老年社会科学
Online ISSN : 2435-1717
Print ISSN : 0388-2446
33 巻 , 3 号
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原著論文
  • ── 別荘地に移住した高齢者への5年間の追跡研究 ──
    斎藤 民, 甲斐 一郎, 杉澤 秀博, 柴田 博
    2011 年 33 巻 3 号 p. 385-394
    発行日: 2011/10/20
    公開日: 2020/02/10
    ジャーナル フリー

     別荘分譲地の定住高齢者を対象に,5年間の追跡研究から居住継続性とその関連要因を検討した.1997年に実施された調査(以下,初回調査)に回答の65歳以上男女242人(初回調査時平均年齢72.2歳,男性49.8%)を対象に,自治体の協力を得て追跡期間中の死亡および転出の有無とその発生時期を把握した.転出までの期間を従属変数とし,説明変数には,心身の健康,生活習慣,家族や子とのかかわり,地域とのかかわり,および住居・近隣環境要因を用いた.5年間の居住継続性は男性73.3%,女性75.2%であり,女性のほうが転出割合が高かった.Cox比例ハザードモデルによる分析の結果,高学歴,別居子からの支援,見晴らしのよい住居ほど転出のリスクが高く,男性,温暖な地域に居住,近隣に助け合う住民が多いと評価するほど転出のリスクが低かった.居住継続性の関連要因として別居子との関係性とともに近隣環境が重要であることが示唆された.

  • 木村 みどり, 山崎 幸子, 長谷川 美規, 安村 誠司
    2011 年 33 巻 3 号 p. 395-404
    発行日: 2011/10/20
    公開日: 2020/02/10
    ジャーナル フリー

     地域高齢者に対する運動器の機能向上プログラムの社会活動促進への介入効果について検証することを目的とした.調査対象者は,介護予防事業における運動器の機能向上プログラムに該当した地域高齢者322人で,週1回(120分)3か月間の運動教室に参加した者を介入群(92人),しなかった者を対照群(187人)とした.分析は,介入・観察前後の得点差から,「増加」と「維持・減少」に分け,運動教室の社会活動に対する介入効果について,性,年齢,今後やってみたい社会活動の有無を説明変数としたモデル1と,これらに腰・膝の痛みの有無を加えたモデル2を設定して,ロジスティック回帰分析を行った.なお,介入前の得点を調整変数として投入した.その結果,「社会活動合計」「社会参加・奉仕活動」は,介入群で有意に増加した.これらから,事前調査時の基本属性や腰・膝の痛みの有無にかかわらず,運動教室に参加することは,地域高齢者の社会活動の促進に寄与することが示唆された.

  • 吉江 悟, 栗原 直美, 立野 麻衣子, 大川 潤一, 小山 茂孝, 中村 真理, 牧野 雅美, 水村 美穂子
    2011 年 33 巻 3 号 p. 405-416
    発行日: 2011/10/20
    公開日: 2020/02/10
    ジャーナル フリー

     都内の全居宅介護支援事業所を対象として介護報酬加算の請求留保に関する質問紙調査を実施し,1,293票(回収率50.4%)を得た.留保の割合は,認知症/独居高齢者/初回加算においては20%未満と相対的に低く,退院退所/医療連携/特定事業所加算では30%超と高い割合であった.請求留保の関連要因は,事業規模が小さい事業所では留保割合が高く,経営効率の観点から悪循環に陥っている可能性が示唆された.また,医療施設併設の事業所や医療系基礎資格者が勤務する事業所では退院退所/医療連携/認知症加算の留保割合が低く,医師との連絡の取りやすさが留保割合に影響していると考えられた.さらに,留保の理由を検討した結果,留保の割合が高い事業所では面倒,苦手などの「主観的」な理由,低い事業所では「客観的」な理由が多く挙げられていた.事業所の経営改善を目指すうえでは,苦手意識等の感情と請求事務とを区別して臨む意識づけが重要と考えられた.

  • 前場 康介, 満石 寿, 飯尾 美沙, 藤澤 雄太, 竹中 晃二
    2011 年 33 巻 3 号 p. 417-425
    発行日: 2011/10/20
    公開日: 2020/02/10
    ジャーナル フリー

     本研究では,運動を実施している中・高齢者を対象として,運動実践を阻害するハイリスク状況とその対処方略,およびセルフ・エフィカシーとの関連について検討することを目的とした.211人の中・高齢者を対象として,ハイリスク状況およびその認知的・行動的対処方略に関する自由記述,またセルフ・エフィカシーの測定を含む質問紙調査を実施した.その結果,ハイリスク状況としてもっとも多く挙げられたものは「悪天候」であり,ついで「体調不良・怪我」「疲労」と続いた.また,認知的・行動的対処方略いずれについても,その内容は先行研究とおおむね一致していた.ハイリスク状況に対して肯定的な対処を実施している者は,否定的な対処を用いている者と比較して有意にその後に運動を実践した割合が高く,セルフ・エフィカシー得点も高かった.今後は本研究の知見に基づき,運動停止の予防に焦点を当てた研究が進められるべきである.

資料論文
  • 向井 通郎
    2011 年 33 巻 3 号 p. 426-435
    発行日: 2011/10/20
    公開日: 2020/02/10
    ジャーナル フリー

     本稿ではケアワーカーの腰痛の罹患状況を介護業務の内容とその実践上の方法に着目し質問紙調査を実施し検討した.対象者は介護老人福祉施設60施設に勤務する,1,191人のケアワーカーである.ケアワーカーの腰痛が問題視されて以来継続し腰痛有訴率が高く,この調査においても55%を超える者が腰痛を抱えながら業務に従事していた.また,17%の者は腰痛の罹患歴があるものの現在は腰痛の訴えがない.27%の者はこれまで腰痛に罹患することなく業務をこなしている.身体負担の大きい介助動作として排泄や入浴に伴う移乗・移動動作が負担となっていた.その介助の実施方法について,対象者との距離,立ち上がり後の姿勢の安定に配慮し実践がなされてはいるが,多くのケアワーカーは,「持ち上げ」により実施している実態が明らかとなった.また腰痛の軽減・予防を目指すうえでは,身体への負担が少なく,安全に配慮した介助技術を実践場面で具体的に伝達することが求められ,そのためには職員間の情報交換や教示の機会を増すことが有効であると考えられる.

実践・事例報告
  • 村上 智広, 望月 吉勝
    2011 年 33 巻 3 号 p. 436-443
    発行日: 2011/10/20
    公開日: 2020/02/10
    ジャーナル フリー

     北海道の内陸部に位置する人口約18,000人の一地方都市の住民で,要支援1〜2の軽度要介護認定を受けて介護保険サービスを利用している高齢者を対象に調査を行い,サービス種別に検討することでホームヘルプサービスを利用している要支援高齢者の特徴を把握することを目的とした.ホームヘルプサービス利用群33人と通所利用群45人の合計78人を分析対象として2群間で比較した.調査期間は2009年6〜9月であった.

     ホームヘルプサービス利用群は,通所利用群に比べひとり暮らしと,同居家族内に介護認定者のいる者の割合,抑うつ状態ありの割合が有意に高かった.社会関連性指標の「生活の安心感」とSF-8の身体的健康は,通所利用群に比べてホームヘルプサービス利用群のほうが有意に低かった.以上より,要支援認定を受けてホームヘルプサービスを利用している高齢者は,抑うつ状態の割合が高く,生活の安心感と身体的健康が低いという特徴が示された.

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