技術と社会情勢とは密接な関連性を有し,社会情勢が変化すれば技術も同時にその影響を受ける.本文でははじめに激変する社会からの,考えられる主要な影響を経済社会,および社会正義(環境と安全にかかわる人権問題)の視点から論じる. さらに,設備技術の信頼性/安全性を確保するための新たな理念と方法論,およびそれらの具体的手法,例えば信頼性の定量的評価の方法,競合リスク,比例ハザードモデル,予測モデルに基づく検査・監視手法の理論,あるいはその応用の分野と可能性について論じる.
「エマルション燃料は,水と油の共役溶液燃料である」と仮定し,エマルション燃料の引火点を推算し た.その際,必要となる活量の推算にはUMFAC法を用いた, この推算法によれば,エマルションに関する情報も純粋燃料に関するこのための測定も必要とせず,文献値のみから引火点を推算することができる。 推算された引火点は実測値よりも一般に大きい側に偏る傾向はあるものの,全体としてはエマルション化による引火点の上昇をよく表現した.実測値からのずれの平均値は全体としては1.6℃であり,モル分率が0.9以下の領域に限っても2.0℃であった.
可燃物の燃焼スモークからの高反応性で,長寿命の酸素中心気相ラジカルの生成機構を明らかにするため,ポリメタクリル酸メチルとポリプロピレンの燃焼スモークをスピントラッピング法を用いてESR により解析した。燃焼スモークをトラップした溶液に所定時間後にスピントラップ剤を加える方法により,燃焼スモークからの気相ラジカルは,液相中でも著しく長寿命であることを見いだした.また,一78℃ で燃焼スモークをスピントラップし,昇温下でESRスペクトルを測定すると,一30~一40℃前後でスペクトル強度が増大する.以上の事実は,可燃物の燃焼スモークからの高反応性で長寿命の気相ラジカルは,シガレットスモークの場合のオレフィンーNOガ空気系反応とは異なり,トリオキシドのような準安定含酸素化合物の生成と分解が関与する機構で生成することを示唆している.
三軸圧縮応力下での石炭の破壊実験を行い,18点でAE波形を計測し,551個のAE震源を決定し た。 その結果,主破壊発生前の群発的なAEの発生過程において,AE発生が一時期沈静化するAEの空白期の存在することを明らかにした。また,AE震源分布のフラクタル次元が,破壊の進行に伴って減少し,破壊の直前ではその傾向が特に顕著であることを明らかにした.
原油を液面燃焼させてその燃焼性状を調べた,使用した容器は直径0.1mの円筒タンクから1辺2.7 mの角型タンクまで,適宜,大きさを変えた.実験の結果,(1)定常燃焼時の外部放射熱,スス生成量(煙収率),燃焼効率の規模効果,(2)燃焼後期に現れる水沸騰現象の激しさ,開始までの時間と燃料層の関係,(3)燃焼の結果生じるススの形状,大きさについての知見を得た.
三菱化成水島工場では,昨年,シミュレータ訓練設備を軸とする技術教育センターを開設し,オペレータの運転技術の向上を目指した教育を開始している, まず,教育すべき運転技術とは何かを,オペレータの職場における役割にさかのぼって問い直し,そこから導かれた二一ズを基に,訓練設備と教育システムを構築した、ここでは訓練設備,教育システムおよび教育訓練の実施状況を紹介する.
石油化学プラントにおいては,第1次石油危機の前後に,大きなプラントトラブルを多数経験し,安全操業が何よりも社会的に要請され,それ以降関係者の間では,つねに安全・安定操業の見地から,プロセスの安定性と,オペレーションの信頼性を重視するようになった.近年自動制御システムの進歩で,新たに登場したCRTによるオペレーションは,従来の制御システムによるオペレーションとは,別の観点からとらえる必要があり,特にオペレーションの教育訓練についてシミュレータの有効活用に期待 が集まっている.
1984年3月,米国テキサス州カレッジステーションにあるテキサス農工大学付属の消防訓練学校で・防災資機材などのメーカである米国ナショナルフォーム社(現在の社名はチャブナショナルフォーム 社)が主催する実規模の各種石油火災泡消火などに関する教育訓練(National Foam Fire School)の4日間コースを受ける機会を得たので,その概要について述べる,
協力会社の工事・作業が延べ労働時間で約250万時問/年に達する中で,協力会社作業員の安全確保も,会社従業員と同様でなければならないとの観点で,会社と協力会社とが協力して,一体感のある活動を目指して取り組んでいる. 約30年間にわたる協力会社安全協議会の安全活動は,試行錯誤の歴史であったが,昭和63年度に念願の完全無災害(休業・不休災害ともゼロ)記録を達成できた. ここでは,これまで協議会が種々工夫をしながら実施してきた労災防止活動の概要を紹介する.
この究明を通じて,日本の火災統計のうちで,「死因別の火災による死者数の推移」は,その集計過程に問題点があると指摘した, この分析結果から,焼死者発生の問題点は,集積した易燃性可燃物の急激な延焼拡大である.建物内に合板内装材,プラスチック,紙類,繊維類が集積していると,これらに火源から着火して急激に拡大 する。 このような急激な延焼拡大は,必然的に酸素不足の不完全燃焼になるので,出火建物内に高濃度の一酸化炭素を含んだ煙が充満する。この煙に取りまかれた滞在者は,短時問でCO中毒になり,行動不能 で倒れ,避難することができなくなる. この事例研究から,火災による死者発生要因を究明するうえで,消防が行う火災原因調査事務は,重要な役割を果たすことができる、そのためには,調査過程では監察医による死体検案結果をぜひとも参考にすべきである.また,焼死者の煙中における,短時間での行動不能原因についても,究明されるべ きである.