安全活動に占める安全教育はきわめて重要な部分であり,関係者のひとしく認めて実施するところである.安全活動の対象に安全工学があるならば,安全教育の中には安全技術教育があってよいと考える.このような区分をすることはむずかしいが1つの分野があるので,これを工場で行なうためにはどのように考え,どのように具体化して行けばよいか,その例示を試み,あわせて教育の背景となるもの,着眼点に私見を展開して広く識者の御叱正を得たい(なお,文中の記述は一般論であって特定の個々の企業や個人を批判したものではない.利用にあたっては各位の誤解のないように御諒承を得たい).
締め付けカを受けた18-8ステンレス鋼製ボルトを35%MgCl2溶液中に浸漬し,その機械的強度が腐食時間とともにどのように劣化していくかということが調べられている.腐食液に浸漬後のボルトの引張り強さは,腐食時間にほぼ比例して減少する.また,その滅少の速度は締め付けによってボルトに負荷された引張り応力が増すほど大きくなる傾向にある.さらに,引張り試験を受けたボルトの破面の形態観察がなされ,腐食時聞の増加に伴う破面形態の変化が,機械的強度の劣化過程とほぼ対応していた事実が報告されている.
発火温度は安全工学上重要な数値であるが,可燃性物質全般についてはデータがまだ不備であり,現状では適切な予測方法がないので,今後も実測に頼らざるをえないと考えられる.著者は発火温度データを整備し,さらにはその推算法を探求するため,基礎的物質について一連の実測を行なっている.その測定結果の今回は17回の報告である.
約1.4%の濃度の灯油蒸気を12.7cm/secの流速で活性炭へ流したところ,活性炭部の温度は約170℃上昇して200℃以上を示した.また温度の上昇は灯油蒸気の濃度や流速を変えることにより変化した.発生した熱の収支を検討したところ,発生した熱の大部分がガス流によって失なわれたことがわかった.以上のこの実験から灯油のような炭化水素の蒸気を活性炭に吸着させて除去する際,防災上,吸着装置の設計,使用条件などを適切に選ぶ必要があることが認められた.
有機リン系農薬廃棄物中の過酸化物夢比色定量法を検討した.パプチオンあるいはマラソンのような農薬の製造過程で生成する廃水はおもにビス-(O,O-ジメチルチオノホスホリル)ジスルフィドを含むタール状物質として析出させ分けられている.タール状物質中の過酸化物の存在はタール状物質の発熱分解を促進するため過酸化物の量を分析する必要があり,ベンゼン・メタノール溶液中で2価鉄イオンと過酸化物を反応させ過剰の2価鉄イオンをo-フェナントロリンを指示薬として発色(λmax=510nm)させることによって定量した.いっぽう,ヨウ素滴定法では,ビス-(O,O-ジメチルチオノホスホリル)ジスルフイドがヨウ素イオン(I-)と反応し,ヨウ素を遊離するため,チオ硫酸ナトリウム溶液で滴定すると過大値を示した.
この許容濃度度はAmerican Conference of Govemmental Industrial Hygienists(ACGIH)の1974年度空気汚染物質許容濃度委員会(1974 TLV Airborne Contaminants Committee)の発行した ,Threshold Limit Values of Airborne Contaminants for 1974をACGIH の Secretary-Treasurer William D.Kelly氏の許可を得て翻訳転載したものである.原本では有害物質を特に分類せずに化学名,商品名なども混用してアルファベット順に並べてあるが,本表では検索の便を考慮して有害物質を無機ガス,有機ガス,一般粉じんなど,鉱物性粉じんに分け,それぞれ50音順に配列した.有害物質の名称はできるだけ日本化学会編「化学便覧」の命名法によったが,他の名称が一般的に用いられている場合にはそれも併記し,いずれからでも検索できるようにした.許容濃度の原語Threshold Limit Valueは本来,閾値(いきち)というような意味の語であるけれども,その意義は前文に述べられているように,Maximum Allowable Concentration,Maximum Permissible Concentration(最高許容濃度),Permissible Limit(怒限度)と同じであるので,ここでは許容濃度というもっとも使い慣れた言葉を使用した.今年の許容濃度委員会で最も議論の集中したのは,今年初頭より発がん性の問題が取上げられた塩化ビユルについてであったが,結局労働省の規制を待つ形でこの表の中では未定とされた.そのほかの発がん性物質に関して新しい知見が加えられ,昨年変更予告の形で登場したA1a,A1bの分類が今年度から正式に採用された.また有機溶剤について大幅な見直しが行なわれベンゼンが10ppmとなったのをはじめ,イソホロン,オクタン,ブチルアルコール,ヘキサン,ペンタン等の許容濃度が引下げられた.有機溶剤以外ではカドミウム粉じん,ヒューム,ホスゲン等が大幅に引下げられた.今年は許容濃度委員会の決定が遅れ,原文の印刷の校正不十分のためか誤りが多く,特に付録に誤りの個所が目立ったが,これらは翻訳の際に再検討し,できる限り訂正してある.
主として炭鉱鉱山で使用されている救命器を救護用と脱出用とに分け,これらと鉱山救護技術について,その生い立ちより現在に至る間の進歩発展の経緯を述べて現在の模様とその背景鷺紹介するとともに,これに関連する法規および機関などを解説し紹介した.ついで,技術的解説を行なっているが,構造の解説よりも性能あるいは使用上の技術的問題に多くふれるようにした.さらに,数多くの災害時の活動の事例のなかから,いくつかをあげてその模様を脱明した.これらの鉱山における救護関係の技術が少しでも参考となり,各方面においてさらに発展することが願いである.
可燃性液体の小量取扱いは,使用状況が多様で,安易に扱われがちなことや,法規制対象外の場合が多いなどの事情から,安全対策上の盲点となっていることが少なくないと考えられる.たまたま,米国内で,とくにエネルギー危機との関連で,小量可燃性液体の取扱いについての問題が重要になってきたとして安全上考慮すべきポイントを述べた小文が見受けられたので,以下にその要旨を紹介する.