宗教研究
Online ISSN : 2188-3858
Print ISSN : 0387-3293
ISSN-L : 2188-3858
特集号: 宗教研究
99 巻, 2 号
特集:宗教研究の方法と課題
選択された号の論文の24件中1~24を表示しています
論文〔宗教研究の方法と課題〕
  • 編集委員会
    2025 年99 巻2 号 p. 1-2
    発行日: 2025/09/10
    公開日: 2025/12/30
    ジャーナル フリー
  • 稲場 圭信
    2025 年99 巻2 号 p. 3-27
    発行日: 2025/09/10
    公開日: 2025/12/30
    ジャーナル フリー

    本稿は、宗教の社会貢献活動、とりわけ災害時における諸宗教の役割と行政との連携におけるアクションリサーチについて筆者自身の研究実践の事例をもとに論じる。阪神・淡路大震災から令和六年能登半島地震の三〇年における宗教施設・宗教者の災害時対応と行政・社会福祉協議会等との連携を対象にし、被災地での宗教者による支援の現場や防災・減災の取り組みで研究者がどのように関わり、その知見をいかに社会に還元するか、学際的アプローチによる実践的研究の意義を提示する。そして、アクションリサーチの社会運動的側面・研究倫理、メディア・政治との関わりにも言及する。宗教研究におけるアクションリサーチは宗教と行政、地域社会をつなぐ実践的媒介者としての研究者の役割を再定義するものであり、宗教研究が社会課題の解決に資する実践的な学問分野として深化する可能性を示すひとつの研究実践であることを示唆した。

  • 認知宗教学の足場
    井上 順孝
    2025 年99 巻2 号 p. 29-53
    発行日: 2025/09/10
    公開日: 2025/12/30
    ジャーナル フリー

    一九九〇年代以降の認知科学やニューロサイエンスなどの急速な進展は、人間の心や意識、感情についての人文科学系の研究にも広く影響を与えている。欧米では宗教研究に影響が及んでおり、認知科学を踏まえた宗教研究が一つの明確な潮流をなしている。しかし日本においては、認知宗教学と称し得る研究は二〇〇〇年代に萌芽的研究が見られるものの、まだ本格的に展開されているとは言い難い。本稿では日本の現代宗教研究において課題とされている研究方法や具体的事象の分析方法を取り上げながら、認知宗教学が新たな展望を示しつつある事例を示していく。宗教はどの程度独自の領域の事柄とできるのか。アンケート調査や現地調査などにおける被調査者の回答を解釈する際に見逃されがちな視点は何か。カルト問題など宗教の負の面に対する従来とは異なる視点の提起などである。これまでの宗教社会学、宗教心理学、宗教人類学などで議論されてきたこととの連接点についても確認しながら論じる。

  • 川端 亮
    2025 年99 巻2 号 p. 55-78
    発行日: 2025/09/10
    公開日: 2025/12/30
    ジャーナル フリー

    本稿では、これまでの宗教研究と他の分野における調査研究において、社会調査がどのように使われてきたかを紹介する。そして、今後の宗教研究において、社会調査の方法やデータの分析方法をどのように発展的に活かせていけるかを検討し、そのためにはどのような課題があるのかについて考察する。量的調査研究ではランダムサンプリングによる全国調査、国際比較調査、特定の宗教教団の調査、ウェブ調査について概観したあとで、近年の統計的因果推論による研究の特徴を紹介する。質的調査においては、データの分析方法、分析ソフトの利用、データのクラウド上での保存の問題の点から検討する。混合研究法については、量的調査と質的調査の統合方法について説明し、量的調査と質的調査の組み合わせ方を時間の観点から検討する。また、テキストマイニングをもちいた分析方法の注意点を指摘し、宗教研究によく見られるライフヒストリー法で用いる例を紹介する。コンピュータやAIが発展していく今後は、これまでの調査方法から、AIを有効に活用するデータ分析の時代へと変化していくだろう。

  • 教育と方法論的課題の見地から
    木村 武史
    2025 年99 巻2 号 p. 79-102
    発行日: 2025/09/10
    公開日: 2025/12/30
    ジャーナル フリー

    本論文は、AIの将来的技術開発の動向も見据えて、宗教学における教育と研究に与える影響について試論的考察を加えることを目的としている。最初にAIと宗教に関する先行研究を振り返る。次に、宗教学説史において宗教と技術がどのように取り上げられてきたかを簡単に考察する。第三節では、AIが宗教教育に与える影響について考察し、昨今の生成AIの技術的発展は、学生が適切なプロンプトを書きさえすれば、授業のパワーポイントを作成するほど進展しており、AI教師と人間教師の役割について検討する必要があると論ずる。第四節では、知識基盤社会の土台となったAIを想定し、機械と人間的情報のハイブリッドとしてのAIを通して人間的であることの意味が示されるようになる事態の到来が予測され、そのような状況を解釈できる方法論的課題を探求する必要があることを指摘する。最後に、学会の在り方も変更するであろうと論ずる。

  • 竹沢 尚一郎
    2025 年99 巻2 号 p. 103-124
    発行日: 2025/09/10
    公開日: 2025/12/30
    ジャーナル フリー

    一九八〇年前後に、その後の人類学研究に影響を与えた二つの仕事が現れた。ラビノーとサリヴァン編集の『解釈的社会科学』と、オートナーの「六〇年代以降の人類学理論」である。これらはそれぞれ解釈と実践を重視する視点を打ち出したが、ギアツの解釈人類学とブルデューのハビトゥス論はこの二つの潮流を代表する研究である。ところが九〇年代になると、グローバル化と新自由主義の浸透による世界の変化を受けて、人類学でも苦難の人類学や暗い人類学と呼ばれる潮流が出現した。現代世界が課している社会的・経済的・心理的困難の実状と、それに抗するかたちでおこなわれている人びとの実践を研究するものである。人類学が異文化研究として規定されていたとき、宗教研究は人類学の中心にあった。しかし、それは新しい傾向のもとでは非中心化された。解釈と実践は宗教研究の二つの柱でありつづけたが、筆者は実践の観点を重視し、それを通じて人類史と宗教史を描くことを試みている。

  • 島薗進と森岡清美の教祖論から
    寺田 喜朗
    2025 年99 巻2 号 p. 125-148
    発行日: 2025/09/10
    公開日: 2025/12/30
    ジャーナル フリー

    本論は、新宗教の教祖研究をめぐって交わされた島薗進と森岡清美の相互批判を題材に、内在的理解の方法について検討を加えることを目的とする。両者は、中山みきの宗教体験へ共感的スタンスから理解を試みているが、アプローチに相違がある。島薗の研究は、超常的な力の働きとして宗教体験を説明するのではなく、実証科学の手続きをあえて踏み越えつつ合理的な説明を試みたところに特徴がある。一般化を志向する森岡の研究と比して個性記述的であり、実証性・客観性において難点を抱えるが、人間理解の可能性を切り開く独自の魅力と説得性を有している。

  • デジタル・ヒューマニティーズの現場から
    林 晋
    2025 年99 巻2 号 p. 149-173
    発行日: 2025/09/10
    公開日: 2025/12/30
    ジャーナル フリー

    情報技術を応用する人文学をDigital Humanities, 略してDHという。本論文では、歴史研究(特に現代史の研究)に対するDHの実際を、著者の歴史研究での経験をもとに解説する。そして、また、ChatGPTなどのAIの台頭を考慮に入れつつ、近未来のDHについて論じる。

    生成AI ChatGPTの登場を契機とすると思われるが、歴史学と人工知能AIとの関係について論じられることが多くなっている。その主たる論点は、AIやIT情報技術は、本当に歴史研究の手助けとなるのかという問と、将来的にAIなどのために歴史家の存在意義が無くなることはないのか、という問であろう。

    著者は、この二〇数年来、主に自主開発したITツールを使って、京都学派の思想史、数学思想史、そして、数学史の研究を行って来た。その経験のもと、これらの問について論じる。

  • 東馬場 郁生
    2025 年99 巻2 号 p. 175-199
    発行日: 2025/09/10
    公開日: 2025/12/30
    ジャーナル フリー

    宗教研究における研究者と信仰者の関係は、前者が後者にアプローチする際の研究道徳的な問題と、後者側から提供される情報の説明・解釈にかかわる研究理論的な問題とに大別できよう。国内では、調査現場における調査者と対象者をめぐる実践的な課題が多く論じられる一方、提供資料の解釈に関する両者の解釈の対立については、具体例に基づき議論されることはあまりない。以下では、最初に、アメリカの研究者が信仰者から受けた激しい批判と、それに対する研究者の弁明を紹介する。次に、アメリカの事例で当該宗教の信仰者である研究者が解決に向け仲介的な役割を果たした点に着目し、これまであまり議論されていない「信仰を持つ研究者」について検討したい。最後に、研究者と信仰者の関係を「自己と他者」との間の主観的関係と捉え、研究者が主観的自己を自覚しつつ、獲得した理解と解釈を信仰者と交換し共有することの意義を述べる。

  • 社寺の日誌からみえるもの
    平山 昇
    2025 年99 巻2 号 p. 201-222
    発行日: 2025/09/10
    公開日: 2025/12/30
    ジャーナル フリー

    現代の神社仏閣は初詣が年間でもっとも多忙を極めるという場合が多いが、戦前のある時期までは冬と夏はおおむね閑散としているというのが当たり前だった。ところが、東京や大阪などの大都市圏では一九〇〇年代から、それ以外の地方でも一九二〇年代から、全国各地で冬と夏の参詣客が増加するようになり、神社や寺院の関係者たちは忙しさを増していく。本稿では神社や寺院にのこされた日誌から宗教の現場である神社仏閣の近代史を明らかにすることの面白さを、西宮神社と宗像神社(現・宗像大社)の社務日誌をもとに示した。

    本稿の内容をふまえれば、社寺に初詣客が集まる光景がコロナ禍によって一時的に見られなくなったことは、忙しくない冬がおよそ百年ぶりに再来したという見方もできる。現代のさまざまな「常識」「当たり前」がコロナ禍をきっかけに見直されつつあるなかで、本稿の知見を今後の社寺のあり方を考える手がかりにすることもできるだろう。

  • 現象学でも一般法則定立でもなく
    藤原 聖子
    2025 年99 巻2 号 p. 223-247
    発行日: 2025/09/10
    公開日: 2025/12/30
    ジャーナル フリー

    二〇世紀後半以降、研究の専門化の進展やポストモダン・ポストコロニアル批評の影響により、マクロな比較研究は宗教学において(だけではないが)敬遠されるようになった。しかし、比較は何からかの形で研究に必ず伴われるものである以上、議論すべきは比較をするかしないかではなく、どのようにすればよいかなのだという認識も多くの宗教学者に共有されている。本稿は、宗教現象学を批判的に継承する二〇〇〇年前後の「新比較主義」提唱の後、認知科学・進化学の影響も受けながら、現在に至るまでどのような議論の進展があったかをレヴューする。なかでも注目するのは、比較を「理論」よりも「方法」としてとらえ、総合的に論じたM・シュタウスベルクやO・フライバーガーの試みである。フライバーガーの「方法論的枠組み」を実際に検証することを通して、比較を「方法」化する場合の利点と課題について考察する。

  • 松井 圭介
    2025 年99 巻2 号 p. 249-273
    発行日: 2025/09/10
    公開日: 2025/12/30
    ジャーナル フリー

    本稿は、地理学における宗教研究の方法論的展開とその特徴について検討するとともに、英語圏を中心とした国際的な研究動向を踏まえつつ、当該分野が直面する主要な課題を明らかにすることを目的とする。あわせて将来展望を行った。まず、宗教地理学の理論的枠組みの変遷および、定性的・定量的手法、さらにはマルチメソッドや比較研究など分析手法の多様化について概観した。加えて、宗教と都市・農村・移民・ツーリズム・グローバル化・デジタル化など現代社会における多様なテーマとの関係を整理し、GISやAIなど新しい地理情報技術の導入が宗教の研究にもたらす新しい視座の可能性を論じた。その結果、宗教地理学には、宗教現象の可視化に関わる課題や多様性の把握、技術活用と倫理的課題、研究成果の社会的還元など多層的な課題があることを指摘するとともに、今後も学際的で実践的な展開が期待されると結んだ。

  • 神社「由緒記」と学知との関係を中心に
    松本 久史
    2025 年99 巻2 号 p. 275-297
    発行日: 2025/09/10
    公開日: 2025/12/30
    ジャーナル フリー

    近世神道研究における新たな領域の開拓として、従来はほとんど顧みられることのなかった、神社の「由緒記」を研究対象として、多分野からのアプローチによる分析により、その作成意図や学術的・社会的な背景を明らかにすることが可能であることを提起する。中世においては、寺社縁起から神道に関わる言説を抽出し、中世神道の実態を明らかにしようとする研究が盛んである。一方、近世歴史学では、ムラ・イエのアイデンティティを語るため、「由緒」が作成されていることが明らかになっている。これらの関連する研究動向から勘案すれば、近世に作成された神社「由緒記」は、十分に学術的対象足りえる。具体的な事例として、近世中期における荷田春満における稲荷社「由緒記」の作成と同時代の稲荷社祠官のものとの比較を行った。併せて、春満門人の神職の作成した神社「由緒記」にも言及し、多様な学知や意図による由緒記形成のプロセスを示した。

  • 情報の非対称性を越えて
    師 茂樹
    2025 年99 巻2 号 p. 299-319
    発行日: 2025/09/10
    公開日: 2025/12/30
    ジャーナル フリー

    本稿はまず、ChatGPTに「デジタル時代の宗教研究の方法論」に関する論文の序論を書かせる試みを紹介し、そのなかで提起された「宗教研究の再設計(redesign)」という視点を批判的に検討する。そして、ウェブ2・0以降、情報にアクセスするための従来の「慣習」が失われてきたことを指摘するとともに、研究者自身もまた監視資本主義やアテンション・エコノミーのなかで無自覚に影響を受けている現状を指摘する。研究成果のオープン化やウィキペディアへの関与、情報技術の国際規格化などに研究者や学協会が参加することで、監視資本主義の「原材料」である研究者が自ら情報を提供・操作し、現状への抵抗を試みる必要性を説く。そしてそれは単なる抵抗ではなく、宗教研究の公共的な意味、現代的な役割を果たすことにもつながると結論づける。

書評と紹介
feedback
Top