老年社会科学
Online ISSN : 2435-1717
Print ISSN : 0388-2446
40 巻 , 4 号
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原著論文
  • ―― 2つの縦断研究の統一的分析 ――
    中川 威
    2019 年 40 巻 4 号 p. 351-362
    発行日: 2019/01/20
    公開日: 2020/01/20
    ジャーナル フリー

     本研究では,高齢期における抑うつ症状の変化と,身体的健康との関連を検討した.1987年に開始した9年間4時点の研究1と,2007年に開始した4年間3時点の研究2のデータを用い,統一的分析を行った.研究間で概念的に等価な変数を選定し,類似の統計モデルを推定した.抑うつ症状がどのように変化し,身体的健康(生活機能障害と疾患数)の個人間差と個人内変動と関連するか検討するため,データ別にマルチレベルモデルを推定した.年齢,性別,教育歴,配偶者有無を共変量として用いた.2つの縦断研究の結果,平均的には抑うつ症状は継時的に増加していた.生活機能障害と疾患数が多い者は,抑うつ症状が多いという個人間関連が認められた.また,おおむね70歳以降で,生活機能障害が通常よりも多かった時点で,抑うつ症状が多くなるという個人内関連が認められた.これらの結果,高齢期には抑うつ症状は増加し,同一個人内で生活機能障害と共変動することが示唆された.

  • 谷本 裕香子, 佐藤 将之, 水村 容子
    2019 年 40 巻 4 号 p. 363-374
    発行日: 2019/01/20
    公開日: 2020/01/20
    ジャーナル フリー

     【目的】本研究では,認知症高齢者グループホーム入居者の重度化の傾向やそれに対応する職員の仕事量の増加に伴って,職員の見守りを考慮した空間評価に着目した.見守りのあり方の現状を明らかにするために,場所を移動しながらの見守りについては「動的見守り」,移動しない見守りを「静的見守り」と定義する.静的見守り・動的見守りからみた建築空間を実現するための条件を提示にすることを目的とする.

     【方法】職員の見守りに影響を及ぼす共用空間の構成が異なる2ホームを選定した.調査員1人が職員1人を行動観察し,1分ごとの位置と作業内容を記録した.また,10分ごとの入居者全員の居場所を記録した.

     【結果・結論】静的見守りに配慮した建築空間の実現のためには,台所,食堂,職員拠点の空間の可視率を上げる必要がある.動的見守りのためには,台所,食堂,洗面所,職員拠点の空間およびそれらの経路の可視率を連続的に上げる必要がある.

  • 大平 剛士
    2019 年 40 巻 4 号 p. 375-383
    発行日: 2019/01/20
    公開日: 2020/01/20
    ジャーナル フリー

     本研究は日本の介護職の連携と職務満足の関係性を解明し,施設介護と訪問介護という提供サービスの違いや,組織内連携や組織間連携という連携の形態の違いが連携と職務満足の関係にどのような影響を与えているのかを資源保存理論とReevesらの専門職連携の分類を基に検証した.平成20年度介護労働実態調査の労働者調査票の18,035人の介護職を対象とした分析結果より,介護職の連携は職務満足を高めていたことと,訪問介護職は組織間連携を施設介護職よりもとれていたことの2点は仮説が支持された結果であった.一方,訪問介護職は組織内連携を施設介護職よりもとれていたことや,介護職の組織内連携や組織間連携が職務満足に与える影響の度合いに関しては,提供サービスによる違いはみられなかったことの2点は仮説とは異なる結果であった.

資料論文
  • 吉田 祐子, 鈴鴨 よしみ, 岩佐 一
    2019 年 40 巻 4 号 p. 384-392
    発行日: 2019/01/20
    公開日: 2020/01/20
    ジャーナル フリー

     本研究では,地域高齢者を対象とした標本調査を行い,高齢者の食行動の実態把握を行った.

     60~84歳の地域高齢者829人(男性379人,女性450人)のデータを使用した.食事の準備状況(調理,食材購入,食費管理),共食の状況,食品摂取多様性,食生活満足度等について調査した.分析は,性別・居住形態別(独居,夫婦のみ,家族と同居)に行った.

     食事の準備は,男性では,独居では本人が,夫婦世帯および家族と同居では本人以外が,女性では,いずれの世帯でも本人が主に担っていた.1日の共食が0回(孤食)の割合は,男性11.6%に比べ女性19.6%で多く,居住形態別にみると,独居,夫婦のみ,家族と同居の順に,男性で79.5%,2.1%,6.2%,同じく女性で,80.3%,4.7%,11.0%であった.食品摂取多様性と食生活満足度は男性では独居で低く,女性では居住形態による差が認められなかった.

     上記より,独居者に対して,男性では多様な食品を摂る支援や共食の機会をつくる支援が必要であるが,女性では必ずしもそうした支援が必要ではない可能性が考えられた.

  • 宇都宮 すみ, 小岡 亜希子, 陶山 啓子
    2019 年 40 巻 4 号 p. 393-402
    発行日: 2019/01/20
    公開日: 2020/01/20
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,要支援高齢者の社会活動の実態を把握し,社会活動に影響を及ぼす要因を明らかにすることである.対象は,中核市にあるA地域包括支援センターが担当する地区に居住し,要支援の認定を受けた65歳以上の高齢者のうち,施設入所者を除く788人である.調査内容は,社会活動とそれに影響を及ぼすと考えられる個人的要因,身体的要因,社会的要因とし,無記名自記式質問紙にて調査した.有効回答は411人で,重回帰分析にて社会活動に関連する要因を確認した.その結果,要支援高齢者の社会活動は,地域・近所との交流が多く,関連する要因は,老研式活動能力指標,認定区分,ソーシャルサポートの提供,非家族支援ネットワーク,公共交通機関の利用の5項目であった.要支援高齢者の社会活動を促進するためには,身体機能を維持することに加えて,地域での友人・知人とのつながりやサポートを提供できる役割を支援する必要性が示唆された.

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