構造物の正しい設計には気象の影響を正しく評価することがきわめて重要である場合が多い.しかし気象に関するデータの素材がそろっていても、それを直接に使用することができない場合も多い.この総説では最近各工学分野で採用されることが多くなっている,信頼性または確率論に基づいての設計法について原理を述べ,その特徴について触れるとともに,この設計法に必要とされる気象データの取扱いを通して,気象と工学との接点は気象分野の知識と対象工学分野および荷重を発生させる現象の知識の融合にあることを強調している.
人間はおもに視覚情報や聴覚情報を用いて周りの状況を把握し,判断を加え外界に働きかける.地下空間内での作業は,地上とは取り巻く環境条件が大きく異なり,音情報は作業者が正確で安全に作業を行うために必要である.地下空間内での音の伝搬はその伝搬過程で地上と異なる諸要因の影響を受け,伝搬形態に差異が生じることが想像される,音情報の正確な伝達には作業環境の音響伝搬特性を知ることは重要である。そこで,通気のある坑道内で音響伝搬特性を計測する実験と被験者による音声情報の聴取試験を行った.その結果,音の伝搬方向と通気方向の相対的関係で伝搬形態が大きく異なり,風下方向で減衰量が大きく音声情報の聴取率も急速に低下した、また,坑道内の音の伝搬に音線モデルを適用し,音響エネルギーの観点から上記の実験結果を裏付けた.
応力・ひずみ関係が非線形弾性特性をもつ材料からなる連続体柱が,軸方向一定圧縮荷重を受けるときの動的安定問題における転移不安定現象の存在の有無を調べた,解析にあたっては,連続体についての非線形弾性の曲げの問題から考察し,柱の座屈平衡方程式と境界条件を誘導した.そして,これを非線形偏微分方程式の境界値問題として差分法によって数値的に解いたところ,転移不安定性を示す数値 解の存在が確認された.
金網型フレームアレスターを用いて,圧力損失および消炎性能に及ぽす目詰まりの影響について検討 した. その結果,圧力損失は目詰まり部の面積に比例して増加し,非目詰まり部の断面積の減少を考慮することにより,目詰まりのある金網にも目詰まりのない場合と同様の実験式が適用できることを示した。 また,アレスターヘの火炎突入速度のうち,消炎可能な最大速度で消炎性能を評価すると,その性能は目詰まり部の面積の増加とともに減少し,減少の度合いは目詰まりパターンに依存することを示した.これら圧力損失と消炎性能両者の目詰まり率に対する変化は,アレスター内での火炎伝播速度の増加に起因することを明らかにした.
昭和34年9月26日,東海地方に襲来した超大型の伊勢湾台風は,満潮時刻と重なり,過去の経験をはるかに越える高潮と暴風により,愛知,岐阜,三重の3県下に死者約5000人,被災者153万人に達する宋曽有の被害を与えた。とりわけ名古屋市南部では高潮とさらに流木による被害が大きく死者約2000 人,被災者52万人の大災害となる.東レ㈱名古屋工場では,1m浸水し,操業再開におよそ1か月を要する大きな被害を蒙った.その被筈状況と事後の対策について概要を紹介する,
がいしは電力施設の外部絶縁の大半をになっており,送電の安全確保に重要な役割を果たしている,が1・・しにとって最も重要かつ厄介な問題に,塩害と呼ばれる海塩の汚損がある。 本稿ではがいしの汚損について,わが国における実態を紹介するとともに,汚損フラッシオーバ特性と塩害事故,およびがいしの汚損対策として広く採用されている絶縁強化策や活線洗浄方法などについて述べる.さらに,汚損対策を実施する上で重要となる汚損の管理と汚損量の測定法について紹介する.
JR東日本では,強風による事故を防止するためのソフト面での対策として,強風時の運転規制のあり方の検討を進屍)ている.その一つとして,より適切に運転規制を解除することを目指して,東海道本線根府川駅構内の白糸川橋りょうを事例とする,強風の発生・終、慰の予知手法について研究している.気象学的なアプローチからの調査検討を実施した結果,強風の発生・終息と相関の高い気象現象を抽出することができ,課題はあるものの白糸川橋りょうの強風の発生・終息、の予知手法の基礎固めができた.
ドイツ政府は労働者保護のため,ディーゼルエンジン排気ガスを有害物質として扱い,発がん性物質に関するMAK値(安全のための最大許容濃度)リストに記載した(ただし濃度の記載なし).この配慮はディーゼル排気ガスの影響下で労働に従事するすべての労働者に適用される.もし日本でこの種の配慮が実施されるとすれば,高速道路の料金所,ディーゼル機関を使用している工場,都市交通とその整備工場,船舶/海上交通,交通渋滞の多い道路に近接する商店や事業所で働くすべての労働者がこれ に該当する.