近年の技術の革新により,大システムも身近な機械類も変容が著しい,これに伴い,人問の役割と作業の内容も変化している.これらにより,危険へのプロセスの変化も生じる。このなかでのヒューマンファクターを,システム計画段階・検査・保全などの各レベルでとらえ,計画段階での人と機械の機能のさせ方の重要性,検査・保全など非リアルタイムの作業でのヒューマンエラー効果の重要性などとその対策などを述べ,安全工学と人間工学の接点と,共有する関心事を探る.
定電圧・定電流放電発生装置を着火源としたときの炭じん雲の着火現象について,放電電極問での着火現象による発光を赤外域の光電子増倍管により観測し,その結果を基に着火現象について考察し,以 下のように推論した. 放電開始により電極問の気体と粒子の温度は上昇を開始し,その途中で燃焼・発熱が開始する,そして火炎核が形成され,固定炭素を主体とした燃焼が続く,着火・爆発に至る場合は,火炎核からの熱を ・受け,その近傍の粒子が燃焼を開始し,火炎が伝搬する. 放電開始から火炎核が形成され,火炎の伝搬が開始するまでの時間(着火遅れ時問)は数十msであ った.
減圧DSC測定により,多くのエネルギー物質の相変化熱を安全,迅速に高い精度で直接測定することができた.この相変化熱は気相生成熱から凝縮系生成熱の推定に用いることができ,凝縮系のエネルギー物質の熱化学計算によるエネルギー危険性評価に有用である.求めた各エネルギー物質の相変化熱 (kca1/mo1)を蒸発熱(△Hv),昇華熱(△Hs)の順でそれぞれ以下に示す。TNT,19。3,24.9=TNA(2, 4,6-Trinitroauiline),22.9,29,8;DATB(1,3-Diamino-2,4,6-trinitrobenzene),26.5,35,DATB(1, 3,5-Triamino-2,4,6-trinitrobenzene),一)43,6;PETN,一36.4;Tetryl,25、9,31,8;AN(Ammonium nitrate),42.9,44.4;Picric acid,21.0,25.4;TNMX(2,4,6-Trinitro一m一xylene),2LO,29.3;C1一TNB (2,4,6-Trinitrochlorobenzene),20.4,24.8;TNR(Styphnicacid),22・2,28.7;o-NPHZ(2-Nitrophe-nylhydrazine),23、8,29,8.
化学工場の火災・爆発事故事例415件を収集し,事故に関連する項目で整理して,デー一タベースを作成した,また,これら項目の各因子間の類似比を相関度として求めた. 事故の直接原因を推定するため,両者を含むエキスパートシステムを構築し,「作業状態」,「装置・機械」,「着火源」,「着火物」,「事故結果」などの項目についての質問に順次答えることによって,「直接原因」を推論結果として利用者に提示することができた. このシステムを既知の事故事例に適用した場合,推論結果として,およそ90%の,そして未知の事故 に対』しておよそ70%の正答率を得た.
Frank-Kamenetskiiの条件式ほどよく知られていないSemenovの限界発火条件式をSemenovの原 典に基づき誘導してみる. ついで,両者のもつ物理的意味についてBiot数と関連させつつ分析比較し,両者は熱発火理論を構成する2つの主要な限界発火条件式として統一的に理解できることを示す. 最後に,物体の限界発火温度を実際に求める際に用いられる3つの主要な手法につき説明する.
地震の計測は大きな振子を持った機械式変位地震計から始まったが,耐震設計の必要上加速度型の強震計が開発され,そのデ~タは設計用入力地震波として使われでいる。一方,戦後の電子技術の進歩は電磁式地震計の性能を飛躍的に向上させ,地震予知への道も開いた.また最近の精密機械技術と制御技術,半導体技術の発展はサーボ型加速度計とコンピュータを組み合わせた万能型とも言えるディジタル強震計を完成させ,構造物の動特性の計測にも使われるようになってきた.
平成元年1月焉日,新日本製鐵(株)堺製鐵所で発生した4万m3LDG(転炉ガス)ホルダ火災事故は,約20km遠方まで地震に似た振動と爆発音(トーピードカーの水蒸気爆発)が鳴り響き,市民に大きな 不安を与えた. このホルダが倒壊した原因を調査した結果,昭和49年ごろに行われた水槽側板の“窓枠溶接部”が起点となって破壊が発生したものと判明した.
1989年3月水島石油コンビナートで発生した重油問接脱硫装置の爆発事故については,中国通産局および岡山県に設置された事故調査委員会によって調査された。本稿はその調査書に基づいてその要点を紹介したものであり,その原因となった装置材料の腐食ならびに保守についての問題点を挙げている.
1989年10月17日,米国カリフォルニア州サンフランシスコ市南東約96kmに震央をもつ地震が発生 した.マグニチュードは7、1で,サンフランシスコ湾岸の地盤軟弱地域を中心に,火災,建物倒壊,高速道路および橋梁の崩壊,多数の死傷者の発生など衝撃的な被害が発生した. 地震対策は,わが国にとっても重要課題であり,これらの被害状況と発生要因を現地調査をふまえ関連資料を参考にまとめてみた. これらの資料が今後の地震対策に少しでも反映されればと考える.