震災9 年目における学校での震災学習に関する調査として、東日本大震災で甚大な影響を受け
た被災三県(岩手県、宮城県、福島県)沿岸地域に立地する学校(小学校、中学校)を対象とし
て行ったもの(齋藤・小田, 2021)がある。本研究では、齋藤・小田(2021)の調査を受け、県
間と学校種間の観点から、震災学習の違いについて明らかにするためにデータの再分析を行った。
県間比較の結果、a)原子力発電所事故は福島県が宮城県よりも、宮城県が岩手県よりもよく扱っ
ていること、b)風評被害は福島県が岩手県と宮城県よりもよく扱っている(宮城県と岩手県との
間に違いはなかった)ことが明らかとなった。c)地震・津波等のメカニズムやこころのケアにつ
いては、福島県では他県よりも扱う程度が低かった。学校種間比較において、d)震災伝承に関す
る内容(被害の規模や復旧・復興の様子、伝承、学校区の様子など)は中学校よりも小学校のほ
うがよく扱われていることがわかった。e)小学校では中学校よりも震災を知らない子どもが増え
ていることを問題視しているが、児童・生徒及び保護者への心理的な配慮については学校種間の
違いは確認されなかった。これらの結果は、被災三県沿岸地域学校における震災学習の違いを示
している。今後の研究の展望として、最後に、縦断研究と事例研究の重要性と有用性について議
論した。
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