老年社会科学
Online ISSN : 2435-1717
Print ISSN : 0388-2446
31 巻 , 3 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
原著論文
  • 金 貞任, 鈴木 隆雄, 高木 安雄
    2009 年 31 巻 3 号 p. 331-341
    発行日: 2009/10/20
    公開日: 2020/10/20
    ジャーナル フリー

     本研究では,特別養護老人ホームの施設長を対象に,要介護高齢者の看取りケアの実施について施設長の判断に影響を及ぼす客観的要因と主観的要因に着目して規定要因を明らかにすることを目的とした.使用するデータは,全国特養の施設長4,678人を無作為抽出し,2007年8月に郵送調査法により調査を実施し,有効回答の1,637票(35.0%)が分析の対象となった.特養の看取りケアの実施を従属変数とするロジスティック回帰分析の結果,①客観的要因について,個室ベッド数の「15~36床」群と「37床以上」群のオッズ比にそれぞれ有意な差がみられた.平均要介護度認定では,「3.61~3.80」群のオッズ比に有意な差がみられた.1年間死亡者数の「7~10人」群と「11~14人」群のオッズ比にそれぞれ有意な差がみられた.②医療体制について,死亡診断書作成を含む医師体制と,24時間看護体制とのオッズ比にそれぞれ有意な差がみられた.③主観的要因について,介護職の看取りケアに対するレベルアップの必要性のオッズ比に有意な差がみられた.施設長の看取りケアに対する役割の認知は,「家族」と「医療機関」群のオッズ比にそれぞれ有意な差があり,看取りケアの実施に対して有意な関連があることが示唆された.

  • 森田 りえ, 長田 久雄
    2009 年 31 巻 3 号 p. 342-349
    発行日: 2009/10/20
    公開日: 2020/10/20
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,スティック型嗅覚同定能力検査法により,高齢者と若者の比較を行い,高齢者におけるにおいの主観的評価と客観的評価の特徴を明らかにすることである.研究協力者は,高齢者30人,若者30人である.手続きは,同定の得点を求める前に同定できるであろう数を見積の得点として求め,次に,12種類の「においスティック」を用いて同定の得点を求めた.その後,においを嗅いでいる状況を振返り,同定できたであろう数を振返りの得点として求めた.高齢者と若者との比較の結果,見積は高齢者のほうが高く,同定と振返りは高齢者のほうが低かった.高齢者においては,見積と同定,見積と振返りに差があったが,同定と振返りに差はなかった.以上,高齢者は,嗅ぐ前ではにおいの評価が同定の得点より過大であることが推測され,同定能力の低下がある場合,より危険や支障が生じる可能性があると考えられる.また,生活環境への予防対策とともに,同定能力に対する自覚を促すことは重要な視点であると考えられる.

  • 原田 謙, 杉澤 秀博, 柴田 博
    2009 年 31 巻 3 号 p. 350-358
    発行日: 2009/10/20
    公開日: 2020/10/20
    ジャーナル フリー

     本研究は,シルバー人材センターの退会に関連する要因を明らかにすることを目的とした.データは,全国279センターの現会員と退会者の男女,合計5,553人から得た.

     分析の結果,第一に「仕事仲間」および「発注者側の態度・対応」に関する満足度が高い者ほど,シルバー人材センターを退会する傾向が低かった.一方,「配分金」や「就業体制」に関する満足度は,退会とは有意な関連がみられなかった.第二に,センターで事務職の仕事を希望する者は,その他の仕事を希望する者に比べて退会する傾向が2倍以上であった.この影響は男性および三大都市圏において顕著であり,センターが受注する仕事と会員が希望する仕事のミスマッチの問題が示唆された.第三に,センター以外のところで就業している日数が多い者ほど,退会する傾向が高かった.この影響は,男性および地方圏において顕著であり,再就職活動の一環としてセンターに関与している高齢者の存在を示唆していた.

  • 石附 敬, 和気 純子, 遠藤 英俊
    2009 年 31 巻 3 号 p. 359-365
    発行日: 2009/10/20
    公開日: 2020/10/20
    ジャーナル フリー

     重度要介護高齢者の在宅生活の長期継続を可能にする要因を明らかにするため,愛知県内の居宅介護支援事業所利用者のうち「在宅で長期介護を受けている重度要介護者」(n = 325)と「在宅から施設入所した重度要介護者」(n = 102)の在宅時の状況を比較し,在宅の長期継続の有無を目的変数とする多重ロジスティック回帰分析を行った.その結果「日中の同居者」がいる場合は3.8 倍(p <.001),「家族関係」がよいほうが1.6倍(p <.05)長期継続の確率を高め,介護者の身体的負担が1ランク重くなると0.4倍(p <.001)に確率を低めていた.また,在宅継続への本人の希望が1ランク高いほど1.4倍(p <.01),家族の希望が1ランク高いほど2倍(p <.001),長期継続の確率を高めていた.その他,利用サービスの種類が関連しており,家族や利用サービスを含めた支援状況が在宅生活の長期継続に関連していることが示された.

  • ―― 生きがい概念と主観的幸福感の相違――
    今井 忠則, 長田 久雄, 西村 芳貢
    2009 年 31 巻 3 号 p. 366-377
    発行日: 2009/10/20
    公開日: 2020/10/20
    ジャーナル フリー

     老年学(含む社会老年学)における生きがい研究は主観的幸福感(Subjective Well-being;SWB)により代用されてきた.しかし,「生きがい概念」とSWBの相違はよくわかっていない.本研究の目的は,生きがい概念の構造(仮説)を構築し(研究1),その仮説を検証し(研究2),SWBとの相違点を考察することである.研究1では,60歳以上退職者を対象に因子構造を探索的に抽出しモデルを構築した.続く研究2では異なる集団を対象に確認的分析にてモデルの適合を検証した.最後に,先行研究を含めて概念整理を行い,SWBとの相違点を考察した.その結果,「生きがい概念」はSWBより広範な概念で,時間性では「未来」の方向に,関係性では「社会的」の方向に広がりをもっているといった相違点が明らかとなった.SWBを単に援用しただけでは,「生きがい概念」の独自の部分が見落とされる恐れがあり,両概念を区別することが今後の研究には不可欠であると結論した.

資料論文
  • 小林 江里香, 深谷 太郎, 菅原 育子, 秋山 弘子, Jersey Liang
    2009 年 31 巻 3 号 p. 378-389
    発行日: 2009/10/20
    公開日: 2020/10/20
    ジャーナル フリー

     高齢者への家族支援についての理解を深めるには,高齢者自身に加えて子ども側からもデータを得ることが有益である.本研究では,面接調査に回答した77歳以上の親(n = 823)を介して子ども(n = 2,136)に郵送調査への協力を依頼した調査において,回答した子(n = 685)の属性にどのような偏りがあるかと,回答者の偏りを補正するためのウェイトについて検討した.親から得た子どもの情報を用いてロジスティック回帰分析を行った結果,親の近くに住む子や,きょうだい数が少ない子, 介護者となることが期待されている子ほど回答者となりやすい傾向がみられた.この回答者となる確率を傾向スコアとし,その逆数をウェイトとした.種々のサポートについて,親から支援の提供者として挙げられた子の割合は,子ども調査の回答者では,未回収者を含む子ども全体に比べて高かったが,この差は,データ補正後は小さくなり,ウェイトの有効性が確認された.

feedback
Top