老年社会科学
Online ISSN : 2435-1717
Print ISSN : 0388-2446
32 巻 , 1 号
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原著論文
  • ―― パネル調査の分析を通して ――
    田代 和子, 杉澤 秀博
    2010 年 32 巻 1 号 p. 3-13
    発行日: 2010/04/20
    公開日: 2020/10/20
    ジャーナル フリー

     本研究は,高齢者と家族介護者を対象に,それぞれの特性がデイサービスの利用・非利用を予測できる要因であるか否かをパネル調査に基づいて明らかにすることを目的とする.要因としては,主として家族介護とデイサービスに関する態度や意識を取り上げ,これらの要因は初回調査において測定した.初回調査は高齢者・家族のペア104ケースに実施した.分析の結果,高齢者,家族介護者のいずれも,デイサービスに対する態度のうち利用による効果に対して否定的な考えをもっている人で利用の割合が低かった.また,高齢者については自立度が低い,経済的に苦労している,対人関係の面でサービス利用に抵抗がある場合に利用割合が低かった.以上の以外にも家族介護者の間では強い効果のある要因は観察されなかったものの,その結果は仮説を支持するものではなかった.

  • ―― 利用者・ケアマネ・ヘルパーの間を調整する役割葛藤 ――
    須加 美明
    2010 年 32 巻 1 号 p. 14-22
    発行日: 2010/04/20
    公開日: 2020/10/20
    ジャーナル フリー

     訪問介護のサービス提供責任者を対象として,そのストレッサー尺度の開発を目的に2回の調査を行った.構成概念を利用者との関係,ケアマネとの関係,ヘルパーとの関係,上司との関係, 仕事の忙しさ,知識技術の6因子で表わすモデルを設定し,探索的因子分析を行ったところ,2回の調査とも仮説どおりの因子が抽出された.また,モデルの評価のために確認的因子分析を行ったところ,モデルの適合度指標は十分な値を示し,構成概念妥当性が確認できた.基準関連妥当性を検討するためGHQ,バーンアウト尺度を外的基準としてストレッサー6因子との関連を調べたところ,いずれも有意な相関を示し妥当性が確かめられた.各因子の信頼性はCronbachのαが0.67〜0.93になり,ある程度の信頼性が確認できた.

  • ―― 介護予防継続的評価分析支援事業より ――
    山崎 幸子, 安村 誠司, 後藤 あや, 佐々木 瞳, 大久保 一郎, 大野 裕, 大原 里子, 大渕 修一, 杉山 みち子, 鈴木 隆雄, ...
    2010 年 32 巻 1 号 p. 23-32
    発行日: 2010/04/20
    公開日: 2020/10/20
    ジャーナル フリー

     特定高齢者を対象に閉じこもり改善に関連する要因を明らかにすることを目的とした.分析対象者は,厚生労働省介護予防継続的評価分析支援事業で収集されたデータベースから,初回調査時に基本チェックリストによって,外出頻度が週1回未満と判定された閉じこもり高齢者(n=274)とし,1年後の追跡調査時に閉じこもりが改善していた改善群(n=168)と非改善群(n=106)に分類して用いた.分析の結果,閉じこもりは,基本チェックリストのその他の要介護リスクである「運動器の機能向上」では約8割,「認知症予防・支援」「うつ予防・支援」とはそれぞれ約5割が重複していた.多重ロジスティック回帰分析の結果,具合が悪いときにいっしょに病院へ行ってくれる人がいること,認知的活動得点が高いこと,通所型介護予防事業(運動器の機能向上)への参加が閉じこもり改善に寄与していた.一方,訪問型介護予防事業(運動器の機能向上)への参加は,閉じこもり改善と負の関連が認められた.以上から,閉じこもり改善においては,通所型介護予防事業をより積極的に展開していくことに加え,訪問型介護予防事業における新しいプログラム内容の検討が示唆された.

資料論文
  • ―― 新しく開発した日本版老年的超越質問紙を用いて ――
    増井 幸恵, 権藤 恭之, 河合 千恵子, 呉田 陽一, 髙山 緑, 中川 威, 高橋 龍太郎, 藺牟田 洋美
    2010 年 32 巻 1 号 p. 33-47
    発行日: 2010/04/20
    公開日: 2020/10/20
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,日本人高齢者に適した老年的超越質問紙を開発し,心理的well-beingが高い虚弱超高齢者の老年的超越の特徴を検討することであった.10人の高齢者へのインタビューから質問紙を作成し,在宅高齢者500人(男性198人,女性302人)に実施した.因子分析の結果,「ありがたさ」「おかげ」の認識,内向性,二元論からの脱却,宗教的もしくはスピリチュアルな態度,社会的自己からの解放,基本的で生得的な肯定感,利他性,無為自然と命名された8因子を抽出した.次に,在宅超高齢者149人(男性51人,女性98人)をクラスター分析により高機能高well-being(以下,WB)群,低機能高WB群,低機能低WB群に分類し,質問紙の下位尺度得点を比較した.低機能高WB群は低機能低WB群より内向性,社会的自己からの解放,無為自然の得点が高く,宗教的もしくはスピリチュアルな態度の得点が低かった.これらの結果から老年的超越の一部の下位因子は心理的well-beingの高さと関連し,その低下を緩衝する可能性が示唆された.

実践・事例報告
  • 小林 尚司, 木村 典子
    2010 年 32 巻 1 号 p. 48-55
    発行日: 2010/04/20
    公開日: 2020/10/20
    ジャーナル フリー

     介護施設で看取りを行ううえで,新人介護職員へのサポートが課題である.サポートを検討する際には,介護職員の内面に注目し,看取りをどのように体験しているのかを明らかにすることが重要である.本研究では,特別養護老人ホームに勤務する新人介護職員4人に半構成面接を行い,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析し,新人介護職員の看取り体験の仮説モデルを作成し,モデルの活用によって考えられるサポートのあり方を検討した.その結果,新人介護職員は,看取りの経験から【自分の死の受け止め方の気づき】をもたらすと感じて,【看取りを経験することは有意義】であると,〔自分にとって看取ることの意味づけ〕をしていた.看取り介護の実施においては,【看取り介護の目標】を考えるが,【介護の行き詰まり】と【次の看取りへの不安】を感じ,【他のスタッフのサポートを期待】するというように,〔自分が看取り介護を行ううえでの課題と対処〕をしていることがわかった.これらから,新人介護職員へのサポートにおいては,介護職員と看護師でそれぞれ違う役割をになって,不安を解消することが重要であると考えられた.

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