宝来沢扇状地(札幌市定山渓)において1973年に発生した土石流は飛地状の堆積地を形成した。その裸地状の地表面にはいちはやく木本が侵入し,1977年現在3年生と4年生の木本群落が存在している。このことから,旧堆積地に形成されている木本群落の年輪構成を調べることにより過去の土石流発生が推定されると考えられた。
この方法によると,団地状のケヤマハンノキ群落の示す22~23年(1973年現在)という時間は定山渓における過去の豪雨記録(1950年)と一致していることがわかる。
つぎに地形的な特徴をみると,1973年と1950年の土石流堆積の過程には流路が変化していることが明らかになった。このような傾向は羊蹄山の滝の沢扇状地の1975年の土石流においても,十分に観察することができる。
そこで,堆積地形と樹木年輪を情報源として,羊蹄山青木の沢扇状地において土石移動の実態を探った。その結果,土石流の発生により流路位置が変化し,変化した流路は新たな方向へ小規模な土石流を発生させ,扇状地は広い範囲にわたって変動していることが明らかになった。
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