日常生活のなかで,無意識のうちに行動することで危機を逃れたことに気づき驚いた覚えは,だれにでもあるであろう。これも知らぬ間に擦り込まれたパターンの効用であろうか.人間はパターン認識にすより,複雑なシステムを安全に操作し得るようになる.その半面,無意識の行動は安全の面から考えるとはなはだ問題である。この人間の持つパターン認識能力をコンピュータによって模倣することが,近年活発になったニューラルネットワーク研究の目標であり,種々の分野で応用されはじめている, 本稿では,ニューラルネットワークを利用した異常診断システムの概要とその適用例について述べ,安全確保への応用可能性について示唆する.
都市ごみ焼却施設の電気集塵器(ESP)灰を用いて,窒素雰囲気と空気雰囲気におけるダイオキシン類の生成と脱塩素化について反応温度250~500℃で比較実験を行った.その結果,酸素はESP灰中においてダイオキシン類を生成させる触媒の活性を高める作用があり,空気雰囲気中にダイオキシン類の生成量は300℃で最大であることが分かった, 窒素雰囲気の場合,300℃においてダイオキシン類は脱塩素化反応が起こり,45q℃以上の高温ではダイオキシン類の脱塩素化および分解と水素化反応が起こる.これらのことから灰中のダイオキシン類の熱分解装置の設計において加熱部分の灰の雰囲気から酸素を除くことによ弘低温で効率よくダイオ キシン類を無害化できることが明らかになった.
FMEAのシステム故障確率を評価する際の評点法の一つであるRPN(リスク優先数)法は,評価項目の評点の積の大小により対策優先度を決めているが,積をそのまま改善効果の評価に使うことは尺度的に問題がある.この論文は,評点を!0のべき数により,オーダとして見積り,積の代わりに和をとる方法を提案したものである・FMECAの致命度評価モデルと対策のコスト有効性を考慮した有効度モデルの二つの定量モデルを基礎に,RPN法の問題点とこの方法の特徴を示した.
潜在危険をできるだけ除去または回避する,という安全の基本原理に基づいた本質安全増し設計について概説している.方法として,ヒューマンファクターの種々の配慮,化学物晶の強化および代替によってなじみのよいプラントにする,などについて具体例を挙げて説明している.これらを発展させるために,プラントの計画および設計のあり方,規制当局による奨励,企業管理者の感興などが必要である,ことを述べている.また,原子核工業から学ぶことが多々ある,無対応量指標によって本質安全増し設計が実行されているかどうかチェックできる,など提案している.
ECでは永年「労働者保護」の面で共通の価値観調整を行ってきた.多くはEC理事会指令として結実したが,近年さらに相互交流のために加盟国内情報ネットワークを整備し,多くの災害情報を蓄積しつつある。留意すべき点は「健康損害」の構成概念が「労働力売買」の概念,つまり「賃金論」とリンクしている点である.つまり「賃金とはなにか?」という毎年繰り返される基本的な問いと深くかかわっている.今後,労働の場をその責任とする「健康損害とその補償」に関する議論がいっそう高まろう.
安全工学協会の第2次石油精製・化学プラントのリスク制御訪欧調査団が,ユ991年秋,スイスのサンド社を訪問し,1986年11月の同社事故後の対応について深い感銘を受けたが,その日本における医薬品生産拠点として/981年に開設されたサンド薬品(株)埼玉工場を,損害間題研究委員会として訪問し,同社の安全環境に関する基本理念と活動状況にっいて知る機会を得たので,その概要について述べる.