根の研究
Online ISSN : 1880-7186
Print ISSN : 0919-2182
25 巻 , 1 号
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ミニレビュー
  • 加藤 尚
    2016 年 25 巻 1 号 p. 5-13
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/22
    ジャーナル フリー
    イネ (Oryza sativa L.) はアレロパシー活性を持つことが,圃場での大規模な検証実験や実験室でのコントロールされた条件下で行われた多くの検証実験から明らかになった.イネのアレロパシーは,イネの根から周囲の環境にアレロパシー物質が分泌されることで起きていると考えられた.そのため,イネのアレロパシー物質を明らかにする研究も活発に行われ,多くの物質がイネのアレロパシー候補物質として同定された.それらの物質の中で,イネの水耕栽培液から分離され構造が決定されたモミラクトンBは,イネのアレロパシーに最も関与していることが明らかになった.モミラクトンBは,イネの全生活環を通してイネの根から分泌されていた.モミラクトンBの成長抑制活性と分泌量から判断すると,イネのアレロパシー活性の59~82%は,モミラクトンBだけで説明することができた.また,モミラクトンBを生合成できないモミラクトン欠損イネ変異体はアレロパシー活性を殆ど持たないことも明らかになった.このことからも,イネのアレロパシーにモミラクトンBが重要な役割を持っていることが示唆された.イネのモミラクトンBの生合成と分泌量は,紫外線照射,重金属,ジャスモン酸やエリシター等により増加することも分かってきた.また,イネをイヌビエ (Echinochloa crus-galli (L.) Beauv.) と共存させると,イネのアレロパシー活性とモミラクトンBの生合成と分泌量が増加した.イネはイヌビエの根から放出された何らかの物質を感受し,モミラクトンの生合成と分泌量を増加していることが分かった.このことは,イネはモミラクトンBの生合成と分泌を通してイヌビエとの生存競争で優位にたてることを示唆している.現在までのところ,被子植物のイネと苔植物のハイゴケ (Hypnum plumaeforme Wilson) においてのみ,モミラクトンBの生合成と分泌が確認されている.
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