老年社会科学
Online ISSN : 2435-1717
Print ISSN : 0388-2446
39 巻 , 3 号
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原著論文
  • ―― 基本チェックリストとの関係分析から ――
    荻原 牧子, 戸ヶ里 泰典, 川原 靖弘
    2017 年 39 巻 3 号 p. 305-315
    発行日: 2017/10/20
    公開日: 2019/11/15
    ジャーナル フリー

     高齢者の生活においてはテレビ視聴が相当の割合を占め,これと生活機能との間には関連があると予想される.本研究の目的は,先行研究との比較からテレビ視聴形態の変化をみることと,生活機能の違いによるテレビ視聴形態の違いを明らかにすることである.407人の在宅高齢者に対し,自作のテレビ視聴形態アンケートと厚生労働省による基本チェックリストを実施し,その相関をもとに分析した.過去との比較において視聴時間はおおむね3時間であり,視聴番組はニュース・報道番組と天気予報が上位を占めており,視聴動機は情報入手が主であり,過去から現在までテレビの視聴形態には大きな変化のない可能性が高いと考えられた.生活機能との関連については,前期高齢者における特徴は少なかったが,後期高齢者においては,生活機能の低下と社会・情報番組および学習・教養番組の視聴頻度の低さとの間に関連のあることが明らかになった.

  • ―― 中年前期群と中年後期群および高齢期群との比較検討 ――
    茨木 裕子, 李 泰俊, 加瀬 裕子
    2017 年 39 巻 3 号 p. 316-329
    発行日: 2017/10/20
    公開日: 2019/11/15
    ジャーナル フリー

     本研究は,社会活動への参加に至るまでの中高年の老後観と老後の準備行動を活動志向とみなし,情報活用の位置づけを年代による比較をとおして明らかにした.対象者は40歳以上の男女676人であった.

     その結果,中年前期群(40〜54歳)の社会活動は,余暇活動的意味合いが強く,情報活用も関連していなかった.中年後期群(55〜64歳)では,「技術の習得や能力向上」の準備行動に沿った「公的地域情報誌」の活用が社会活動への参加に関連を示した.一方,高齢期群(65歳以上)では,「変化挑戦的」な老後観と「人との関係性構築」「生きがい」「技術の習得や能力向上」「安定した経済状態の維持」の準備行動に沿った「紹介」「公的地域情報誌」の活用が社会活動への参加に関連していた.

     本研究により,中年後期以降の社会活動への参加における情報活用の有効性が実証され,年代によって異なる情報提供手段が必要とされることが示唆された.

  • ―― 参加観察による分析 ――
    佐々木 由佳, 小賀野 操, 高村 直裕, 小林 大作, 荻原 喜茂
    2017 年 39 巻 3 号 p. 330-340
    発行日: 2017/10/20
    公開日: 2019/11/15
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,通所リハは利用者にとってどのような意味があるのかをとらえることである.対象は同一曜日に利用する36人で,参加観察を15日間行った.データをスプラッドリー(2010)にしたがって分析したところ,15のカバータームを抽出し,そこから包括的な意味をもつ5つのテーマが生成された.利用者は健康への積極的な行動や,心身の苦痛を軽減する【障害に対処する】場として利用するのみでなく,【保障された場】として安心して外出し,仲間と【共同体の一員としてふるまう場】としてすごし,家ではできない経験ができる【ハレの場】として通所リハをとらえ,さらにその利用は習慣化された【暮らしの一部】となっていた.通所リハは利用者にとって,障害に対処するのみならず,社会の一員として活動できる場としての意味をもっていた.以上より,利用者を地域参加につなげる通所リハの役割は,利用者の視点からも意義あるものと示唆された.

  • 池田 晋平, 植木 章三, 柴 喜崇, 新野 直明, 渡辺 修一郎, 佐藤 美由紀, 安齋 紗保理, 田中 典子, 芳賀 博
    2017 年 39 巻 3 号 p. 341-351
    発行日: 2017/10/20
    公開日: 2019/11/15
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,要支援・要介護高齢者の主観的健康感に関連する要因の特徴を明らかにすることである.対象は北海道A市B区在住の要介護認定を受けている要支援・要介護と,要介護認定を受けていない一般高齢者である.それぞれの高齢者を2,500人ずつ無作為に抽出し,主観的健康感,身体,心理,社会的変数を郵送によるアンケートで調査した.有効回答はそれぞれ1,059人,1,699人で,それぞれの群においてロジスティック回帰分析にて主観的健康感に関連する要因を確認した.その結果,要支援・要介護高齢者は疾患,転倒,ADL,孤独感,情緒的サポートの受領が関連し,他方一般高齢者では疾患,転倒,IADL,外出頻度,孤独感が関連していた.以上のことから,要支援・要介護高齢者では,社会生活の技能よりも周囲の人々とのかかわりを充実させることで主観的健康感が良好に維持できる可能性が考えられた.

  • 山崎 幸子, 藺牟田 洋美, 増井 幸恵, 安村 誠司
    2017 年 39 巻 3 号 p. 352-364
    発行日: 2017/10/20
    公開日: 2019/11/15
    ジャーナル フリー

     閉じこもりをもたらす同居家族の関わりチェックリストを開発することを目的とした.閉じこもり高齢者とその同居家族への予備調査から15項目を収集した.本調査は2014年4月,福島県C村在住で70歳以上の要介護認定を受けていない高齢者1,229人とその同居家族を対象とした.調査内容は,高齢者本人には,性,年齢,外出頻度,うつ傾向,生活体力指標,老研式活動能力指標,ソーシャル・サポート等,同居家族には,予備調査で作成した家族の関わりチェックリスト素案,性,年齢,精神的健康状態(WHO-5)をたずねた.2015年9月,高齢者本人に対し閉じこもりの発生の有無を追跡調査した.最終的な分析対象者は497人であった.新規閉じこもりの有無と家族の関わりチェックリスト素案15項目の関連について,基準関連的手法による項目分析により6項目を選定し,閉じこもりをもたらしやすい家族の関わりチェックリストを作成した(α=0.63).ソーシャル・サポート,WHO-5等との関連から併存的妥当性を確認した.また,本チェックリストのカットオフポイントを超える場合には,その他の要因と比しても約1年半後の閉じこもり発生が高いことを確認した.

資料論文
  • 安元 佐織, 権藤 恭之, 中川 威, 増井 幸恵
    2017 年 39 巻 3 号 p. 365-373
    発行日: 2017/10/20
    公開日: 2019/11/15
    ジャーナル フリー

     本研究は,諸機能の喪失を経て幸福感の概念が変化し得ると考えられる百寿者にとっての幸福感の概念の構成要素を記述することを目的とした.13人の百寿者の語りを分析した結果,「前向きな気持ちで生きること」「制限のなかで生きること」「他者とのよい関係を築くこと」「人生の充足感を感じること」「あるがままの状態を受け入れること」の5つのカテゴリーが,百寿者の幸福感を理解するために重要な概念の構成要素であることがわかった.そして,百寿者にとっての幸福感は,さまざまな喪失(身体機能の低下,社会的地位の喪失,他者との交流頻度の低下)に直面し,制限が多い生活のなかでポジティブな感情を自ら生み出す適応的な姿勢から生じることが示唆された.百寿者の幸福感の概念は,従来の幸福感の概念と老年的超越とを比較検討することで理解が深まると考えられる.

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