厚生省,通商産業省および労働省より「化学物質の安全性に係る情報提供に関する指針」が示され,平成5年4月より行政指導が実施されている. その主体は,危険有害陀情報を記載した「製品安全データシート」を作成,交付することにより,化学物質を製造しまたは取扱う事業者力精報の共有化を行い,化学物質に起因する事故災害などを未然に防止するために役立てようとするものである、 本稿は作成対象,記載項目および注意事項などについて概説している.
熱収支式で特徴付けられる化学反応系の熱的安定性を解析した.その結果,qを発熱速度の温度微分, Uを総括伝熱係数,。Aを伝熱面積として,μ=1一q/UAが安定性の指標となることがわかった.μ≧0に対して系は安定,μく0に対して系は不安定である.μの値の大きさは,系の安定性の程度を表 している。そこで,μを安定度指数と定義する. 反応系の状態は刻々と変化するので,μを理論的に求めることは難しい.そこで,著者らは実験的にμを導出する方法を提案した.すなわち,△Teoの環境温度の変化に対する系の温度応答を△Tsとする と,μ=△Teo/△Tsである。
円孔を有する「0°/90°」2S積層CFRP材料の一軸引張り試験および疲労試験による,特に低応力の繰返し荷重下における損傷過程をAE法と赤外線応力画像測定法および軟X線を用いて観察した. 「0°/90°」2S積層板の引張り試験過程でのAE発生は,最大荷重の67%で生じ,得られたAE信号振幅は広い範囲に分布していた.また,疲労損傷過程では見られない高い振幅のAEが発生した.一方,低応力での繰返し荷重下(疲労)では,AE振幅は損傷初期では比較的低いものが,さらにき裂進展に従って,中程度の振幅をもつものが観察され,一様引張りと繰返し荷重とでは異なる損傷機構が生じて いることがわかった. 疲労損傷の初期形態は円孔縁から発生する90°層内のトランスバースラミナき裂であり,そのような表面層の90°トランスバースラミナき裂の成長過程が赤外線応力画像測定法によって検知・観察できることがわかった,赤外線応力画像測定法は,CFRPの損傷過程の実験的評価においてきわめて有効な手 法であることが示され,「0°/90°」2S積層板の疲労における各応力レベルでのトランスバースラミナき裂 の進展と損傷過程を,赤外線応力画像とAE振幅分布特性の変化より追跡できることを明らかにした.
最近,水銀による地球規模の環境汚染が話題となっている.水銀汚染を議論する場合,環境の汚染レベルの指標として有効である頭髪中の水銀含有量が用いられる.しかし,環境汚染の比較対照の基準値として,30年以上前の調査データに基づいた平均水銀濃度6.02ppmが用いられている.本研究は金アマルガム分析法によって,人の集団における頭髪中の水銀濃度を測定し,現在のわが国の一般住民の標準レベル値を算出するとともに・頭髪中の水銀濃度と疾病との関係を考察した.その結果,関東地方の日本人256人の健康人の頭髪中の平均水銀濃度は2.49ppmであった.また,57名の痴呆患者の頭髪中 の水銀濃度は同年齢層の健康人の約3倍量であった.
1976年にイタリア・セベソで発生した毒性物質放出事故を契機として,ヨーロッパ共同体(EC)はセベソ指令を発令した.それを受けてEC加盟国は化学プラントの安全性を確保するための規制を国内法に組み込んだ.一方米国では,1984年のインド・ボパールでの事故を契機として,環境庁(EPA),労働省の下にある労働安全健康庁(OSHA)が法規制の見直し作業を開始し,1992年に労働安全健康法の下に化学プラントの安全性を確保するための基準を制定した.本稿では,海外での巨大事故を契機とした欧米各国の行政の対応などを紹介する.
装置産業の一例として,LNG基地における信頼性評価の事例について報告する. LNG基地およびその設備の信頼性を定量的に評価できれば,設備投資や設備の稼動計画など,LNG 基地における戦略的な経営判断を支援することができる. 今回新しく開発した手法は,LNG基地能力の減少量を故障判定基準として,不稼動率と故障頻度を計算する「システム」の信頼性評価手法である.その評価の枠組みと実際のLNG基地への適用事例について紹介する.
去る平成4年12月1日,生活環境審議会より「今後の水道の質的向上のための方策について(第二次答申)一水道水質に関する基準のあり方 」が答申され,厚生省では同答申に沿って,新たな水質基準省令および関連通知を平成4年/2月21日付で制定した.今回の基準見直しは,水道法に基づく水質基準が昭和33年に初めて制定されて以来,基準の枠組みを含めた大幅なものである.