老年社会科学
Online ISSN : 2435-1717
Print ISSN : 0388-2446
34 巻 , 1 号
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原著論文
  • 河野 禎之, 山中 克夫
    2012 年 34 巻 1 号 p. 3-15
    発行日: 2012/04/20
    公開日: 2020/01/30
    ジャーナル フリー

     目的:施設ケア場面における高齢者の転倒の発生状況について,いつ,どこで,どのような転倒が起こりやすいのか明らかにすることを目的とした.対象:7高齢者介護施設に入所する146人.調査デザイン:後ろ向きデザイン.手続き:過去1年間の転倒事故報告書に基づいて調査した.結果:74人(50.7%),209件の転倒が報告された.場所では居室,転倒タイプでは立位/歩行からおよびベッド周辺での転倒が多く報告された.発生時間のピークは6時,9時,19時であった.1日の時系列に沿った分析から,夜間から日中にかけて,ベッド周辺での移乗に伴う転倒から居室以外での活動に伴う転倒が増えることが示された.また,起床や就寝,朝食やお茶,夕食等,移動を伴う活動の際に発生しやすいことが示された.考察:施設での生活の流れに沿って転倒の発生しやすい状況が変化すると考えられた.今後,生活の流れを考慮した転倒防止が必要と考えられた.

  • ―― 現実,期待,そのズレと主観的幸福感の関連 ――
    和田 実
    2012 年 34 巻 1 号 p. 16-28
    発行日: 2012/04/20
    公開日: 2020/01/30
    ジャーナル フリー

     本研究は,高齢者の同性友人関係(現実と期待する友人との関係性)とその性差を調べた.さらに,現実と期待する友人関係,およびそれらのズレと主観的幸福感との関連を調べた.調査対象者は,59〜84歳の男性337人,女性377人であった.友人との関係性についての因子分析の結果,気楽な関係と有用な関係の2つの因子が抽出された.男性と比べて,女性の現実の友人関係は気楽で,有用なものであった.そして,女性は男性よりも友人関係に気楽な関係と有用な関係を期待していた.現実の友人関係が気楽であり,有用である者ほど,主観的幸福感は高かった.また,気楽な関係を期待している者ほど,主観的幸福感は高かった.これらの結果に性差はなかった.有用な関係の現実が期待以下の男性よりも,現実が期待以上の男性のほうが主観的幸福感が高かった.これらの性差について考察した.

  • 加瀬 裕子, 多賀 努, 久松 信夫, 横山 順一
    2012 年 34 巻 1 号 p. 29-38
    発行日: 2012/04/20
    公開日: 2020/01/30
    ジャーナル フリー

     本研究は,認知症の行動・心理症状(Behavioural and Psychological Symptoms of Dementia;BPSD)に対し効果的な介入行動の傾向を明らかにすることを目的としている.質問紙調査により収集したBPSD改善事例130を,多重コレスポンデンス分析を用いて分析した.

     分析の結果,BPSDの内容と効果的な介入行動は,4群に分かれた.第一群は,行動性・攻撃性のあるBPSDであり,落ちつかせる介入が効果に関連していた.第二群は,混乱と失見当識への対応が主要課題であるBPSD群で,その改善には,社会性と能力活用を刺激する介入が関連していた.第三群は「幻視」等生理学的な原因に由来するBPSDであり,対立を避けつつメリハリのある生活をめざす介入が効果に結びついたことが明らかになった.第四群からは,被害妄想改善には聴覚の低下を補完する介入の効果が示唆された.

資料論文
  • 澤岡 詩野, 古谷野 亘, 本田 亜起子
    2012 年 34 巻 1 号 p. 39-45
    発行日: 2012/04/20
    公開日: 2020/01/30
    ジャーナル フリー

     高齢者の他者との日常的な交流の実態を明らかにするために,「会って話をした」他者について記述・分析した.調査は,東京都杉並区に居住するひとり暮らし後期高齢者を対象に訪問面接法により実施された(回収率56.2%).

     分析の結果,①多くのひとり暮らし後期高齢者は非親族との交流を有していること,②交流のある非親族では「近所の人」と「友だち」が多く,そのため他者の多くは,よく話をしたり,名前と連絡先の両方を知っている人であること,③それらの他者との間で話されるのは軽いあるいは習慣的な事柄であることが多く,情緒的サポートの授受はわずかなこと,そして④日常的に交流する他者のなかには役割のうえの関係のみを有する非親族もまた多く含まれていること,が示された.

  • ── その心理社会的適応メカニズムの解明に向けて ──
    小澤 義雄
    2012 年 34 巻 1 号 p. 46-56
    発行日: 2012/04/20
    公開日: 2020/01/30
    ジャーナル フリー

     Erik Eriksonによって提唱されたGenerativity,すなわち生み育てることと心理社会的適応との結びつきをとらえる概念に関する研究は,社会科学諸分野にて精力的に取り組まれてきている.そのなかで,Generativityは,Eriksonが当初想定した中年期にとどまらず,老年期にかけてまで,人間の生においてさまざまな意味をもつことが報告されるようになった.しかし,その背後にある心理社会的適応メカニズムについては十分な解明が進んでいない.本論では,老年期のGenerativity研究が心理社会的適応の問題を扱うための枠組を明確化することを試みる.まず,中年期のGenerativityの概念およびGenerativityと心理社会的適応を結びつけて検討した実証研究の動向を概観し整理する.次に,老年期のGenerativityに関する議論と実証研究を概観し,心理社会的適応のメカニズムを検討するうえでの課題を明らかにする.最後に,老年期のGenerativityの心理社会的適応メカニズムを明らかにするために,Narrative approachの枠組みに対し,高齢者の思考が有する時制の特徴を踏まえ視座を与える.

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