高等植物の根や茎葉などの諸器官は, 維管束系によって結ばれている. この維管束は節部と木部からなり, その主な構成要素である節管は地上部から地下部へ, 導管は地下部から地上部への物質輸送の経路を形成する事により, 個体全体としての発生や生理状態の維持に貢献していると考えられる. 導管は, 分化した後に死んだ木部細胞の細胞壁からなる細胞外空間で, この内部には導管液が流れており, この液体は導管を通じて植物体内に行き渡り, 植物体の全ての細胞に供給されている.
従来, 導管液には, 無機イオンや低分子有機物質のみが含まれると考えられ, 注目を浴びてこなかった. しかし, 近年, カボチャ導管液中には1mlあたり18.6μgものタンパク質が含まれ, SDS電気泳動によって分離すると, 低分子量から高分子量まで約50本ものバンドが確認できることが見出された (Satoh et al., 1992). しかしながら, これらのタンパク質のうち, 同定されたものはペルオキシダーゼのみであった (Biles and Abeles, 1991). 本研究では, 根や導管の個体機能における新たな役割を見出すことを目指し, 導管液中を流れるタンパク質の正体を明らかにし, 次にその産生部位を同定し, さらにその輸送される部位とその存在様式を解明し, 機能の推定を行う事を目的とした.
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