およそ1世紀前にオランダで『アーカイブズの整理と記述のためのマニュアル』が刊行された。本論は、マニュアル刊行以降のアーカイブズ考察の歴史の分析である。この過去の分析は専門職の目の前に新しい概念的パラダイムが姿を現していることを示唆している。ここではヨーロッパ、北アメリカ、オーストラリアのアーカイブズの伝統のなかで象徴的な主要思想家の考えをかれらが生きた時代の脈絡のなかで取り上げる。また、記録の性質、記録作成組織、記録管理体系、記録利用、社会のなかのより広い文化、法律、技術、社会、哲学の潮流などの根本的な変化、そしてアーカイブズ理論と実践にこれらの変化が与える影響を把握し、それを明瞭に論じ得た思想家に焦点をあてる。かれらの思想がわれわれ専門職の実践を活発に動かしていく集合的言説やメタテキストを形作るのである。また、過去100年にわたるアーカイブズ発展のなかから現れてくる5つの大きなテーマもそのなかから見えてくる。20世紀の潮流は、伝統的なアーカイブズ原則を、作成文書[そのもの]に焦点をあてることから、文書が作成される過程を優先させる営みに概念を再構成することと、国と人びとの集合的記憶を最善の方法で保存すること[の二つ]を将来にわたってすすめていく必要性があることを示唆している。
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