扇状地や谷底において土石流の危険区域を知る方法として,今までは主として地形図の読図や空中写真の判読,現地における微地形調査や旧土石流堆積物の調査等の地形的判断による方法,過去の災害の聞き込みや文献調査などによる経験的方法が用いられてきた。しかし,土石流の性状が徐々に解明されるにつれ,Random WalkModel (以下RWMという) のような確率的方法,水理模型実験による方法,数値シミュレーションモデルによる方法が徐々に確立され,土石流の危険度の判定も主観的経験的方法からより客観的,力学的な方法へと発展しつつある。その中で,数値ミミュレーション (以下氾濫シミュレーションという) は,標準的なモデル扇状地を対象とした土石流の水理実験との比較により改良が試みられてきた。本研究では,実際に土石流災害が発生した長野県上高地の八右衛門沢扇状地を例として選び,氾濫シミュレーションによる土石流氾濫範囲の再現性を検討した後,計画中の土石流対策施設の効果を評価した・主な結論は以下のとおりである。
(1)八右衛門沢扇状地の模型を用いた昭和50年災害の再現実験と実験規模の氾濫シミュレーション結果とを比較し,無施設状態では氾濫シミュレーションが実験結果をよく説明することを確認した。
(2) 同じ扇状地模型を用いて行なった,施設がある程度存在する昭和54年災害及び計画施設を配置した模型実験の結果を実験規模の氾濫シミュレーションによって説明した。
(3) 仮想の土石流対策施設を配置し,昭和50年災害の土石流を対象として各施設の効果を評価し,施設配置を実験規模の氾濫シミュレーションのみによって検討した。
(4) 氾濫シミュレーションを大規模な扇状地に適用する場合,後続流を長時間流すと計算時間が膨大になる。そこで,計算の刻み時間 (△t) の大きくできる限界を検討した。
(5) 他のモデルとしてRWMをとりあげ,氾濫シミュレーションとRWMの結果を模型実験と比較し,2つのシミュレーションモデルの適用性を検討した。
以上の結果,氾濫シミュレーションの実際の扇状地に対する適用性が確認された。
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