根の研究
Online ISSN : 1880-7186
Print ISSN : 0919-2182
ISSN-L : 0919-2182
31 巻, 3 号
選択された号の論文の2件中1~2を表示しています
原著論文
  • 藏之内 利和, 高田 明子, 藤田 敏郎, 片山 健二, 西中 未央, 田口 和憲
    2022 年 31 巻 3 号 p. 83-89
    発行日: 2022/09/20
    公開日: 2022/09/26
    ジャーナル フリー

    干しいも加工用サツマイモ栽培時のマルチ畦被覆が,土壌水分やサツマイモ塊根の諸特性並びに加工特性に与える影響を,マルチ畦被覆区,収穫1か月前除去区,同2か月前除去区および無マルチ区の4種類の処理区を設け,晩植栽培により5か年にわたり調査した.サツマイモ栽培時にポリエチレンマルチにより畦を被覆することにより,降雨や乾燥に伴う畦内土壌水分量の変動が抑制されていることが確認された.晩植栽培において,マルチ畦被覆によって塊根の収量は増加することが明らかとなった.「タマユタカ」 の無マルチ区は他の試験区よりも裂開発生率が有意に高く,生育初期のマルチ畦被覆によって裂開発生率は低くなると考えられた.また,「タマユタカ」 では土壌水分の多い年次に裂開の増加が認められたが,この傾向は 「ほしこがね」 では認められなかった.干しいもの肉質は無マルチ区で最も粘質の傾向であり,収穫の約2か月前にマルチ被覆を除去すると干しいもの肉質がやや粘質化する可能性が示唆された.しかし,収穫の約1か月前に除去した場合は,干しいもの肉質に与える影響は小さいと考えられた.

  • 中井 勇介, 渡辺 慎一
    2022 年 31 巻 3 号 p. 90-97
    発行日: 2022/09/20
    公開日: 2022/09/26
    ジャーナル フリー

    近年,マイクロプラスチックによる海洋汚染が問題となっている.人工光型植物工場においても作物を栽培する際,プラスチック発泡体の一種であるポリウレタンフォームなどが培地 (ポリウレタンフォーム培地) として用いられていることから,可能な限り海洋生態系への悪影響が少ない資材を原料とした培地候補の選定が必要と考えられた.そこで我々は,間伐材を主な原料とするパルプ培地に着目し,機能性成分を含有するダッタンソバスプラウトの根の発達および地上部の生育にあたえる影響を調査することで,人工光型植物工場でのスプラウト生産にパルプ培地が利用可能か検討した.その結果,ダッタンソバスプラウトをパルプ培地上で栽培するとポリウレタンフォーム培地と比較して,総根長,最長根長,根長密度,比根長,出液速度,地上部新鮮重量,根の新鮮重量および根の乾物重量が有意に増加することが判明した.また,パルプ培地の含水量や三相分布を調査した結果,含水量はポリウレタンフォーム培地よりも3.89倍高く,三相分布 (気相,液相,固相) の割合がポリウレタンフォーム培地よりも作物栽培に適していた.以上から,パルプ培地は人工光型植物工場におけるダッタンソバスプラウトの栽培において適した培地であり,ポリウレタンフォーム培地に替わりえる培地候補であると考えられた.

feedback
Top