人間は、他なる者との人格的な交わりとしての「対話」において存在し、そこに人間性に基づく人間学humanology,Humanologieが成立する。対話は、対話的原理dia-logosより成り立つ。この原理は、相互に分かち合う真理であり、関係概念から出発する人間存在のロゴスである。「我-汝」の対話的関係性は両者の人格的な共鳴を持つ「対」概念であるが、ここには逆説と創造の契機が存在する。さらにまた、対話的倫理は宗教的人間学としての展開可能性を有している。この人間学においては、宗教は対話という回路を発見して倫理に目覚め、倫理はその本質的意義たる対話を通じて宗教に至る。倫理的・宗教的人間学(ヒューマノロジー)は、この対話的原理により従来の人間学(アンソロポロジー)を踏み越えた逆説的・創造的人間理解をもたらすものである。
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