産業廃棄物行政は昭和45年以来「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」に基づいて行われてきた。しかし近年,廃棄物の排出量の増大と質の多様化,不適正処理の発生,処分場の不足などさまざまな問題点が表面化し,このような問題点への対応が求められている。このため厚生省では各種処理ガイドラインの策定やマニマェストシステムの導入を行ってきたが,現在「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」の改正も含め,制度の見直しを行っているところである.
最近,廃棄物問題が急に注目を集めてきた.しかし,有害廃棄物に対するわが国の対応はかなり遅れているといわざるを得ない.本稿では,廃棄物による環境汚染被害の例をいくつか挙げ,日本の有害廃棄物対策の現状を紹介するとともに,米国の対策や国際条約と比較して,日本の有害廃棄物の問題点と今後のあるべき方向を論じた.
廃棄物そのものが生活環境にもたらすリスク,処理に伴って発生する汚染物質が地域環境にもたらすリスク,それらによって地球環境にもたらすリスクと3つのタイプのリスクがある.これらのリスクの内容,発生のメカニズムやその大きさを決定する要因を整理した.廃棄物処理施設から発生するリスクに対処して,どのように対応管理しているかという,リスクマネジメントの現状について解説をした.
廃棄物の焼却に伴って発生する有害物質のうち,硫黄酸化物,窒素酸化物,塩化水素,有機塩素化合物,重金属の発生について述べるとともに,工学的対策を個々の汚染物質ごとに述べた.前3者については早くから有害物質として認められ,法的な規制とともに除害施設の設置が進んでいるが,後2者は規制が遅れ,その対策はいまだ不十分であり,最近の研究成果も加えて全体を概説した.
廃棄物は,国民の日常生活や事業活動上必ず発生するものである.高度な生産技術の進歩に伴い,発生する廃棄物は量的増加とともに質的多様化する傾向にある。このため,埋立処分された廃棄物による環境保全上の問題が懸念されるようになってきた、 本報は,埋立ごみの質が異なる埋立地において,流出する浸出水中の重金属や埋立地内部における重金属の挙動を把握し,浸出水処理施設での重金属対策や廃棄物を再利用した埋立地からの重金属の流出を防止する手段などを検討したものである.
有機塩素系廃棄物を処理する場合の安全性について,焼却処理を中心に文献調査を行った.その結果,有機塩素系化合物の熱による分解性は,酸素濃度やC,H,C1の比率により大きく影響を受けること,不十分な分解のおもな原因は,炉内の局所的酸素不足であることなどがわかった.したがって,焼却温度を高くするだけでなく,局所的な酸素不足を解消することが重要である.さらに,有害副生成物(ダイオキシン類など)の発生を防止できる安全な処理条件を求めるために,各種化合物の熱安定性および分解生成物の解明,焼却炉の燃焼状態の工学的記述などが今後の課題であると考えられる.
有機塩素系廃棄物の焼却処理技術の紹介として,最初に塩化ビニルモノマー製造における工場廃液を焼却処理して塩酸を回収する技術にっいて説明した.っぎに,有機塩素系廃棄物を焼却処理する場合の問題点を紹介した.さらにPCB,ダイオキシンなどの極微量で高い毒性を有する高度有害物の焼却処理として,液状廃PCBの完全,無害化熱分解処理のプロセスと装置について説明し,有機塩素系廃棄物 の焼却処理におけるダイオキシン類の生成についても考察した.
半導体産業では,従来の産業ではあまり使われることのなかった有害で危険性の高い化学物質が多種多様の形態で利用されており,それらによる新たな環境問題の発生が懸念されている.洗浄工程から生じる排水,特に有機系排水およびウェーハ処理工程で用いられる特殊材料ガスに基づく排ガスの処理を中心に工場周辺での実態調査の結果もまじえて述べる.事故災害の未然防止,不測の場合の被害拡大防止のための安全対策についても言及する.
医療廃棄物についての定義は,先に発表された厚生省のガイドラインの中に「医療関係機関における医療行為に伴って発生する廃棄物」ということで一応は決まっているが,あまりにも漠然としてとらえどころがなくかつガィドラインの対象をそのうちの感染性廃棄物に限定しているため,医療廃棄物全般の安全対策がぼけてしまう恐れがある.そこで他の廃棄物の中で特に危険と思われる検査・洗浄・消毒などの廃液および廃試薬などについても,感染性廃棄物同様に排出の実態とともにその取扱いと安全対 策について述べた.
廃棄物の処理においては,各種の災害なしに安全にそれを実施できることがまず第1に要求される.最近の災害統計をみると,、廃棄物処理の分野は他の産業に比べてその成績は好ましいものではない. 本稿では災害事例について検討し,その原因を整理した,そして,工程として最も問題なのは収集・運搬時であり,衛生上の被害として特に注目すべきは硫化水素中毒,酸素欠乏症,一酸化炭素中毒,有機溶剤中毒がガス災害の大半を占めていることを確認した,なお,災害対策などにも触れるとともに,廃棄物処理における労働衛生管理の要点を述べた.
放射性廃棄物の処理・処分は,原子力発電廃止措置に伴う解体技術の開発と核燃料サイクルのための再処理技術の開発とともに重要な課題の一つである.商業用原子力発電が1966年に運転開始してから約25年になり,より本格的に廃棄物の処理・処分の問題解決に取り組まなければならない時期を迎えている.放射性廃棄物の特徴と発生量,処理・処分の考え方,処理・処分方法について国内の現状を概説し た.
微量有害物質の環境への排出における廃棄物処理の位置づけを明らかにするとともに,微量有害物質汚染,特に廃棄物処理に伴う汚染の実態を紹介する. また,微量有害物質汚染のリスク評価の現状についてみるとともに,廃棄物処理に伴う汚染のリスク管理の考え方について述べる.