わが国および海外諸国における工業化学物質の事前審査制度について概括した,わが国における化学物質審査規制法の改正について,特にその背景・目的および改正内容と今後必要とされる安全性情報について詳しく述べられている,このほか,EC(ヨーロッパ共同体)・米国での安全性審査状況・届出数,またOECD(経済協力開発機構)における最近の活動,特にテストガィドラインのアップデーティング状況についても触れている.また,総括として,今後もより適切な安全性評価手法の確立のための努力が必要な ことが述べられている.
酸素-水素系およびメタン-空気系の定容断熱燃焼過程にマキシマムエントロピ法を適用し,その結果を化学反応方程式の数値解と比較することにより有効な束縛条件についての検討を行った. 始源系の化学種および圧力を束縛条件としたとき,エソトロピ,温度,主要な化学種の濃度の時間変化のマキシマムエソトロピ法による計算値と反応方程式の数値解とはよく酔致し,この方法が複雑な化学反応系の解析に有効であることが示された.
フレームレス原子吸光光度法による大気中のベリリウム測定法の確立を目的として種々検討した結果,以下の諸点が明らかとなった. (i) 試験溶液にランタン(試験溶液に1000ppmのLa3+を含む)を添加することにより再現性が 向上すること.また,大量な共存イオン(Al3+,Si4+等)の干渉が回避でき胤 (ii)試験溶液の液性としては,塩酸・硫酸は1Nまで,硝酸は3Nまで影響がみられなかった、本法 では0.5N硫酸を用いることとした、 (iii) 本法を用いて,標準試料(岩石・フライアッシュ・土壌)中のベリ、リウム含有量を分析したところ,それぞれの保証値・参考値にほぼ一致し,本法の有効性が認められた・ (iv) 採取用ろ紙の空試験値を調べた結果,シリカ繊維製ろ紙はベリリウム含有量が少なく適している. (v) 本法の測定限界値は,試料空気量2000m3で0・025ng/m3である、また,神奈川県下,3地点 (工業地域・住宅地域)で大気中のベリリウム濃度を実測したところ,工業地域で0・04~0・08ng/m3,また住宅地域で0.03~0.07ng/m3であった.
フレームアレスターの消炎挙動を理論的および実験的に検討するために,最も基本的なタイプのアレスターである,平行平板型アレスターを用い,消炎実験を行った.消炎は火炎伝ぱ速度が速い場合には‘‘吹消え”現象により,また遅い場合には熱損失により生じることを明らかにし,それぞれ臨界速度が存在することを示すとともに,臨界速度に及ぼす,平行平板長さおよび間隔の影響を明らかにした, 消炎現象を二つの簡単なモデルにより検討し,消炎挙動を検討する際に有効な関係式を提唱した.
石油化学コソビナートの保安・防災・防犯を含むセキュリティの確保は,設備のハードと管理のソフトで成り立つセキュリティシステムが十分に機能することによって達成される・本稿では・まずソフトの代表である運転マニュアルを説明し,つぎに設備に組み込まれている保安設備を予知予防・未然防止・拡大防止という三つの観点より解説した.さらに,異常措置訓練用の訓練施設および不法侵入者防止用の防犯システムについて説明した,最後に,設備の突発的な事故を防止し,安定した操業を確保する目的で近年実用されるようになってきた設備診断システムについても言及している.
炭鉱の保安のシステム化は坑内条件から非常に難しいが,近年,炭鉱でも集中監視システムが導入され,技術の進歩とともにハードの面では着実に伸びてきている.炭鉱災害からみた保安システム化の困難さ,間題点について述ぺる.
昭和60年8月,神奈川県下の自動車部品の製造工場において, ドラム缶などに入れて放置されていたアルミニウム粉末を含む産業廃棄物(研磨くず)が溶接の火花によって燃え上がり,作業員が焼死するという事故が発生した.アルミニウム粉末の火災爆発例は目新しくはないが,30~50%も水分を含んでいるものが燃焼するであろうかとい5疑問が持たれたので,研磨機から採取した研磨くず等を用い,種々の含水率における着火燃焼性を調べた.その結果,含水率が40%以下であれぼ燃焼するということが確認された.