老年社会科学
Online ISSN : 2435-1717
Print ISSN : 0388-2446
42 巻, 4 号
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原著論文
  • 内田 和宏, 李 泰俊, 加瀬 裕子
    2021 年 42 巻 4 号 p. 289-300
    発行日: 2021/01/20
    公開日: 2022/01/20
    ジャーナル フリー

     本研究は,高齢者介護施設における介護職員の離職防止に向けた取り組みから,離職意向に関連する要因について構造的なモデルを検討し,離職意向に影響を及ぼす要因を明らかすることを目的とした.調査は東京近郊の市にある高齢者介護施設(77施設)の介護職員900人を対象に行った.調査方法は自記式調査票を用いた郵送調査を行った.有効回答数は285人であった.探索的因子分析を行った結果,「介護の質向上への取り組み」「適切な評価と人員配置」「業務負担軽減への取り組み」「トップダウンの管理体制」の4因子が抽出された.さらに,共分散構造分析を行った結果,介護の質向上への取り組みは離職意向を直接低め,トップダウンの管理体制は離職意向を直接高めていた.業務負担軽減の取り組み,適切な評価と人員配置に関しては,離職意向に直接の影響はみられなかったが,介護の質向上への取り組みを介して,離職意向を低めていた.

  • 須加 美明
    2021 年 42 巻 4 号 p. 301-310
    発行日: 2021/01/20
    公開日: 2022/01/20
    ジャーナル フリー

     目的:訪問介護員が利用者理解に必要な情報を介護を通じて把握することを測る尺度の開発を第一の目的とし,この利用者理解の水準が訪問介護の援助力に影響することの検証を第二の目的にした.

     方法:訪問介護員503人を対象に質問紙調査を行い,有効回答267件(53%)を分析した.探索的因子分析によって得られた4因子11項目を,2次因子の測定モデルにして確認的因子分析を行った.尺度の2次因子がヘルパー援助力の考える援助に影響する因果モデルを検討した.

     結果と考察:構成概念として設定した食生活の内実,健康状態,健康への意識性,家族近隣との関係,介護家族の意識のうち,因子を構成しなかった健康状態を除き4因子が抽出され,確認的因子分析の適合度はよく,構成概念妥当性が認められた.α係数は十分な値であった.因果モデルは有意な関連を示し,介護を通じた利用者理解が援助力に影響することが示唆された.

資料論文
  • ── 働く理由との関連 ──
    小池 高史
    2021 年 42 巻 4 号 p. 311-317
    発行日: 2021/01/20
    公開日: 2022/01/20
    ジャーナル フリー

     就業中の高齢者の働く理由の違いによって今後の業種・職種についての希望に違いがみられるかを検証した.データは,福岡市在住の無作為抽出された60〜74歳の人3,000人を対象とした調査から得られた.有効回答数は1,922(回収率64.1%)であった.分析対象は,そのうち就業中で今後も働く意思をもっている人(905人)とした.今後の業種・職種についての希望を従属変数に,働く理由を独立変数に設定した多項ロジスティック回帰分析を行った.

     その結果,生きがいや社会貢献・社会とのつながりを働く理由にしている人ほど,同じ業種への希望をもっていた.生きがいは,同じ業種のみ希望と正の関連があり,社会貢献・社会とのつながりは同じ業種希望と同じ業種と違う業種の両方を希望した人に正の関連があった.また,生きがいを働く理由にしている人ほど,同じ職種のみを希望する割合が大きく,借金返済を働く理由にしている人ほど,同じ職種と違う職種の両方を希望する割合が大きかった.

  • ── 前期・後期高齢者別の検討 ──
    古川 紀子, 薬袋 淳子, 成 順月
    2021 年 42 巻 4 号 p. 318-326
    発行日: 2021/01/20
    公開日: 2022/01/20
    ジャーナル フリー

     本研究では,足腰に痛みをもつ高齢者の主観的健康感に寄与するセルフケアと社会活動への参加を,前期・後期高齢者の各群で明らかにすることを目的とした.地域在住高齢者1,300人に対し,郵送法で質問紙による調査を実施した.主観的健康感(健康/非健康)を従属変数,痛みを悪化させないためのセルフケア,社会活動参加を独立変数とし多変量解析を行った.

     その結果,前期高齢者では趣味の会への参加が,後期高齢者では市民講座への参加が主観的健康感と正の関連を示した.一方,セルフケアは主観的健康感と正の関連を示さず,前期高齢者では,マッサージ,杖や手すりの使用が,後期高齢者では,姿勢に気をつけることが主観的健康感と負の関連を示した.このことから足腰に痛みがある高齢者に対しては,年齢層別の特徴に応じた社会活動参加への支援が必要であることが示唆された.

  • ── 日本人を対象とした年代別比較 ──
    福沢 愛, 繁桝 江里, 菅原 育子
    2021 年 42 巻 4 号 p. 327-336
    発行日: 2021/01/20
    公開日: 2022/01/20
    ジャーナル フリー

     文化的自己観と幸福感との関連を年代別に検討するため,第6回世界価値観調査の20〜80歳の日本人データを分析した.欧米における先行研究では,文化的自己観のうち相互独立性と幸福感の正の関連が示されているが,相互協調性が優位な日本では,この結果が再現されない可能性がある.若年層ほど文化的規範の影響を受けやすいとされているため,相互独立性と幸福感の関連は,年齢が高い日本人でのみみられると予測した.重回帰分析の結果,中年後期以上でのみ,相互独立性_個の主張が幸福感と正の関連をもっていた.健康状態や世帯収入は年代とともに下がる反面,相互独立性は高年代集団で高い傾向もみられた.高齢期に相互独立性_個の主張を高くもつことが,幸福感を維持するために重要である可能性が示唆された.

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