各種環境条件による冷温帯構成樹種の成長の仕方には樹種固有の反応があり, 特に共生菌類の活動に成長が左右される樹種では, 根圏の栄養塩類の存在形態や地上部のCO
2濃度にも大きな影響を受けることが解明された. 北海道に広く分布する蛇紋岩土壌のように貧栄養でニッケルなど有害元素を含む特殊士壌でのアカエゾマツの根の成長には, 外生菌根菌の活動が不可欠であることが示唆された. マンガン過剰障害は, 野生植物ではあまり問題視されてこなかったが, 生態系修復や陸域のCO
2固定機能向上のための緑化を進める基礎資料として主要な落葉広葉樹5種のマンガン耐性を調べたところ, シラカンバ類は高い耐性能力をもつことを実験的にも確認できた. この耐性樹種を用いて荒廃地の造林に貢献できると考えられる. さらに, 個体サイズの発達に合わせて栄養塩を指数関数的に与える方が, カラマツ類の根の成長を促したが, 施肥量を増やすとかえって低下した. 共生する微生物 (
Frankia) では, 寄主であるケヤマハンノキを高CO
2で生育させると栄養塩を制限したときには, 施肥処理個体と変わらない成長が見られ, 根粒の発達も著しかった. 将来の温暖化環境では共生微生物の生態系における役割が重要になると考えられる.
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