近年の河川上流部の開発とそれにともなう自然破壊は著しい。山地災害のみでなく,下流域では細粒堆積物の調節が河川開発の課題にもなっている。上流域の大部分を占める森林の取扱いがこの面で果す役割が大きいと考え,これまでの研究成果をもとに検討を行った。
表土の最終滲透能は,森林植生で覆われている場所では,林内の裸地よりも大きい値を示す。裸地の斜面浸食量は10t/ha/年であり植生に覆われている場所の浸食量より一桁以上大きく,また最終滲透能の大きいところでは地表流出が小さく,浸食量も小さい。この斜面浸食は,植生被覆によって容易に軽減できる。
林地崩壊は,皆伐作業を行ったところでは非皆伐区域の10倍の発生率がある。一方,荒廃渓流における土砂移動では,渓床・渓岸浸食による比重が大きく,渓床堆積土砂の安定工法が必要である。
森林の経営には,流域保全の原則とここで明らかにした浸食に関する特性を考慮にいれた計画が必要である。
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