老年社会科学
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原著論文
  • ―― 基本的属性と社会関係要因に焦点をあてて ――
    深谷 安子, 岡部 明子, 川口 港, 小山 幸代, 北村 隆憲
    2024 年 45 巻 4 号 p. 315-326
    発行日: 2024/01/20
    公開日: 2025/01/20
    ジャーナル フリー

     本研究は,要介護高齢者の日常会話の関連要因を個人的属性と社会関係要因から把握することを目的とする.居住型介護施設並びに在宅の要介護者からランダムサンプリングされた539人を対象に質問紙調査が行われた.生活世界コミュニケーション尺度(LWCS)の関連要因の全体像の把握にはダミー変数を用いてパス解析を実施した.使用した尺度の欠損値の補完には多重代入法を使用した.結果は,LWCSには,施設と在宅において家族との会話(標準化推定値:SC=.17~.13)と女性(SC=.23~.13),施設では友人との会話(SC=.20),在宅ではデイサービスと訪問看護利用(SC=.18~.26)から有意なパスが示された.LWCSは施設・在宅において協調的幸福感(SC=.35~.36),施設では抑うつ(SC=-.14)に有意なパスが示された.日常会話は,要介護高齢者の生活の質や,施設における抑うつに影響することが示された.

  • ―― マルチレベル横断研究(JAGES)――
    伊藤 大介, 斎藤 民, 村田 千代栄, 近藤 克則
    2024 年 45 巻 4 号 p. 327-337
    発行日: 2024/01/20
    公開日: 2025/01/20
    ジャーナル フリー

     地域包括支援センター・社会福祉協議会など公的な相談窓口(以下,包括・社協等)への相談意向と地域のソーシャル・キャピタル(SC)の関連を検証した.対象はJapan Gerontological Evaluation Studyが2016年に行った自記式質問紙調査に回答した要支援・介護認定を受けていない65歳以上の高齢者124,014人(39市町,572小学校区)である.マルチレベルロジスティック回帰分析の結果,対象の人口統計学的特性や個人のSC等を調整しても,地域のSC「社会的連帯」の豊かな地域に住む人のほうが,包括・社協等に相談する意向をもつ可能性は高い(OR=1.004)という関連が示された.一方,地域のSC「互酬性」の豊かな地域に住む人のほうが,包括・社協等に相談する意向をもつ可能性は低い(OR=0.988)という関連も示され,相談意向と地域のSCの関連は,SC指標によって異なった.

  • 日笠 優希実, 佐藤 ゆかり, 齋藤 美絵子, 大津 暢人, 荒木 裕子, 北後 明彦, アナ・マリア・クルーズ , 風早 由佳, 大山 剛 ...
    2024 年 45 巻 4 号 p. 338-352
    発行日: 2024/01/20
    公開日: 2025/01/20
    ジャーナル フリー

     災害時要配慮高齢者の早期避難は重要な課題であり,状況認識や避難の時間的推移を詳細に把握する必要性が指摘されている.本研究は,防護動機理論を援用し,豪雨災害を実際に経験した要配慮高齢者を対象に,時系列に沿って避難意思等を用いケースを類型化し,避難行動の実態と特徴を身体機能・認知機能の要素を加味し記述することを目的とした.

     データは混合研究法の考え方を参考に半構造化面接調査により収集した.倫理的配慮として,調査への参加は任意で協力しなくとも不利益は生じないこと等を説明し同意を得た.

     情報入手,脅威評価,対処評価,防護動機を用いクラスター分析し,対象者18人は4つに類型化された.状況を正しく認識し脅威評価と対処評価により防護動機が形成され早期に水平避難したクラスターや,対処評価をもつのみで防護動機を抱けなかったクラスター等が観察され,脅威評価と対処評価をバランスよく保持することが防護動機形成および早期避難につながる可能性が示唆された.

  • ―― 全国のシルバー人材センター会員調査による検討 ――
    森下 久美, 中村 桃美, 松田 文子, 渡辺 修一郎, 塚本 成美, 石橋 智昭
    2024 年 45 巻 4 号 p. 353-363
    発行日: 2024/01/20
    公開日: 2025/01/20
    ジャーナル フリー

     本研究では,全国から抽出した52か所のシルバー人材センター(SC)に登録する後期高齢者(2,095人)を対象に,社会参加のパターンと関連要因を検証した.

     社会参加のパターンの類型は,SC内の就業・ボランティア・同好会,SC外の就業・ボランティア・近所の集会活動・地域のイベント・自身が管理するグループの8種類への参加有無を用い,潜在クラス分析を実施した.関連要因の検討は,社会参加のパターンを従属変数,基本属性を独立変数とした多項ロジスティック回帰分析を実施した.

     結果,就業単一型,近隣集会型,複合型,ボランティア型,同好会型の5つに類型化された.類型の関連要因としては,最長職が無職ではないこと,フレイル状態ではないこと,SCの在籍年数が長いこと,経済的動機がないことが,就業単一型よりも,重層的な参加がみられる他の4つの類型への所属確率を高める可能性が示唆された.

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