火薬類や有機過酸化物に代表される不安定物質には,火災や爆発などをおこすいわゆるエネルギー危険性を持っているものがある.しかしながら,我が国では不安定物質のエネルギー危険を評価する手法が確立しておらず,そのために危険性が見過ごされて起こった事故の発生も確認されている.諸外国においても似たような実状であるが,国連やOECDではこれら不安定物質の評価法の統一が積極的に議論されている.ここでは,種々の不安定物質の評価法を国際的動向も含めて紹介する.
PID-SCR温度制御技術を応用して新型の自然発火試験装置を製作した.この装置によって記録される物質の断熱発熱曲線に関して(2)式が成立する(2)式と Frank-Kamenetskiiの熱発火限界条件との間の関連式{(9)式}を適用することにより物質の熱発火限界温度を比較的容易に算出することができる.過酸化ベンゾイルの75-85℃における発熱分解反応につき,活性エネルギーE=62.87kcal/mole,頻度因子A=8.75×1030mole/cm3・min;また,80℃におけるこのものの熱拡散率を5.76×10-2cm2/minと求めた.これらのデータに基づき,この物質の10kg包装品の熱発火限界温度を79℃と求めたが,この値はこの物質に関するSADTの値82℃にかなり近い.
使用済核燃料輸送容器の破損による冷却水喪失時の温度分布を,1次元モデルを用いて算出した.その結果,冷却水完全喪失時にはキャスク中心部は,核分裂生成物の崩壊熱だけで1000℃を越える温度となることがわかった.この温度はきわめて危険である.セシウムは気化し,放射性ガスとなって環境中に流出するであろう.また燃料被覆管は水・金属反応を起こし,大量の熱と水素を発生するため,キャスク中心部の燃料棒は崩壊・容融することとなろう.
石油タンクシステムの構成のグラフ的表示を基にして地震被害モードの関連をグラフ表示し,被害モードの相関度を事例データから評価する方法を示し,そのベージャン確率的解釈を与えた.地震被害の発生確率をタンク構成要索の潜在的被害率と地震,地盤特性による係数の積で表示し,それぞれの要因を事例データから算定する方法について述べている.上記の方法を新潟地震,十勝沖地震および宮城県沖地震の被害データ分析に適用し,斉合性のある結果が得られ,石油タンクの被害の特徴と発生確率の推定値を与えた.
空気やガス中の水銀蒸気をできるだけ完全に気体より分離捕集できる除去技術の確立を目的として,水銀蒸気に対し吸着容量の大きな個体吸着剤の探索の実験を行なった.すなわち,固体吸着剤単独(8種類)及びこれに反応試薬を吸着させて乾燥して得た吸着剤20種類について,水銀を含む空気の流れを作り,吸着による分離除去の実験を行なった結果,三酸化クロム添加シリカアルミナ系吸着剤,塩化第二銅添加シリカ系吸着剤が最も勝れていた.吸着剤単体の中ではやし殻活性炭が最も勝れた成績を示した.これらは液体吸収法などより,はるかに除去率が高いので,安全工学上,水銀の有効な除去剤であるとの意義を得た.
溶接構造物の信頼性解析は,(1)現象がきわめて複雑である,(2)「人間」など数量化しにくい要因も少なくない,(3)大型構造物の大部分は少量生産品である,などの理由により容易ではない. 本文では,(1)有向グラフの概念を利用すれぱ複雑な故障論理を計算機上に再現できる,(2)したがって,因果関係まで含めたデータベースが形成可能である,(3)故障論理のネットワークは最短路問題に帰着でき既存のORの算法を利用して信頼性向上策が決定できることを論じた.