砂防堰堤用コンクリートの施工技術を向上させ,耐摩耗性コンクリートの製法を開発し,越流する砂礫を下流法面へ直接衝突させ,衝撃エネルギーを吸収,緩和させて前庭の洗掘防止をはかる必要があると要請されて久しい。砂防堰堤下流法の決定は,砂防堰堤を設計する場合の第一要件であるが,外力を受ける構造物の耐摩耗性と,外力の加わり方及び砂防堰堤の水通し天端を越流する砂礫の挙動をどを綜合的に勘案して決定する必要がある。既設砂防堰堤,床固工をみると,コンクリート水叩きには摩耗痕が残されている。コンクリートの施工技術が著しく向上している近年においては,この摩耗痕は越流砂礫の落下,衝突による突砕き摩耗を受けて生じたもので,流水は砂礫を流送する役割を果しているに過ぎない。そこで,この摩耗痕を解析すれば,越流砂礫の挙動を知ることが可能であると考えた。この報告では,既設砂防堰堤,床固工のコンクリート水叩きについて摩耗状況の実態調査を行ない,洪水流が水通し天端を流下するときの越流状況を基準にして摩耗痕を分類し,摩耗痕を解析することの意義と可能性について整理した。ついで,現場実験によって混合砂礫と流送させ,落下分布図から砂礫の落下終路を推定した。そして,この実験条件に従って摩耗痕を解析し,洪水時に流送砂礫が水通し天端を越流するときの挙動について考察した。それらの結果を要約すると次のとおりである。
(1)コンクリート水叩きの摩耗痕は,越流砂礫の経路,量,飛び出し速度などを反映して形成されており,平面型3通り(図-3),縦断面型5通り(図-5)に分類された。
(2)混合砂礫が水通し天端を越流するときは,かなり拡散され,単体で流下する場合と同様,粒径によって規則的な落下径路を示した。そして,その落下分布形(図-7,8)は,水叩きに残っている摩耗痕(図-2,4)とよく類似した。
(3)洪水時に砂防堰堤の水通し天端を越流する砂礫は,全流砂量の60~70%が水脈に含まれるか,裏側水脈に沿って落下する。
(4)水脈に含まれて越流するか,裏側水脈から離れて落下するか,その限界の粒径は越流砂礫の平均粒径にほぼ相当すると推定された。
(5)小洪水時に流送される砂礫は,既往全流砂量のほぼ5~10%と推定された。
(6)砂防堰堤の水通し天端を集中的に越流する砂礫の飛び出し速度(底流速)は表面流速の0.7~0.9で推定される。
抄録全体を表示