米国国立公文書館が大量の映像資料を所蔵していることは広く知られている。背景には、同館の設立に前後して、映画フィルムや録音物を受入れるために実施された数々の取り組みがあった。本稿では、特に1930年代から1940年代前半にかけて実施された諸策について、主に『国立公文書館年報』の内容を分析することで考察する。
この時期の特徴として、国立公文書館法により映画フィルムの受入が定められたこと、同法を根拠として専門部門及び専門職が配置されたこと、開館後すみやかに映画フィルムに係る諸策が実施されたこと、以上の3つを指摘できる。このような取り組みは、「公文書等の管理に関する法律」の施行により、記録媒体の種別を問わない文書管理が定められた日本においても共有できるものである。この時期の米国における試行錯誤のプロセスを知ることは、多様な媒体から成る記録を適切に管理し、保存するための制度設計の構築という点に、大きな示唆を与える。
抄録全体を表示