最近の事故情報から学んだ技術者,管理者,監督者のそれぞれに対する教訓を述べ,監督官庁に報告義務のある事故については,関係当局から発表されている事故情報を活用できることを例を挙げて説明している.また・リスクアセスメントにおいてリスクを定量化し,リスクを低減するためには信頼性データバンクが必要なことを挙げ,関係各方面に対する期待を述べている.
本論文では,オペラビリティ・スタディから得られる知識を用いて,知識工学的手法によりフォールト・ツリーを自動生成する手法を提案した.プラントに対して入出力の概念を用いた改良オペラビリティ・スタディを実施し,その結果を論理式(原因式,影響式)に表現し・データベースに格納する.データベースに対して,情報探索を行い,事象を展開し,対象とするシステムのフォールト・ツリーを生成することができる,本論文で提案する手法をソルベイプロセスに適用し,ツリー生成例を示すとともに,手法の有用性を明らかにした.
燃料タンクなどにおいては漏えいの発生は事故に結び付くので,検出能力の高い気密試験装置の開発が急務である.前報までに報告した気密試験装置はこの要請にこたえうるものであった.この装置の実用化にあたっては,使用される周囲の温度(環境温度)の影響を調べ,その補正法を確立することが重要である,そこで,15~40。Cの範囲で実験的に環境温度の影響を調べ,補正法を検討した.カルマンフィルタはシステムの状態方程式を内蔵しているので,同式中のパラメータを環境温度により補正することとした.パラメータは環境温度に対し1次の関係があることがわかったので・この1次関数を補正式として組み込んだ.その結果,上記温度範囲全体にわたって,高い正報率で判定が可能となった.本報の気密試験法はたんに圧力の大小では判定できない場合にも適用可能なことも確認された.
本論文では制御系の計装器の異常検知システムを取り扱う.異常検知の手法の1つとしてカルマンフィルタを用いたものが提案されているが,この方法では適用が困難な場合がある.このような場合に対して,拡張カルマンフィルタを用い,その適用範囲を広げる方法を考案した.本稿では,カルマンフィルタの適用が困難である状況をシミュレーションによって提示した.さらに,こういった状況においては拡張カルマンフィルタが有効であることを示した.さらに,カルマンフィルタと拡張カルマンフィルタを用いた方法による異常検知をシミュレーションにより比較し,提案した方法の有効性を示した.
日本石油化学川崎事業所で行っている事故情報の収集・処理および活用を総合的に行う「HAT情報管理システム」につき紹介する。事故情報といっても海外の災害から事業所のヒヤリハットにいたるまであり,ここでは災害・事故事例のパソコン・光ディスクファイルによる処理,災害・事故事例用ライブラリーの設置とその活用方法を中心に述べる.
災害事例情報データベースは,昭和57年以来さまざまな分野の安全問題の研究者が集まって構築してきたものである.このデータベースでは,あらゆる種類の事故・災害を対象とするとともに,事例1つ1つについて発生から終了,その後の裁判や社会的影響に至る広い範囲の文献を収集し登録している.災害現象が複雑化している中で,個人・企業を取り巻くさまざまなリスクを検討するためには,こうしたデータベースの活用が今後ますます重要となろう. これまでにも,さまざまな検索依頼や問合せがあり,当初われわれが考えてもみなかった使われ方があることもわかってきた。現在,約3万5千件の事例が登録されており,近くオンラインでの情報提供を開始する予定である・多くの方々のご指導・ご協力を仰ぎたい.
最近の高度情報化が進展する社会のなかでは,情報の有する価値はますます大きなものになっている.このことは,安全・災害防止にかかわる分野でも例外ではない。そこで重要な役割を果たす「かぎ」となるのはデータベースである. ところで,労働省産業安全研究所ではこれまでにも,労働災害に関連した情報のデータベース化については,積極的な取り組みを行ってきた.そこで本稿では,労働災害事例にかかわる調査資料から得られる情報のデータベース化に関連して,現在まで当研究所で行われてきた活動の経緯と,当所においてプロトタイプとして開発された「労働災害事例検索データベース」とについて,紹介を兼ねて簡単に述べさせて頂くこととしたい.
消防科学総合センターで,現在,保管・管理されている火災報告,消防防災現況調査,防火対象物の実態等調査,危険物規制事務調査などの消防統計データ,および,消防防災に関する計画書,統計資料,災害記録,調査研究成果などの消防防災文献資料について,それぞれのデータの性格,内容,蓄積範囲,利用状況などについて述べた.なお,消防防災文献資料については管理運営規定が整備され公開されているが,消防統計データについては,一般へのデータ提供方法や利用規定について未整備であり,今後 の課題となっている.
化学工場,関連業務分野における事故例を収集,分析整理してコンピュータに登録,活用している住友化学の“安全情報”につきそのシステムの概要と活用例を紹介する. “安全情報”は事故例をキーワードで検索しうる索引リストに編集され,住化技術1青報センターを介 して外販されている.