安全性確保のための信頼性技術とフェールセーフ技術の本質は,それぞれ系の秩序性の維持の原理,系を無秩序な状態へと遷移させる原理に立脚している.後者は,事象が自然に収束する方向(エントロピーの極大化の方向)と一致しているため安全性を実現する方法として理にかなっている,しかし,フェールセーフ技術にもおのずから限界がある.両技術をうまく調和させて安全性を達成する方法について解説し,安全設計における信頼性技術とフェールセーフ技術の位置づけを定性的および定量的側面から 例証する.
高速度(1秒間に20画面)での撮影が可能なサーマルカメラを使い,灯油プール火災火炎の放射熱特性を明らかにした.サーマルカメラで計測したみかけの温度は,簡単な式を使って放射熱に変換して,熱伝堆型の広角放射計の測定値と比較し,変換の妥当性を確かめた。また,1秒ごとの灯油プール火災火炎の変動傾向や代表的な高・中・低の各放射強度火災の放射熱分布,70枚の熱画像データの平均値による放射熱分布を示すとともに,統計計算の結果についても述べ,灯油プール火災の放射熱特性を明ら かにできることを示した.
エチレンー空気混合ガスにおける215kHzの超音波の基本的な減衰特性を調べ,超音波送受波器を組み込んだ実証的なエチレンガス濃度検出セルを構成した、エチレンガス濃度と超音波の受信音圧との関係を調べた結果,空気に比較し,エチレンガス濃度の増加に従い超音波が比較的大きな減衰特性を示すことがわかった,特に,エチレンガス濃度がO~20%の範囲で受信音圧が著しく減少し,高濃度側でぽぽ一定となる固有の変化傾向が確認され,この特性を利用したエチレンガス濃度モニタの可能性を示した・また,温度および加湿などの影響についても明らかにした.
酸性雨による建物被害の観点から,ここでは神戸大学六甲台キャンパス内建物のコンクリートつららの調査と分析を行った.その結果,つららの発生は学部建物間の差異,コンクリート材質性能や建設過程の差異に最も大きく関係し,つぎに築後!0~30年の建物で,東または南に面して多く,その原因の1 つは当地夏季での海風やSO、などの大気汚染状況に依存している,つまり酸性物質濃度以外に雨量および気温の変動に関係していると思われた.
本稿は,公共事業の環境影響評価(環境アセスメント)にあたって 1)複数の評価項目(大気汚染,騒音など)の間のトレードオフも考慮した複合的な影響評価を行う こと 2)事業主と地域住民が合意形成を図る過程において社会的倫理性からお互いの立場をよく理解しあって,住民参加型の社会的意思決定を行うごと を支援するシステム方法論の1つとして,効用理論によるアプローチを解説する.
人口衛星は,構造,電子部品,電気部品,機械部品などで構成され,空気中から宇宙へ打ち上げられ,数年から10年以上に至る運用寿命が期待される.寿命は,宇宙で受ける環境条件によって左右されるが,それは構成する部品や形成した構造が,それに耐えるかどうかによって決定される.すなわち,設計時に環境とハードウェアの耐性の両方から寿命が決定される.したがって,具体的な設計前に,構成するであろう部晶,工作技術,材料の寿命および各種設計条件が,十分実証されるか,または設計されてい なければならない.
平成3年5月宇宙開発事業団角田ロケット開発センターにおいて,水素ガス流し試験中に水素ガスの 爆発事故が発生した。 事業団では,即日団内に不具合対応組織を発足させ,さらに外部専門家による事故調査・検討委員会を設置し,互いに連携して速やかに原因の究明のための調査が行われた. 本稿は,その調査報告書にもとづいて事故原因と再発防止対策の概要を紹介したものである.