円筒形容器に充填した炭素粉末の発火の実験を行ない,発火におよぼす酸素の拡散の効果を検討した.その結果,極めて低い温度で加熱した場合と逆に極めて高い温度で加熱した場合は,いずれも拡散の影饗が少ないのに対し,発火限界の温度を中心にその前後の領域では拡散の影響が顕著で,従来の熱発火の理論では見られない特徴的な様相が観察された.こうした特徴的な現象は,熱収支と酸素収支の式からなる連立偏微分方程式を数値解析することにより検討され,その結果は実験とかなり良い一致を示した.また,温度分布の時間的変化を詳細に観察した結果,発火の規準としては温度分布曲線が放物線形を維持できなくなる限界をとるのが最も良いという結論に達した.
スメルトが水と接触することにより生ずる爆発,スメルト-水爆発は蒸気爆発の1つである.この種の蒸気爆発の機構において,微細化は重要な問題である.この微細化に及ぼす因子の中で,スメルトの表面張力は主要なものであると考えられる.本研究は,種々の組成の溶融塩を用いて,その表面張力と蒸気爆発の関係を明らかにしたものである.すなわち,炭酸ナトリウム,炭酸カリウム,硫酸ナトリウムの単純塩は表面張力が大きいが,これらの溶融塩に塩化ナトリウムや塩化カリウムが加わると,表面張力が急激に減少する.表面張力の大きな溶融塩は,微細化が起こりにくいために,蒸気爆発を生じないが,表面張力の小さな溶融塩は微細化が起こるために,蒸気爆発を生ずる.さらに,表面張力の値によっても微細化のプロセスが異なることがわかった.
廃棄物処理センターの運転には多くの不確定因子(廃棄物の形状や性状のランダム性,処理装置の高故障率など)が介在することに着目して,待ち行列理論により系内滞留廃棄物量に関する確率密度関数を求めた.ここに,処理センターヘの到着廃棄物ロットの大きさは処理ロットのそれの実数倍(1より大)とおかれた.
結果1:廃棄物貯蔵ヤードの容量が過小なときは,処理装置の機能を十分に発揮できない.危険率s(ヤード容量が不足する権率)を規定して,貯蔵ヤードの容量を決定した.s=0.05とおいた場合の計算例を紹介したが,この手法はs≠0.05の場合にも適用できる.
結果2:廃棄物処理装置の運転停止の頻度は,一般の製造プラントのそれに比して高いと推定される.この運転停止に伴う損失(この損失は4分類して評価された)を廃棄物処理原価に組み込む手法を求めた.
発火温度は安全工学上重要な数値であるが,可燃性物質全般についてはデータがまだ不備であり,現状では適切な予測方法がないので,今後も実測に頼らざるをえないと考えられる.著者は発火温度データを整備し,さらにはその推算法を探求するため,基礎的物質について一連の実測を行なっている.その測定結果の今回は18回の報告である.
鉄鋼業の衛生管理の中で,温熱環境の管理は重要な課題である.温熱環境は,①輻射熱,②気温,③湿度,④風速を総合的に評価すべきであるが,当社では,この4要素に,労働強度(RMR)を加えた,評価指数である,川鉄温熟指数(KHI)を用いて管理をしている.KHIについては,すでに参考文献2)に詳しく述べられているので,ここでは,2~3の改善事例を通して,当所における温熱環境管理の一端を紹介する.
動物による災害は減少しつつあるが,間接的な災害は増加の傾向があり,新しい災害の種を作っている.ここでは直接的災害を猛獣,家畜,海生動物,昆虫などに別けて紹介したが,交通機関の発達は対象とする動物の種類を増加させているし,海洋開発のような新技術の開発時の安全には海生動物も含まれることがわかる.間接的災害も技術の発展が生んだもので,小さな鳥のためジェット機が墜落する惨事も現実に生じた.この他クラゲによる停電,ガス事故なども社会的に大きな影響を与えることが災害例から知ることができる.これらの災害を防ぐにはまず,動物の習性をよく理解することが重要であろう.