自動車のエンジンを始動してアクセルを踏む.エンジンの回転数を上げていくにつれて,それまで,軽快でスムーズだったエンジン音がある点を境に不協和音を発生し,それがだんだん大きくなっていき,車体も振動を始める、これはカオスと関係があるのだろうか. 近年,カオスの発見をきっかけとして,非線形力学は新たな発展を遂げつつあり,カオス現象は物理学,工学のみならず他の多くの分野でも大きな関心を呼んでいる,ここでは,カオス現象の理解およびその応用(予知と制御)に資するために,カオス状態を実現できる最も簡単な力学系として強制振り子を例にとり,カオスカ学の基礎を解説する.あわせて,カオス状態ではエネルギー散逸率が減少する事例を述べ,不安定制御や安全管理への応用の可能性を示唆する.
工業製品で安全性が問われる振動事故の原因調査結果によると大半は非線形振動で,流体関連の自励 振動が多い。 振動事故原因究明のためには,まず現象をモデル化することが必要である.これは振動診断の第一歩で,いわゆる逆問題を扱うことになる. 的確な診断を行うには順問題としての振動学の多くの知識が必要である.ここでは診断のための予備知識として非線形振動を含め振動の分類法を記し,事例を掲げ,典型例につき説明した.
炭鉱坑内において,ガス湧出量を増加させるため,ガス抜きボーリング孔に水圧破砕を行った.水圧破砕実施後,ガス湧出量を連続計測し,無処理のボーリング孔と比較した。その結果,水圧破砕を実施した孔は長期間ガスが湧出する傾向が認められたが,積算ガス湧出量は無処理のボーリング孔より少ない孔もあった。そこで水圧破砕で発生したき裂の閉塞を防止するため,注入水に砂を混入し水圧破砕を行った。砂を混入した場合,明らかに積算ガス湧出量およびガス湧出速度の増加傾向が認められた.また水のみの場合と同様に,長期間ガスが湧出し,ガス湧出速度の減衰も小さいことが分かった.
平成3年5月14日滋賀県甲賀郡信楽町において発生した信楽高原鉄道の列車と乗入れのJR西日本 鉄道の列車の正面衝突事故は,死者42名,負傷者470名という犠牲者をだす大惨事となった.同種事故防止の観点からこの事故の問題点を考察したので報告する.司法責任についてはこれを論ずる立場にないので,あくまでも管理と技術上の基本的な問題点に限定して論じ,また,細部のハードについてもまだ知ることはできないので新聞などに報道された内容を基に考察した.
ガスケットは多く使用されているにもかかわらず,その選定には一般的な指針がなく,試行錯誤的に行っているのが現状である.このような場合,関連している因子のシール性能に関する影響度の大きさの序列を明らかにできれば・以降の対策が容易となる・本報では比例ハザードモデルを用いて,ガスケットの材種,厚さ,ボルト締付けトルクがシール性能に与える影響度を評価することを試みた,その結果,今回行った実験範囲では,材種,厚さに軽微な影響が認められるが,ボルト締付けトノレクの影響はないことがわかった.合わせて分散分析を行い交互作用の有無を調べたが,それは認められなかった.
設備診断技術を実際的に運用するためには,固有の診断技術の開発と適用を図るだけではなく,それらのべ一スとなる設備管理体制の整備が必要である、それら設備の管理体制にかかわる種々の項目について,現場の実態を整理し報告をした.ついで個別の技術の適用例について,いくつかの事例を報告している.
高圧ガス取締法に基づく申請業務を支援するエキスパートシステムを開発した.開発にあたっては岡山県水島コンビナート地区保安防災協議会の協力も得て,実際に申請を行う立場から検討をし,出力が即,申請様式となるなどの実用性を高めた, システムは申請用だけでなく,法で必要な処理能力などの計算機能,より深い知識を得ることや,知識の拡充を行う機能も備えており・教育をはじめ広範な活用ができる.なお,このシステムはすでに実際の業務に使用され事業所の担当者からも好評を得ている.
1991年9月,北方領土の択捉島,色丹島および国後島の環境調査として・飲料水,河川水,温畢水の溶存無機化学成分の分析を行った、 北方領土には大気汚染も重金属汚染も農薬汚染もなく,環境地球化学的バックグラウンドを求めるフィールドとして最適であった。しかし,住居地域においては水産加工工場の廃水や島民の生活雑排水による河川,湖沼,海洋の水質汚濁は深刻な状態であった。調査の結果,天然水の川水を処理することなく飲料水としている水道水は,ほとんどの試水において日本の水道水の水質基準以上のCOD,アンモニウムイオンおよび重金属が含まれており,生活雑排水によって汚染されていた.
役務責任(sevice liability)という言葉がECの安全法制の中に現れたのは今から数年前のことである。日本では従来ほとんど話題にされなかったこの用語も,検査技術の進歩とヒもに現実のものとなった.今後検査,診断,設計の機械化とともに発生する多くの損害事例に関連して,この用語が用いられることになろう.