根の研究
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15 巻, 2 号
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  • 黒羽 剛, 佐藤 忍
    2006 年 15 巻 2 号 p. 47-53
    発行日: 2006/06/28
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    高等植物の根系は, 胚発生時に形成される主根, 主根から枝分かれして形成される側根, 胚軸や茎から形成される不定根によって構成されている. これまでに我々は, 根 (端) がより上側 (基部側) に生じる根の形成を抑制している「根端優勢」という説に基づき, 生化学的解析, 分子遺伝学的解析を通して不定根・側根形成制御機構の解明を試みてきた. カボチャ導管液から根形成抑制因子としてサイトカイニンの一種であるトランスゼアチンリボシド (ZR) が同定され, 根で合成されたサイトカイニンが導管液を介して上側に輸送されることにより, より上側での新たな根の形成を抑制していることが示された.また, 不定根・側根形成が異常なシロイヌナズナ突然変異体 wooden leg-3 (wol-3) 等の解析により, 正常なサイトカイニン受容が, 胚軸の維管束形成を通して側根形成を誘導するための茎頂から主根へのオーキシン輸送に必要であることが明らかになった. また, 主根や胚軸と不定根の維管束形成におけるサイトカイニンの機能に受容体レベルで違いがみられることも明らかになった. 以上の結果から, サイトカイニンは根における形態形成において組織, 器官レベルで多様な機能を持ち, 正常な根系の形成において極めて重要なはたらきをしていることが示された.
  • 佐藤 周一
    2006 年 15 巻 2 号 p. 55-61
    発行日: 2006/06/28
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    イネの大幅な単収増加をもたらす低投入持続的稲作技術であるSRI (System of Rice Intensification) は、1983年にマダガスカルで発明され、1999年以降広く世界で知られるようになった。SRI稲作の基本原則は、移植の際に乳苗を広い間隔で一本植えし、間断灌漑を行うことである。これまでに約20カ国で実証試験が行われ、多くの発展途上国で普及が進んでいる。東方インドネシアの灌漑農業開発を支援する円借款プロジェクト・小規模灌漑管理事業では、2002年からSRIを導入し、イネの増収を図り農民の所得向上を実現してきた。プロジェクト関係者の普及指導の下、4年間の通算で1,849農家1,364haの灌漑水田でSRIが実施された。その結果、平均モミ収量は慣行稲作 (対照区) では3.9トン/ha、SRI区では7.2トン/haであり、84%の増収を記録している。SRIではインドネシアの慣行稲作に比べて、灌漑用水量が約40%減り、肥料・農薬は半減し、生産費は25%以上節減できる。SRIは農民の所得を大幅に増やす。SRIでは慣行稲作に比べて水管理や除草の労力が増えるが、所得増大の強いインセンティブが働くため農民は実行する。このようにSRIの効果は確実であるものの、一方、SRIの理論的な解明は未だ行われていないため、施肥や水管理などの具体的な実施方法は、地区毎に試行錯誤で決めているのが現状である。今後、研究が進展しSRIの増収理論の解明に基づいた最適な技術体系が確立し、SRIの普及がさらに大きく進展することを期待したい。
  • 2006 年 15 巻 2 号 p. 66-89
    発行日: 2006/06/28
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
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