防災教育学研究
Online ISSN : 2436-6315
Print ISSN : 2435-9556
最新号
防災教育学研究
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 県間と学校種間の比較を通して
    齋藤 玲, 邑本 俊亮, 小田 隆史
    2023 年 3 巻 2 号 p. 1-23
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/11
    ジャーナル オープンアクセス
    震災9 年目における学校での震災学習に関する調査として、東日本大震災で甚大な影響を受け た被災三県(岩手県、宮城県、福島県)沿岸地域に立地する学校(小学校、中学校)を対象とし て行ったもの(齋藤・小田, 2021)がある。本研究では、齋藤・小田(2021)の調査を受け、県 間と学校種間の観点から、震災学習の違いについて明らかにするためにデータの再分析を行った。 県間比較の結果、a)原子力発電所事故は福島県が宮城県よりも、宮城県が岩手県よりもよく扱っ ていること、b)風評被害は福島県が岩手県と宮城県よりもよく扱っている(宮城県と岩手県との 間に違いはなかった)ことが明らかとなった。c)地震・津波等のメカニズムやこころのケアにつ いては、福島県では他県よりも扱う程度が低かった。学校種間比較において、d)震災伝承に関す る内容(被害の規模や復旧・復興の様子、伝承、学校区の様子など)は中学校よりも小学校のほ うがよく扱われていることがわかった。e)小学校では中学校よりも震災を知らない子どもが増え ていることを問題視しているが、児童・生徒及び保護者への心理的な配慮については学校種間の 違いは確認されなかった。これらの結果は、被災三県沿岸地域学校における震災学習の違いを示 している。今後の研究の展望として、最後に、縦断研究と事例研究の重要性と有用性について議 論した。
  • 瀨川 巖, 松山 雅洋
    2023 年 3 巻 2 号 p. 25-38
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/11
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、企業における防災教育や訓練を主とした防災への取り組みの実態と課題について、 その解決のために参考となる取り組みやいくつかの先進事例をもとに明らかにした。 自然災害によって被害を受けた経験のある企業が多いにも関わらず、防災への取り組み状況は、 学校や地域における防災への取り組みと比べて進み方が遅く、企業規模が小さくなるとその傾向 が強い。専門家を含めた人員の不足などが原因とされ、取り組みを進めている企業においても、 従業員への防災教育が課題であるとしており、専門家の養成・配置による取り組みが必要である ことが分かった。また、ハザードマップの活用やe- ラーニングなど新しい防災の教育技法を取り 入れるためにも専門家が必要である。
  • - 初期消火訓練を題材とした指導方略の考察-
    佐伯 潤, 月ヶ瀬 恭子, 梅山 吾郎
    2023 年 3 巻 2 号 p. 39-49
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/11
    ジャーナル オープンアクセス
    消防法や災害対策基本法において各種訓練が義務化されている状況からも、防災における訓練 の重要性は明白である。消火器を用いた初期消火訓練は、代表的な防災訓練の1 つである。その 初期消火訓練において、消火器の操作法のみに焦点が当てられたものも見受けられる点を課題と して着目した。本稿では、消火のエキスパートである現職消防職員へのアンケート調査を実施し、 安全性と実効性のある初期消火活動のために消火器操作の前後に必要となる行動内容を把握し、 その整理と教材化を試みた。あわせて、当該教材を用いて住民を対象に訓練を実施し、受講者の 訓練内容の定量的評価から、教材の検証を行った。これら一連の作業を通して、単なる資機材の 操作法の指導に終始しない、実効性の高い防災訓練の設計のあり方について筆者らの考えを述べ る。
  • 佐伯 琢磨
    2023 年 3 巻 2 号 p. 51-62
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/11
    ジャーナル オープンアクセス
    現在行われている防災教育は、子どもを対象としたものが中心であり、親世代にあたる大人を対 象とした防災教育は少ない。防災教育には、地震の発生メカニズムや避難方法などのほか、災害リ スクを低減させる耐震補強や家具固定、災害リスクを他に移転させる損害保険など、大人の理解 が必要なものが少なからず存在する。そこで筆者らは、親子で防災について学べるワークショッ プを実施した。本論文では、3 か年にわたるワークショップの成果と、今後の展開について報告、 および考察を行う。
  • -小・中学生と大学生との防災交流を通じて-
    猪股 雅美, 岩佐 佳哉, 横川 知司, 志方 宥紀, 橋村 侑希, 熊澤 綾乃, 田中 春香
    2023 年 3 巻 2 号 p. 63-74
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/11
    ジャーナル オープンアクセス
    平成30 年7 月豪雨で甚大な被害を受けた広島県では、県内の児童・生徒に対する防災教育が推 進されている。一方、多くが県外から進学してくるような大学生は、居住地域の自然災害リスク に対する理解不足により、災害時の避難が困難であると考えられる。そこで本研究では、地域の 自然災害リスクを理解させる防災教育実践を小・中学生に対しておこなった上で、大学生が多数 参加する大学祭において、小・中学生が大学生と互いに地域の自然災害についての理解を深め、 防災意識向上にもつなげられる相互型防災活動を企画した。質問紙によるアンケート調査に基づ くと、地域の自然災害リスクの理解度についての項目平均は、「とても理解できた」「理解できた」 が防災教育実践後の小学生で95.0%、中学生で96.4% であり、大学祭企画に参加した大学生では 84.4% と高い理解度を得た。周囲への防災発信意欲を問う設問では、小・中・大学生ともに、学 んだ防災知識を伝えたいという回答が9 割を超えた。大学祭企画へ参加した大学生が「今後取り 組みたいこと」として選択した対策項目には、小・中学生の発表・展示内容が反映されていた。 大学生の半数以上が「今回の取り組みの方が従来の防災啓発イベントよりも地域理解が深まった」 と考えており、次年度の大学祭でも同様の企画を希望したことから、大学祭企画での相互型防災 活動の効果が認められた。
  • -令和2 年度「ぼうさい甲子園」受賞校を対象として-
    岡田 遥, 石原 凌河
    2023 年 3 巻 2 号 p. 75-82
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/11
    ジャーナル オープンアクセス
    近年、災害の危険性が高まる中、多くの学校で多種多様な防災教育が展開されている。しかし、 2020 年から新型コロナウイルスが世界中で蔓延したことにより、多くの学校では防災教育の継続 が難しい状況に陥ったものの、コロナ禍でも工夫して防災教育を展開した事例も散見される。 本研究では、「令和2 年度1.17 防災未来賞ぼうさい甲子園」の取材記事を分析し、コロナ禍で も熱心に取り組んでいる学校防災教育の特徴とそれを可能にする要因について探った。その結果、 コロナ禍での学校防災教育の特徴を4 つに分類することができた。また、学校防災教育活動内容 とその活動で誰と深く関わって活動しているのかと、各学校が持つバックグラウンドと教育方針 がコロナ禍での学校防災教育の継続要因に影響を与えていることが示唆された。
  • ─授業前後の考えの変化の理由を中心として─
    岡田 大爾, 森下 淳, 石原 茂和, 岡田 寛明, 井山 慶信
    2023 年 3 巻 2 号 p. 83-94
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/11
    ジャーナル オープンアクセス
    土砂災害における住民の避難率の低さが大きな問題の1 つである。効率的な学習が可能な小中 高の防災教育の効果が疑問視され、最終段階の大学の防災教育の教育効果についての論文も少な い。そこで、大学の必修授業で1 年生に県の砂防の責任者の防災授業の前後に自身の防災意識を 自由に選択させ、意識の変化の理由を見つめさせて教育効果を分析した。最前線の専門家の対策 を学修後は自発的に社会的受忍の半数以上が施設整備や警戒避難、居住移転に変更する等効果が あったが、依然として自然災害の規模や予測の困難さから対策せずに災害を受け入れる学生も多 くいることが判明した。
  • - 千葉県・成田ジュニアストリングオーケストラ「災害と音楽」探究チームの挑戦-
    横内 敬文
    2023 年 3 巻 2 号 p. 95-102
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/11
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文は、長期化するコロナ禍において、「音楽は不要不急の存在」との世論から活動に大きな 制約を受け続けた成田ジュニアストリングオーケストラの高校生コンサートマスターが、自らの 演奏活動により地域の災害医療や防災教育・啓発が抱える課題解決に挑んだ探究活動の実践報告 である。地域災害医療サイクルの予兆期、慢性期、静穏期に対して地域のアマチュア音楽家が貢 献できることを考え、ジュニアオーケストラの仲間と地域探究チームを立ち上げて「演奏を通じ た防災意識の啓発(予兆期)」、「被災地での慰問演奏(慢性期)」、「アイヌ民族音楽による自然災 害の伝承方法を取り入れた新たな防災音楽てんでんこの開発(静穏期)」に取り組んだ。被災地に おける災害記憶や防災危機意識の伝承、音楽による被災者の癒しへの貢献など、地域防災や災害 医療で課題とされていることについて、高校生音楽家が自らの演奏活動により解決しようと活動 したものである。
feedback
Top