和食は日本の伝統的な食事であり、その食事内容はご飯と汁物、おかずを3 品そろえた、いわゆる
一汁三菜からなる。すなわち、ご飯を主食として、おかずとなる魚介類、肉類、野菜類などにだしや
調味料を加えてうま味やおいしさを出し、栄養学的にみてもバランスがとれることから、近年、世界
的にも高い評価を受けている。
また、和食はかつお節や昆布などのだしの材料や食材の持ち味を活かして料理のうま味を引き出す
ことが伝統とされてきたが、近年ではその伝統が失われつつあり、食育の分野でも課題の一つとなっ
ている。
本研究では長きにわたり日本の家庭料理について発信しているNHK「きょうの料理」テキストにお
いて、2020 年度から2023 年度の4 年間にわたり連載された「だしいらずでつくる 和食のはなし」
を題材として「だしがわりの食材の種類と他の食材との組み合わせ」、「食材の持つうまみや栄養価」、
「料理の種類や調理時間」などについて検討を行った。その結果、和食のだしがわりになる食材では
野菜類が多く使用されていた。野菜類にはうまみ成分であるグルタミン酸が多く含まれ、また、旬の
野菜類を利用することは地産地消への取り組みや「持続可能な食を支える食育の推進」への貢献にも
つながることが考えられた。
また、和食にだしの材料を使用せず食材の持つうまみを生かすことにより、うまみ成分だけではな
くそれらの持つ栄養素を幅広く摂取することができ、さらには食材の選択や購入を通じての旬の食材
への関心や減塩効果、調理時間の短縮や生ごみの削減など調理への効率化にもつながると考えられた。
料理の種類では煮物が多く、食材の取り合わせでは、肉類や魚介類に含まれるイノシン酸と野菜類
に含まれるグルタミン酸の組み合わせによるうまみ成分の相乗効果を生かした料理も多く紹介されて
いた。
一方、料理の調理に要した時間では時短調理への配慮も窺われ、時短調理で季節感のあるおいしい
和食を作ることも今後の食育の大きな課題と考えられた。
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