知識が不足している。 5)防災教育教材の多くが受け身型の授業のための教材であり,教員が使用したくなるア クティブラーニング教材が少ない。
  • ―倫理の虚構性を超克するための理論的検討―
    近藤 誠司
    2020 年 1 巻 1 号 p. 31-41
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/10/19
    ジャーナル オープンアクセス
    日本社会では今、多種多様な防災教育がおこなわれており、まさに活況を呈しているかに見える。しかしこれは、間歇的に盛り上がりをみせる単なる社会の要請に過ぎず、喉元を過ぎればすぐに停滞してしまう危険性もある。こうした情況をふまえたときに、われわれはなぜ防災教育に注力するのか、その根拠を理論的に探究しておく必要がある。そこで本研究では、偶有性に根拠をもつ「倫理の虚構性」に限界や制約をみるのではなく、偶有性を倫理の土台に据えることによって防災教育実践のアドバンテージを見出す理論構築をおこなった。さらに、未定の価値を生み出すポテンシャリティを孕んだ防災教育実践こそが、まずもって現前の取り組み自体を賦活し、防災教育以上の価値あるアクションとなり得ることを示した。そしてさいごに、合理性・効率性を重視する道具主義的な防災教育観を超克しようとする最新の議論―“ コンサマトリーな防災” や“ すごす関係”―との接続を検討した。
  • -「備える防災」に焦点を当てて-
    古山 暢尋, 冨永 良喜
    2020 年 1 巻 1 号 p. 43-51
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/10/19
    ジャーナル オープンアクセス
    文部科学省は防災教育のねらいを3 つ挙げており、防災教育を行うにあたって、生徒に防災に関する「行動」を身に付けることがねらいであるとしている。しかし、学校教育において、防災「行動」を客観的に評価されているとは言えず、また客観的に評価する方法・尺度の開発にも至っていない。本研究では、まず中学生を対象とした評価尺度を開発し、外部基準の作成を行った。なお、評価尺度の質問項目の作成にあたっては地震・津波に関する防災行動に焦点を当て、地震・津波が発生する前の事前の「備え」に関する行動にしぼって質問項目を作成した。次に、その評価尺度を用いて394 名の中学生を対象にアンケート調査を行った。アンケート調査の分析では、質問項目の因子分析及び外部基準との関連を分析し、信頼性及び妥当性を検討した。その結果、評価尺度の質問項目は「家庭で行う防災行動」、「心理に関する防災行動」、「地域で行う防災行動」の3 つの因子で構成された。また、妥当性・信頼性も確保された。
  • ~災害伝承と命を守る防災教育の推進に向けて~
    桜井 愛子, 佐藤 健, 北浦 早苗, 村山 良之, 柴山 明寛
    2020 年 1 巻 1 号 p. 53-64
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/10/19
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文は、2011 年の東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県石巻市の学校での津波防災教育を事例とし、自然災害の記録をその災害で被災した学校での防災教育にどのように活用し、次の災害に備えることに役立てられることができるかについて検討した。2018 年に実践された津波防災教育プログラムの開発に至る背景と実践についての検証を通じて、被災地の小学生がどのタイミングでどういった条件が考慮されると、地域の実際の津波記録を学習することが可能になるのかについて考察した。授業で扱う教材には、地域の津波記録の標識や同学校の児童が2012 年から2014 年に取り組んだ地域の津波被害からの復興の進捗を記録した「復興マップ」が活用された。また、復興から防災へと教育内容が大きくシフトしたきっかけは、東日本大震災から5 年後に発生した津波警報の発表を伴った福島県沖地震であることも確認された。災害経験を教育でどのように扱うこと ができるかについての議論に一つの示唆を与えることができたのではないか。
  • ―和歌山県広川町・こども梧陵ガイドプロジェクト―
    近藤 誠司, 石原 凌河
    2020 年 1 巻 1 号 p. 67-79
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/10/19
    ジャーナル オープンアクセス
    日本社会では、過去の災害の反省点を生かした多種多様な防災イベントや防災学習が全国 で広くおこなわれている。しかし、その多くは防災の知識を一方的に教えこむ「知識伝達型」 に留まっている。そこで本研究では、これまで知識を一方的に教え込まれる立場にあった 児童たちが、学んだことを外部の他者に発信する体験型の防災学習を実施して、その効果 を検証することにした。2016 年度以降、4 年度にわたって、和歌山県広川町の小学6 年生児童と大学生が、津波防災施設「稲むらの火の館」で来館者に対して防災に関するクイ ズを出題しながらガイドをおこなう取り組みを実施した結果、参加した児童の防災意識が 高まり、将来も防災学習を続けていきたいという意欲が醸成されていることが確かめられ た。また、2016 年度にガイドの取り組みに参加した卒業生(中学3 年生)を対象とした ヒアリング結果から、防災学習を通して多様な主体と交流した記憶が「思い出」となって 長く保持される効果があることもわかった。
  • ―中学校社会科公民的分野単元「災害に強いまちのあり方を考えよう!」 の開発を中心に―
    井上 昌善
    2020 年 1 巻 1 号 p. 81-92
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/10/19
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、シティズンシップの育成を目指す防災学習の論理を、地域の防災に関するコミュニティの課題に着目し、災害に強いまちのあり方を探究する社会科授業開発を事例として解明することを目的としている。本学習の目標原理は、社会の課題解決を目指して公共的な議論ができる市民の育成である。この原理に基づく学習を構想する際には、外部人材の積極的な活用を通して多様な他者と関わる機会を保障することで、共助に関する課題 の解決策について議論を行うことができる公共空間を創出することが特に重要である。
  • 学習指導要領解説と学術書の分析から
    川村 教一
    2020 年 1 巻 1 号 p. 93-105
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/10/19
    ジャーナル オープンアクセス
    文部科学省による防災教育の目標の一つである自然災害等の原因について理解を深めさ せるために、理科教育において災害の誘因と自然素因の組み合わせの視点を学習者に持た せることが重要であると筆者は考える。そこで本研究では、理科の学習指導要領・解説の 記述内容を分析し、誘因と自然素因の視点に立脚した学習を展開するための課題を抽出し た。また、教員が教材研究で使用するような自然災害の専門家によって書かれた学術書に おける、災害の誘因と自然素因の記述状況を分析した。その結果、学習指導要領とその解 説には、自然災害の学習における誘因と自然素因に関する視点は、中学校における津波と 洪水を除いて見いだせなかった。また、学術書における誘因と自然素因の記述は、土砂災 害についてはよく見出せる一方、火山災害や強風害・冷害・干害などの気象災害ではあま り見られなかった。以上のことから、防災教育のねらいと整合性が改善するような理科の 教育課程の改善や、教材研究が効率よく行えるように災害現象における誘因と自然素因を 扱う学術書の充実が課題として明らかになった。
  • - A 中学校防災講座を事例として-
    木村 佐枝子, 前林 清和
    2020 年 1 巻 1 号 p. 107-118
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/10/19
    ジャーナル オープンアクセス
     本研究では、中学生を対象としてSDGs を活用した防災講座を実施し、防災学習やSDGs への関心の変化について明らかにすることを目的とした。その結果、以下の5 点が明らかとなった。 1.自身の地域に住み続けたいと思っている者は、災害が起きたときの被災状況に対する     想像力が高く、災害の被害に対する危機感を感じている。 2.自身の住む地域を「安全」であると思っている者は、社会や他人のために何かをしよ うという意識が高い。 3.防災学習を経験したことで災害が起きた際にどのようなことが起きるのか、どのよう な行動をしたらよいのかへの意識が高くなる。 4.家族に必要な水の量を考えることができると回答した者は、災害に対する関心が高い。 5.日本や世界の最新技術について関心を持つことができると回答した者は、災害に関し て不安に感じている。
  • -都道府県教育委員会作成の防災教育冊子の分析を通して-
    河野 崇
    2020 年 1 巻 1 号 p. 119-128
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/10/19
    ジャーナル オープンアクセス
     本論文は、都道府県教育委員会作成の防災教育冊子に掲載されている、防災教育展開例を収集し、分析することで、今現在の小学校で、どのような教育活動で、どのような内容の防災教育が行われているのかを把握し、その特徴を明らかにすることを目的とする。各都道府県教育委員会が作成した防災教育展開例を分析したところ、防災教育展開例として、①その地域独自の防災教育展開例、②各教科等と関連させた防災教育展開例、③避難訓を想定した防災教育展開例の3 つに分類できることが分かった。また、小学校で防災教育に関連した展開例を作成するには、学級活動、社会科、理科、生活科、総合的な学習の時間が主な対象教育活動となることが分かった。さらに、各教科等での防災教育を学ぶ内容の違いが明らかとなり、学級活動が震災対応そのものを学ぶ教育活動であることが明らかになった。
  • 川崎 典子
    2020 年 1 巻 1 号 p. 129-134
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/10/19
    ジャーナル オープンアクセス
    バヌアツ共和国は、World Risk Report で自然災害脆弱国の筆頭に挙げられ続けている。バヌアツにはハード面・ソフト面の両面での迅速な防災強化が必要だと言える。加えてバヌアツは、国連持続可能な開発目標を意識した基礎教育の改編による教育の質の向上に取り組んでいる。そこで本稿では、資料分析とここ数年に及ぶ現地調査の結果を基に、バヌアツの教育改革の内容について述べ、さらにはバヌアツにおいて必要なソフト面の防災強化の中核となりうる小学校での防災教育について考察する。
  • ―垂水日向遺跡中の鬼界アカホヤ火山灰―
    香田 達也, 佐藤 鋭一
    2020 年 1 巻 1 号 p. 135-140
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/10/19
    ジャーナル オープンアクセス
    神戸市垂水日向遺跡から新鮮な火山ガラスに富む火山灰が採取された。その火山灰は構成粒子の大部分が長さ1㎜未満のバブル型火山ガラスからなる広域テフラ(鬼界アカホヤ火山灰)であることが分かった。そこで筆者らはこの火山灰を教材として観察する、火山防災に向けた授業を行った。その結果大学生の火山に対するイメージが変容し、火山災害への防災意識の向上が見られた。本試料は活火山が存在しない地域における火山防災教育に向けて、貴重な教材となりえる。
  • 伊勢宮川中学校での防災教育実践
    河田 慈人, 竹之内 健介, 矢守 克也
    2020 年 1 巻 1 号 p. 141-152
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/10/19
    ジャーナル オープンアクセス
    日本では、社会的損失の大きな気象災害が頻発しており、気象庁も特別警報の運用を開始するなど防災情報の充実が図られてきた。しかし、より技術的で専門的な気象情報は、情報の受け手側である国民には必ずしも理解されていない現状がある。そこで本研究では、生徒たちが災害を「我がこと」として考えられるようになることを目指した「地域気象情報」を軸とした防災教育に関するアクション・リサーチを実施した。「地域気象情報」とは、気象情報をより地域性の高い、身近な表現を利用した情報に変換し、人々の生活と密接した情報とする考え方である。取り組みを通じて、災害と自分たちの生活を結びつけるようになり、「我がこと」として主体的に学ぶ姿や、そのような記述がみられるようになった。
  • 田中 綾子, 柴田 真裕, 前林 清和
    2020 年 1 巻 1 号 p. 153-154
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/10/19
    ジャーナル オープンアクセス
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