宗教研究
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95 巻, 1 号
選択された号の論文の23件中1~23を表示しています
論文
  • 須藤 孝也
    2021 年95 巻1 号 p. 1-24
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

    キルケゴールは、人間に自己を変化させるのは想像力の働きだと解している。本論文が試みるのは、想像力概念に注目して、キルケゴールの人間理解を再構成することである。

    前半部では、アーネ・グロンの研究を参照しながら、キルケゴールの想像力理解について概観し、後半部では、想像の内に立ち現れるキリストの像と人間の関わりについて、またキルケゴールが理想的なキリスト教徒の「像」を描くことを自らの著作活動の主要な課題としていたことについて見る。

    最後に、キルケゴールが人間を神の像を参照しながら理解していたことと、にもかかわらず神学的人間本性論の限界を認識していたことを確認した後、キルケゴール思想における想像力と信仰の関係について若干の考察を行う。

  • 十四世紀ストラスブールにおけるベギンとドミニコ会をめぐる状況から
    菊地 智
    2021 年95 巻1 号 p. 25-48
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

    十四世紀前半にストラスブールで成立したと考えられている中高ドイツ語の対話篇『シュヴェスター・カトライ』(Schwester Katrei)は、ベギンと思われる在俗信徒の女性と、ドミニコ会士と思われる聴罪司祭の二人の登場人物が、対話を繰り返しながら、それぞれ霊的成長を遂げ、神との合一に達するまでの過程を描いている。主に異端研究、あるいは、作品にその間接的影響が窺えるマイスター・エックハルトの受容史研究の分野で扱われて来たが、作者不詳で、作品中にも人名や地名、そして歴史的出来事への言及がほぼ皆無なため、成立の背景と作品の意図については十分に解明されていない。本稿は、テクストに描かれている登場人物の立場や互いの関係を検証し、そこから読み取れることを同時代の他の歴史資料に照らしながら、十四世紀ストラスブールにおいて教区教会からの弾圧に晒されるベギンと彼女たちを司牧するドミニコ会の密接な関係が作品の背景にあること、そしてドミニコ会士が彼女たちを擁護しその霊性に触れることで自分たちの創設の理想を取り戻すさまを描くことに作品の意図があることを示す。

  • ガヤーの祖霊祭における供養マントラの分析から
    虫賀 幹華
    2021 年95 巻1 号 p. 49-73
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

    北インドのヒンドゥーの聖地ガヤーで行われる祖霊祭では、「男性・女性たちのための十六」という死者の救済のためのマントラが唱えられる。本論文は『ガヤーマーハートミヤ』(十―十一世紀頃)に掲載される同マントラを和訳した上で、これを池上良正が論じるところの「無主/無遮」の両側面を含む無縁供養であるとみて分析するものである。同マントラで供養の対象となるのは、「まつり手がいない(無主)」ことあるいは異常死を理由として葬儀が執行されないことによる苦しむ死者、生前の悪行が原因で生まれ変わり先で苦しむ死者、親族を超えた非常に広範囲の祭主の「縁者」たる死者である。異常死者や転生先で苦しむ死者と祭主との関係性の不問、輪廻思想による時空を超える対象の広がり、言葉を尽くした祭主との関係性の描写といった、このマントラなりの「一切衆生への平等な(無遮)」供養のあり方にも注目する。

  • 山形県最上町契約講の連合と再編のモノグラフ
    大場 あや
    2021 年95 巻1 号 p. 75-99
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

    本論は、地域社会における葬制が戦後どのようなプロセスを経て変容を遂げたのか、契約講と呼ばれる互助組織の連合と再編の過程を跡付けながら、変化の契機と力学を検討することを目的としている。本論で取り上げる山形県最上郡最上町の町場エリアには多数の契約講が林立し、火葬(野焼き)の遂行を支えていた。重油式火葬場の建設、霊柩自動車の導入を受け、契約講は労務的互助機能を放出していく。火葬場の建設は、組織再編に決定的なインパクトを与えたと同時に、契約講の連合組織が町行政との交渉の末に実現した成果でもあった。その背景には、町の財政状況に加え、戦後のまちづくりと新生活運動の機運を活用し、住民を取り込んでいった地域のリーダーたちの動きがあった。一方、葬儀社の参入による影響は副次的なものだった。専門業者の参入とパラレルに地域の互助組織が撤退し、相即的に葬制を変容させるのではなく、地域住民の主体性や合意形成こそが変化をもたらす最大の触媒となっていた。

  • 城郭と富士塚地名から富士信仰文化圏へ
    大谷 正幸
    2021 年95 巻1 号 p. 101-126
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

    浅間社は富士信仰を行うための施設であるが、富士信仰の多様さに合わせてその形態や実際に祀る神はさまざまである。本論ではその諸相を提示し、最終的に、富士山―一次的に富士信仰を受容する大都市文化圏―二次的に受容して独自にローカルな信仰様式・習俗を創り出す文化圏近郊や富士山との中間地帯、という構造が富士山を挟んで東西にあるとする富士信仰の伝播と受容に関するモデルを考えたい。浅間社の諸相として、中世の城郭に浅間社が祀られた事例、富士信仰に因んだ可能性がある地名を中部地方各県から検索し、その中から「フジヅカ」に関する事例、「フジ」という名を持っていても富士信仰かわからない社の事例を挙げる。特に「フジヅカ」については研究史上その定義をめぐって議論があり、議論の有効性に対して疑問を持つ立場から考えてみたいと思う。

  • 宗派横断的な視点から
    髙橋 秀慧
    2021 年95 巻1 号 p. 127-150
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

    本稿では、幕末維新期の政局に相対した寺院の動向を「生存戦略」と捉え、妙法院と智積院の陣所化の事例を中心に、西本願寺との比較検討を行い、横断的に考察する。

    まず、妙法院は、財政難から陣所化を積極的に受け入れたが、智積院は、学問所の機能維持を重視し、陣所化に消極的であった。次に、この事例分析を通じて、諸寺の生存戦略及びその実行プロセスには、近世的社会関係に起因する、寺院(宗派)の性格・機能や内部の「組織力」が強く影響していたことを指摘する。

    そして妙法院や智積院と比較し、西本願寺は、宗派内で教義的・宗教的権威を補完する独自の制度が整っており、門跡の格式と血統を備えた宗主がリーダーシップを発揮することができたと考えられる。さらに、こうした組織力は、生存戦略を進めるための意志決定や、それを実行に移すプロセスを他宗派よりスムーズなものにしたといえよう。

  • 法典調査会の議事録を中心に
    髙瀬 航平
    2021 年95 巻1 号 p. 151-174
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

    一八九九年八月三日、文相は、訓令第一二号を発し、全ての官公立学校、および学科課程が法令により規定された私立学校における宗教教育や儀式を禁止した。この規制は、当初「私立学校令」の勅令案の一条文として起草されていたが、法案審議の過程でその内容や法令形式が複数回変更され、また発令後も文部省から解釈が指示された。従来、こうした変更は、学校における宗教教育や儀式の禁止を強硬に主張した文部省が、政府他機関からの反対などに妥協した結果として説明されてきた。もっとも「私立学校令」案から宗教に関する条文が削除された法典調査会における審議については、これまでその議事録が散逸したとされてきたため、議論の内容が具体的に明らかにされてこなかった。しかし、本稿筆者は、この議事録の現存を確認した。そこで本稿は、こうした新資料を分析することで、文部省が妥協したのではなく、改正条約の実施を準備し、また全ての「宗教学校」を「私立学校」として監督するために、以前から構想していた計画をほぼ実現していたと主張する。

  • 京都市・晴明神社の事例
    ミア ティッロネン
    2021 年95 巻1 号 p. 175-198
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

    近年、日本の寺社仏閣の観光地化がますます活発になっている。宗教と観光を主に表象化論として論じてきた既往研究に対し、本研究では物質的側面に注目する。京都市の晴明神社は、映画『陰陽師』の影響で、二〇〇〇年代以降急速に参拝客数を増加させ、それにともない境内の整備や安倍晴明伝説を具現化する銅像の設置などを行ってきた。多様な理由で同社を訪れる人々は、これらのモノに対して常識に基づく「正しい」行動だけでなく、様々な実践を行う。こうしたパフォーマンスにおいて、モノは単に実践の客体ではなく、むしろ、そうした行動を導くアクターとして捉え返せるのである。本稿では、パフォーマンス論と物質的宗教論の観点を導入しながら、神社観光における人、モノ、環境の相互作用に光をあててゆく。

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