巨大地震が起これば山地では多くの山崩れが発生する。治山・砂防対策上, 地震の前に土砂生産に影響する空間的な範囲と生産土砂量を把握する必要がある。これについて地震のマグニチュードと震度分布, 震度と崩壊率の関係等がわかれば地震による生産土砂量を予測できると考え, 具体例として四つの模疑的な巨大地震を設定した。
すなわち, 巨大地震の震央を富土川河口と御前崎東方沖の駿河トラフ上とし, 規模をそれぞれマグニチュード8.0および8.5とした。静岡~中部地方に震央をもつ主な地震の震度分布について震央から各等震度線までの震央距離 (最小値と最大値) を測定した。結果をマグニチュードと震央距離の関係として震度別に図化し, これよりマグニチュード8.0と8.5における震央距離 (最小値と最大値) を求めた。上記の震央を中心に各震央距離を半径として巨大地震の震度分布を同心円状に想定した。
このうち震度5以上かつ標高200m以上の範囲で山崩れが発生するとし, 震度
i (
i≧5) ごとに面積
Siを測定した。一方, 地震による山崩れの状況を記した文献からマグニチュード
Mと崩壊密度ρ, 震度に相当する加速度
Galと崩壊率
p%等を引用, 推定して次の経験式を得た。
ρ=1.86×10
-3exp
1.01Mp=7.03×10
-9・α
3.5α: 加速度 gal
震度
iに対応する崩壊率
piと上式から, 全崩壊個数
Nと崩壊面積合計
Aが次式で求まる。
N=ρ∑
7i=5Si,
A=∑
7i=5piSi計算の結果, 巨大地震で33400~516,000個の山崩れが生じ, その面積は31~2300km
2となる。地震による山崩れは尾根~平衡斜面に発生することから崩落土層の平均的な厚みを1mとすると崩壊土砂量は3×10
7~2×10
9m
3と推定され, 面積1km
2当り6×10
3~4×10
4m
3となる。
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