老年社会科学
Online ISSN : 2435-1717
Print ISSN : 0388-2446
38 巻 , 1 号
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原著論文
  • 佐藤 美由紀, 齊藤 恭平, 若山 好美, 芳賀 博
    2016 年 38 巻 1 号 p. 3-20
    発行日: 2016/04/20
    公開日: 2019/11/15
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,地域社会における高齢者の役割を見直すことにより社会参加を促進するヘルスプロモーション・プログラムにおける地域課題の解決に向けた住民の意識と行動の変化の過程を明らかにすることである.研究はアクションリサーチの手法により実施した.札幌市近郊の一地区において,住民を対象とした参加型ワークショップ等を実施し,ラジオ体操,公園清掃ボランティア等が住民主体により創出された.フィールドノート,インタビュー逐語録等の多様なデータを質的記述的方法により分析した.住民の変化は,【義務的参加とアンビバレントな気持ち(第一段階)】から始まり【課題解決の方向性に対する合意形成とコアメンバーの選出(第4段階)】を経て【コアメンバーの組織化と自治会との協働(第8段階)】までの8つの段階をたどった.このような8つの段階の推移が抽出されたことにより,高齢者が主体的に地域課題の解決に取り組む様相が明らかになった.

  • 須加 美明
    2016 年 38 巻 1 号 p. 21-31
    発行日: 2016/04/20
    公開日: 2019/11/15
    ジャーナル フリー

     目的:サービス提供責任者は,本来の調整業務が満足にできないと,職務満足感の低下とバーンアウトにつながり離職意向を強めるという仮説の検証を目的にした.

     方法:協力を得た事業所のサービス提供責任者904人を対象に質問紙調査を行い,有効回答は582件,回収率64%であった.次の因果モデルを検討した.リーダーシップが組織風土の活発性に影響し,組織風土の活発性と連絡時間の保証は,調整業務の水準に影響する.そして調整業務は職務満足感とバーンアウトを介して離職意向に影響するというモデルである.

     結果:共分散構造分析を行った結果,有意な推定値が得られ,適合度はGFI = .856,CFI = .901,RMSEA = .067となり,モデルは許容範囲と思われた.

     結論:サービス提供責任者に連絡調整の時間を保証せず,組織風土の活発性が低い事業所は,調整業務の達成度が下がるため,職務満足感の低下とバーンアウトの危険を高め,離職意向が増えることが示唆された.

  • ―― 地域在住高齢者を対象として ――
    小園 麻里菜, 権藤 恭之, 小川 まどか, 石岡 良子, 増井 幸恵, 中川 威, 田渕 恵, 立平 起子, 池邉 一典, 神出 計, 新 ...
    2016 年 38 巻 1 号 p. 32-44
    発行日: 2016/04/20
    公開日: 2019/11/15
    ジャーナル フリー

     本研究は,高齢者が実施している余暇活動の実態を把握すること,および余暇活動と認知機能との関連を検討することを目的とした.分析対象は,69〜71歳の地域在住高齢者961人であった.現在行っている余暇活動として自由記述で挙げられた4,412項目を心理学・老年学を専門とする研究者6人で討議した結果,138種類に分類され,12種類の上位カテゴリーに分類された.認知機能を評価する課題として日本語版Montreal Cognitive Assessment(MoCA-J)を用いた.認知課題の成績を従属変数とし,余暇活動の上位カテゴリーごとの実施数を独立変数にした階層的重回帰分析を行った.その結果,関連要因を統制しても趣味活動カテゴリーや休息・リラックスカテゴリーの実施数が多いほど,認知課題の成績が高かった.これらの結果は,余暇活動の実施数と認知機能には正の関連があることを示しており,今後も余暇活動の評価方法を検討し,認知機能との関連を検証することが望まれる.

  • 野邊 政雄
    2016 年 38 巻 1 号 p. 45-56
    発行日: 2016/04/20
    公開日: 2019/11/15
    ジャーナル フリー

     本稿の目的は,高齢女性のきょうだい(兄弟姉妹)関係に影響を及ぼす要因を明らかにすることである.岡山県の県北にある山村で高齢女性に調査を2006年に実施した.そのデータを分析から,次の4点を明らかにした.①きょうだいが近くに居住しているほど,高齢女性はきょうだいと頻繁に会ったり,電話や手紙で連絡を取り合ったりしていた.②高齢女性は最年長の兄または弟が近くに居住しているとき,その兄または弟と頻繁に会っていた.これに対し,高齢女性は兄弟よりも姉妹と電話や手紙で頻繁に連絡を取り合い,兄弟よりも姉妹に情緒的サポートを期待できた.③同居子のいる高齢女性は同居子のいない高齢女性よりもきょうだいと電話や手紙で頻繁に連絡を取り合い,情緒的サポートをきょうだいに期待できた.④きょうだいと頻繁に会ったり,電話や手紙で連絡を取り合ったりしていたのは,社会経済的地位の高い高齢女性であった.

  • 塚本 成美, 中村 桃美, 石橋 智昭
    2016 年 38 巻 1 号 p. 57-65
    発行日: 2016/04/20
    公開日: 2019/11/15
    ジャーナル フリー

     会員の増加を目指すシルバー人材センターにおいては,ホワイトカラー層の入会を促進するために事務的な仕事の開拓が求められているが,会員の前職と希望職種の関係は現在も明らかにされていない.

     本研究では,全国から抽出したシルバー人材センター36か所の在籍会員47,440人の前職をホワイトカラーとブルーカラー等に分類し,希望職種との関連をみる.

     ホワイトカラー出身会員の割合は,男性42.5%,女性50.3%で日本における就業者全体の分布と近似していた.これら会員の希望職種は,男性では「一般作業群」や「管理群」等の単純労務が多く,女性会員では事務志向の割合が男性の2倍程度高いが,やはり「一般作業群」と「サービス群」のほうが多くなっていた.

     したがって,ホワイトカラー出身者が退職後に事務的仕事を希望するとは限らず,事務的な仕事の開拓だけではなく,さまざまな仕事を会員のニーズに応じて充実させていくことが求められる.

実践・事例報告
  • ― 高齢者への健康調査と地域ケア機関への利用実態調査より ―
    長谷部 雅美, 小池 高史, 野中 久美子, 深谷 太郎, 李 暻娥, 村山 幸子, 渡邊 麗子, 植木 章三, 吉田 裕人, 松本 真澄, ...
    2016 年 38 巻 1 号 p. 66-77
    発行日: 2016/04/20
    公開日: 2019/11/15
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,一人暮らし高齢者の在宅生活の継続における見守りセンサー(赤外線人感センサー)の効果を,見守られる高齢者と見守る地域ケア機関の専門職の両面から検討することであった.対象者は,65歳以上の一人暮らし高齢者80人(介入群:39人,対照群:41人)と,高齢者を担当する専門職32人であった.介入プログラムでは,介入群の自宅に設置した見守りセンサーが検知した対象者の活動量データを,月次レポート等の形式で担当の専門職に提供した.

     約1年間にわたる介入の結果,介入群で要介護2以上への悪化抑制と,老研式活動能力指標の下位次元である社会的役割の低下抑制が確認された.専門職では介入群の担当者のほうが,高齢者の外出頻度やトイレの利用状況を把握している割合が高いことが示された.

     以上の結果から,見守りセンサーは,一人暮らし高齢者の在宅生活を継続させるための支援策として,有効である可能性が示唆された.

  • 菱井 修平, 稲田 拓馬, 桑岡 慎也, 久保 晃信
    2016 年 38 巻 1 号 p. 78-83
    発行日: 2016/04/20
    公開日: 2019/11/15
    ジャーナル フリー

    [目的]要介護高齢者において,最大歩行速度に基づく有効な相対的歩行速度について検討することとした.[方法]対象は,在宅要支援・要介護高齢者男女14人(平均年齢75.1±12.7歳)であった.最大歩行速度(MWS)の40%と50%の2つの速度で歩行テストを実施した.評価項目は,HR,SBP,DBP,% HRmax,SpO2,RPE,PCIであった.[結果]換算式から得られた40% MWSは,1.8±0.3METs,53.3±9.4% HRmax,50% MWSは,2.0±0.3METs,56.4±8.4% HRmax強度であり,RPEはそれぞれ11.1±1.9,12.2±1.7であった.[結論]要支援・要介護の低体力高齢者においては,MWSを基準とした40%,50%強度の歩行は,換算した運動強度から,①要支援・要介護の低体力高齢者でも安全に遂行できる歩行速度であること,②換算した運動強度から心肺機能の改善に有効な運動強度である可能性が示唆された.

資料論文
  • ―― 場所についての語りのディスコース分析 ――
    田中 元基, 大橋 靖史
    2016 年 38 巻 1 号 p. 84-93
    発行日: 2016/04/20
    公開日: 2019/11/15
    ジャーナル フリー

     本研究では,場所の見当識障害として従来とらえられてきた,認知症高齢者が今いる場所を事実と異なる場所として語る現象を,保たれた能力として捉え直すことを試みた.認知症高齢者の語りを,ディスコース分析の手法を用い分析した結果,以下の2つの特徴が明らかとなった.第一の特徴は,今いる場所からみえる対象に言及してから話題を展開するという「共同参照→話題展開」という定式化である.この定式化は,他者との関係性に基づき話題を共有した語りが可能なことを示している.第二の特徴は,現在の状況と過去の状況の差異に言及した語り方である.今いる場所の状況と過去の経験との間に不一致が生じた際に,「過去への言及→だけど→現在における過去の不在」という定式化が行われていた.以上の特徴から,場所の見当識障害としてとらえられてきた発話行為は,他者への配慮や状況への気づきといった能力として捉え直すことが可能であることが示唆された.

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