確率論的安全評価(PSA)の応用の現状と手法の現状について報告する.今年2月のPSAM国際会議の発表内容からPSAの利用と研究が広がっていることを示す。PRA Procedures GuideとNUREG -1150の内容を中心に原子力分野でのPSA手法の現状を説明し,新しい解析手法と不確実さ解析の現状 についても述べる.
本質安全回路のプロパンー空気混合気の点火限界において10kVまでの電源電圧と最小点火電流値との関係について実験的な解明を行った.特に20~300Vの電源電圧では,抵抗回路に黄銅の電極材を用いた場合,IEC Standard Publication79-11に示される最小点火電流値の50%以下の電流値で点火することが可能であり,かつ,本実験における点火限界値が上記IEC資料に示されている水素の点火限界値以下に位置することも見いだした.また,誘導回路にっいては24V-1mHにおける最小点火電流値が24Vの抵抗回路における最小点火電流値と同一値であることも実験によって見いだした.
近年の交通事故の増加に従い,自動車の安全性が社会的に取り上げられる機会が多くなっている。自動車の乗員保護装置として広く採用されているシートベルトに関する,特定の条件下での乗員に及ぽす物理的影響については数多く報告されているが,シートベルトの着用の有無が運転者の安全意識や運転行動に与える影響に関する報告はきわめて少ない, 本報文では,自動車が事故にいたる時系列モデルを示し,シートベルトの着用の有無が事故遭遇率に及ぽす影響の評価法を提案した.また,ある条件下でのシミュレーションをこのモデルに従って行い,シートベルトの着用率の違いによる事故遭遇率・交通事故死亡率の差を比較した.その結果,ある条件下ではシートベルト着用率の向上が必ずしも交通事故死亡率の低下にはつながらないことが判明した.このことから,シートベルト着用運動は適切な交通安全教育が伴って初めて効果を発揮することができ ることがわかった.
危険物輸送に用いられる容器については,「陸,海,空共通の危険物輸送に係る国連勧告」第9章に容器の性能基準などが規定されている. わが国においても船舶および航空輸送は条約に基づく法制化,陸上輸送においては消防法,毒物および劇物取締法が国際整合性を図るためこれを採り入れているので,第9章の内容と国内における対応を 紹介する.
本稿では,ME化など技術革新の進展する中で,搬送作業の自動化の手段として「動く産業用ロボット」ともいわれる無人搬送車の導入・運用についての安全対策ガイドラインを中心として紹介する.その基本的概念は,今後の自動化工場における無人搬送車システムの計画,選択,設置,教育において,フェールセーフに基づいた安全確認型の安全技術を盛り込むべきであるというものである.
近年の急速なコンピュータの普及と処理能力の向上により,安全工学の分野においてもコンピュータの利用が増大し,ソフト面の研究も拡大してきている. この中で,災害データベース構築とデータの継続的格納が行われるようになり,災害データベースを「災害原因の検討」や「被害予測シミュレーション」,「復旧戦略支援」に利用する試みがなされている.本報では,これら災害データベース構築と利用の研究の現状の概要を述べている.
ECではセベソ指令に続いて環境責任法が制定され,各国における大気,水,土壌,食品汚染への規制と責任規定がますます強化されつつある.強化の核心は環境責任法が厳格責任をベースとしていることであり,わが国安全法制とのかい離が心配される.保険会社から見たこのへんの事情を抄訳で紹介する.