レギュラトリーサイエンス学会誌
Online ISSN : 2189-0447
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8 巻, 1 号
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巻頭言
原著
  • 田中 伸枝, 西村 (鈴木) 多美子
    2018 年 8 巻 1 号 p. 5-18
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル フリー

    妊婦へのモノクローナル抗体の安全使用を検討した. 妊婦へのモノクローナル抗体の使用は明確に定義されておらず, 不明であった. したがって, 必要な場合にのみ投与する, または妊娠の間の投与は避けるべきとされていた. 日本で2016年度までに承認された新しいモノクローナル抗体の43の審査報告書を調査したところ, 妊婦への抗体の投与には2種類の妊娠動物毒性試験概要があったことを発見した. 毒性試験から妊娠動物と胎児の発育のために有害だったもの, あるいは, ICHのガイドラインをふまえて毒性試験が実施されなかったため, その安全性は不明であったもの (ICHS6 [R1]) であった. 医薬品医療機器総合機構 (PMDA) は, 薬理学的および免疫学的データによっても, 抗体のリスク–ベネフィットバランスを評価していた. 評価のための毒性試験データが不十分であったものでは, PMDAは妊婦への投与は避けるべきと結論づけていた. 添付文書に書かれている使用上の注意は, FDA, EMA, 厚生労働省の間で異なっていた. また, 日本のこれらの薬物の添付文書情報は, 妊婦と薬剤師のそれぞれにとって簡略化されたものであった. これらのモノクローナル抗体への妊婦の理解は, 薬剤師とのコミュニケーションに依存するようだ. 筆者らは, 審査報告書に重要な科学的根拠を見いだした. わが国の薬剤師が患者へ抗体医薬品のリスク–ベネフィットバランスを説明する際には, 薬剤師は, モノクローナル抗体に関するより多くの情報をもつ必要があると考える.

特集(バイオシミラー)
  • 豊島 聰
    2018 年 8 巻 1 号 p. 19-25
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル フリー

    厚生労働科学特別研究事業 「バイオシミラー使用促進のための課題解決に向けた調査研究」 では, バイオシミラー使用促進のための課題の洗い出しを行い, その課題解決のための提言をまとめた (結論参照). この提言は, 行政 (厚生労働省, PMDA, AMED) に対するものと製薬企業・アカデミアに対するものに分けて記述したが, 実効性を得るためには産学官が一致協力して実行することが必須である.

  • 木吉 真人, 柴田 寛子, 石井 明子
    2018 年 8 巻 1 号 p. 27-33
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル フリー

    バイオシミラーには, 高騰する医療費の抑制へ貢献が期待され, 直近の政府施策にもバイオシミラー承認品目数の増加が謳われている. バイオシミラーの目標製品品質プロファイル (QTPP) は, 先行品と同じであり, 先行品との同等性/同質性評価や, バイオシミラーの品質管理戦略構築においては, 有効性・安全性の確保を目的とした品質リスクアセスメントにもとづく重要品質特性 (CQA) の特定とその管理範囲の設定が重要となる. バイオシミラーでは, 新薬と比較して臨床試験の実施範囲が限定的であることから, 承認までに蓄積される知識は限られたものとなる可能性があるが, 承認後には新薬と同様に, 独自のライフサイクルマネジメントが必要である. 市販後も適切に品質管理が行われるためには, バイオシミラーの開発過程で, 有効性・安全性と品質特性の関連, さらには, 品質特性と製造工程パラメータの関連に関する知見を十分に蓄積しておくことが望まれる. 本稿では, バイオシミラーの規制および品質評価・管理に関する最近の動向を紹介する.

  • 赤羽 宏友
    2018 年 8 巻 1 号 p. 35-43
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル フリー

    バイオテクノロジーの発展により, さまざまなバイオ医薬品の商業利用が可能となり, 現在では臨床でその有効性が広く報告されている. 先行バイオ医薬品の市場独占権の失効に伴い, 多くのバイオシミラー (バイオ後続品) が開発され, 近年, 欧州, 日本, 米国において上市されている品目もある. バイオシミラー市場は年々着実に拡大しており, 2016年の世界市場は約16億ドル, 日本では約184億円となっている. さらに, 今後もバイオシミラー市場は, 特に欧米においてはいっそう拡大することが予想される. このような状況下, 日本における5種類のバイオシミラーの市場占有率を, 売上数量をもとにそれぞれ算出した結果, 4.2~90.2%となり, 品目によって大きく異なっていることが明らかとなった. バイオシミラーの市場占有率に影響する可能性のある因子としては, 各製品の特性やその市場環境といった製品側の因子や, 治療法や各種制度政策など臨床における使用環境側の因子など多くあげられる. そのため日本におけるバイオシミラーの使用拡大に向けては, さまざまな視点からの検討が必要となってくる. 最近, 日本政府から出された経済財政運営と改革の基本方針2017では, 革新的バイオ医薬品だけでなくバイオシミラーの研究開発支援の拡充などについても述べられている. 今後, このような取組みがバイオシミラーの使用拡大と, 日本のバイオ医薬品産業全体の発展に結びつくことに期待したい.

シリーズ(医薬品・医療機器評価をめぐる最近の課題)
  • 谷城 博幸
    2018 年 8 巻 1 号 p. 45-52
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/01/31
    ジャーナル フリー

    2017年7月, 本邦において再製造単回使用医療機器 (R-SUD) の規制が導入された. R-SUDは, 医療機関から再製造業者によって収集され, 洗浄, 滅菌, 性能検査のうえ再利用することを目的とした単回使用医療機器である. R-SUDの規制は海外ではすでに導入されているが, 規制体系には各国に差がある. 本邦のR-SUDの規制導入のために, 米国のR-SUDの規制が参考とされ, 本邦への規制導入検討の初期段階において, 米国のR-SUDの規制について医療機器の審査に係る専門的視点から調査が行われた. その必須要求事項は, 本邦でのR-SUDの申請のガイドラインに盛り込まれた. 本稿は, 著者がその規制の検討に参加した視点から論述している. 単回使用医療機器を再製造する点で重要な要求事項は, R-SUDのオリジナル医療機器のリバースエンジニアリングと, 再製造のための洗浄や滅菌の方法であり, それらの要求事項は本邦において適切な規則やガイドラインとしてR-SUDの規制に取り込まれた. 医療機器の製造業者, 医療機関, 使用される患者がR-SUDの本質的な理解を深め, 本稿が, 適切な単回使用医療機器の再製造やR-SUDの利用に関して, 本邦のR-SUDの規制を合理的かつ有効的に活用・運用を図っていくための一助になることを望む.

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