成層圏オゾン層の枯渇問題に関連して,昨年,クロロフルオロカーボン(フロン)の生産量・消費量の国際的な規制(モントリオール議定書)が合意されたが,その日常生活,産業活動に与える影響は決して小さいものとはいえない.ここでは,①成層圏での化学反応とオゾン層の形成,②フロンが対流圏では非常に安定で放出された大部分が成層圏に移入していくことにより,成層圏オゾン濃度がなぜ減少すると考えられるのか,③南極のオゾンホール現象は地球的規模でのオゾン濃度減少の前兆なのか,④地球の温暖化に対するフロンの寄与,などについて現在までの研究状況を紹介した.また,フロン規制に対応して今後,必要となるフロンの回収,再利用技術やフロン代替物質の開発動向について述べた.
雰囲気温度を正弦曲線状に変化させ,活性炭の限界発火温度が,雰囲気温度を一定としたときに比較してどのように変わるかを測定した。温度変動の振幅は5,10および15℃とし,周期は0~3時間とした.その結果,全般に限界温度は低下し,この傾向は,変動の振幅が大きいほど,そして周期が長いほど顕著であることがわかった.周期が長い場合,温度変動のタイミングによって発火の可能性も変化する.実験結果をAdlerらの理論的検討と比較したが,傾向は一致しても,限界温度自身の一致は必ずし も良好ではなかった.
その結果,つぎの JISに定められたタグ密閉式引火点試験法では,クリーム状のエマルション燃料の引火点を正 エマルション燃料の内相比が60~70%を超えてクリーム化すると,炎の接近などにより局所 試料的に温度分布のない状態で測定したエマルション燃料の引火点は,内相比にかかわらず一 定とみなせる.そしてその温度は,純粋な燃料の引火点より少しだけ高い.
汎用されているブレーキ液は少量の水分を吸収すると沸点が著しく低下する欠点があり,べ一パロックを生じやすくなって危険である.車両の軽量化あるいはブレーキの引きずりによる燃費を改善するためにチェックバルブが廃止されたので,高沸点の状態に維持する安全管理は従来以上に重要である, ブレーキ液の比誘電率を測定して含水率の経時変化を調べると,4箇月で著しく増大しているものもあれば1年半経過しても小さいものがある.リザーバタンクのブレーキ液の比誘電率をチェックし,含水率が一定の値になった場合に交換するようにすれば効果的な安全管理が行える. また,ブレーキ液の廃液は吸湿し浮遊物等を含有しているが,化学的に完全に変質しているものはほとんどなく,蒸留やろ過によって再生できる.
内径100mm,高さ100mmの円筒型容器を用いてホスフィンの爆発限界を測定した.点火にはニクロ ム線に直流電流を流して溶断する方法を使用した. 酸素濃度を約21.5vol%に固定してホスフィン濃度を大きくすると,1.61vo1%から圧力が発生するようになった.約1.71vol%までは発生圧力は徐々に上昇し,その後急激に上昇,約1.9vol%を超えると再び濃度による圧力の変化は少なくなった。発生圧力の小さいところでは容器内の混合気の一部しか反応していない、ただし,1.61vo1%以下でもニクロム線近傍では反応が起こったものと考えられるが,圧力上昇は観察されなかったことから,1.61vol%以上ではある程度火炎が伝播し・たものと考えられる。窒素濃度を変化させた実験などから,空気中の爆発下限界は1.6vol%である.
昨年11月15日(日),私共の研究室で考案した新しい防災訓練法を,墨田区東向島二丁目町会,向島消防署,墨田区役所等関係機関の協力を得て実施することができた。「災害体験ゲーム」と名付けたこの訓練法は,大地震により想定されるさまざまな被害を,パネルの絵や発煙筒を使って,合図とともに一斉に町のなかに仕掛け,訓練参加者に,消火・救護・避難などの臨機応変の対応を,いくつかのチームごとの対抗戦により,ゲーム的感覚で行ってもらおうというものである, 当日は,小雨がぱらつくあいにくの天気であったが,例年の2倍近い250名強の参加があり,心配された事故もなく,初の試みとしては大成功を収めた.ここでは,発想の経緯とねらい,開発上の工夫と準備,実施後の効果等について述べて,諸氏の参考に供したい.
昭和59年11月26日ゲルマン充てん容器が川崎においてトラックから荷おろし中に爆発した事故については,すでに高圧ガス保安協会から事故調査報告書が刊行されているが,原因は理論的に解明されてはいない.しかしながら,最近この種の特殊材料ガスの需要が拡大されつつあるので,類似事故防止の立場から,当時を振り返ってみて,疑わしき要因をすべて包括した安全対策を提案することにした.