本研究は,「考え,議論する道徳」を支える ICT・AI活用の在り方を探ることを目的として,メタバースと生成 AI を統合した道徳学習環境を試作し,その教育的可能性を検討したものである.友人関係に悩む登場人物を題材とした VR 空間を構築し,児童生徒がアバターと音声対話できるシステムを開発した.児童生徒の発話は音声認識によりテキスト化し,生成AIで応答を生成,音声合成とリップシンクによりアバターの声と表情として提示した.A市で実施した体験イベントにおいて小学生を対象に実践を行い,得られた対話ログのうち5本を分析対象としてカテゴリー化した.その結果,多くの児童が「一緒に遊ぶ・話す」といった具体的行動による関係修復方略を自発的に言語化していたこと,自己信頼や未来への見通しをめぐる対話や,原因探索と感情的支えを結びつける発話が一部に見られたことが明らかになった.一方で,発話の多くは行動レベルの助言にとどまり,価値語や理由付けの言語化には教師による問い返しやプロンプト設計が不可欠であることも示唆された.以上より,メタバースと生成 AI の組み合わせは,児童の当事者意識と共感的理解を促す体験的・対話的な学びの場として有望であるとともに,教師の授業準備負担や指導スキル依存を相対的に軽減し得る可能性もある一方,ログ分析に基づくシナリオ改善と事後の振り返りを往還させる授業デザインがなお重要な課題である.
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