安全解析は役に立つのかという観点から,問題点を明らかにし,その対応を検討した.最初に,安全解析の歴史と主要な手法を概観した.つぎに,生産技術の重要性を述べ,安全解析は生産技術と密接な関係のあることを示した.安全解析のアプローチとしては,アメリカ,ヨーロッパのトップダウン型,そして改善による日本のボトムアップ型の2種類があることを指摘し,その特性を明らかにした.役に立つ安全解析を確立するために,この両者を融合した階層型安全解析を提案し,一つの解を示した.
最近でも記憶に残るような化学物質の発火による事故がいくつか起きているが,このような事故は自分たちの扱っている物質の発火危険性を熟知し,それに対応した取扱いをしていればほとんどが回避できる,あるいは被害を最小限に留めることができるはずである. ここでは化学物質の発火危険性を自己反応性・可燃性・混合危険性に分けて,それぞれの発火危険性を評価する方法についてまとめた,
化学物質の有害性のリスクアセスメントのプロセスを発がん性物質と非発がん性物質に分けて紹介し,EPAが行っている発がん性のリスクの推算値は安全度を非常に高くみた値であることを説明した.リスクアセスメントを行うときのおもな問題点はデータの不足と不確定性であり,今後研究の進歩と国際的協調により,これらが解決することを期待したい.
多くの安全性解析手法が開発されており,各産業界では,多様な安全性解析が実施されている.本稿では,これらの中から,石油,石油化学,化学プラントなどのプロセスプラントの安全性解析に使われている代表的な解析手法を紹介し,プラント産業界における安全性解析手法の適用方法をまとめた.
システムの安全性を解析・評価するシステム工学的枠組みである確率論的リスク評価で,リスクを表現するハザードの同定や事故シナリオの導出,その発生確率と損失の定量的評価を行う際に必要なデータについて考え,いくつかの安全解析を支援するデータベースを紹介する.また,過去に蓄積された解析結果の有効利用の立場から,システムの設計・運用や保全への利用,他のシステムヘの応用のためのデータベース利用について考察する.
安全解析によって得られる解析や評価結果の妥当性を検証する手段として,ベンチマークテストと呼ばれるものがある,本報では,確率論的安全評価やリスク評価に関係した各種のベンチマークテストについて紹介するとともに,今後確率論的安全評価がプラントの有用な分析技術および安全管理上の意思決定に利用できる技術として発展するための条件について記述した.
生産設備の中の働く労働者の保護を目的とする産業安全のカテゴリーと多少ずれたところに,システム全体の安全の維持向上をめざずシステム安全工学がある.本報では,システム安全発生の背景およびシステム安全の解析手法を特にシステム構築の作業の流れの中で,それぞれの手法の果たす機能を中心 に触れた.
放射性物質を内蔵している原子炉施設は潜在的に大きなリスクを有しており,それを顕在化させないよう一般産業施設以上に安全確保対策に力を注いでいる.また,それらの安全確保対策の妥当性を確認するための安全解析についても,基本的な方法,達成すべき条件などが指針,基準などにきめ細かく整 備されている、 本報では,実用発電用軽水型原子炉施設の場合を例として,安全確保の考え方と安全解析について,指針,基準などを踏まえて説明する.また,最近活発となってきた確率論的安全評価(PSA)について も触れる,
化学プラントの安全解析について住友化学における実施例を紹介する.安全解析の基盤技術としての文献・情報の活用システム,安全指針類の編集,安全防災研究,定量的手法の導入について紹介し,化学プラントの計画段階から安定操業に至る各段階で実際に行っている安全解析(防災アセスメント,プロセス防災検討,反応解析など)の実施状況について述べる.
化学会社においては,化学プラントの新設,変更,改造などを実施する場合,その規模,内容により企画段階から工事完成までの各段階で安全性評価をはじめ種々の検討を実施している.ここでは安全解析について広い意味で化学会社で行っている内容について説明する。このように,システム的な解析法は新設や改造の際には,リスクの洗い出しには有効であるが,既存の設備においては,プロセスKYがオペレーター一人一人の安全意識のレベルアップとも相まって有効と考えられる.
安全係数と非破壊確率の比較から,信頼性解析による安全性確保の手段がより合理的であることを述べ,ついで,一次近似二次モーメント法,ベィジァン信頼性解析について簡単にふれた.実物大のモデル試験による信頼性実証試験を例にとり,ベィジァン解析の一つの利用法を解説した.
安全解析がわが国に紹介されて以来,一部には当該手法の効用を認める一方,「客観的な証明が欠けている」などの批判も少なくない,そこでEC諸国において危険性を伴う産業活動に対するリスク管理の手法として広く利用されている現状を紹介し,リスク解析がどのように位置づけられているかを解説した,また今後は多様な価値観が交錯する安全工学のいろいろな分野で柔軟に活用しうる可能性を指摘した.