ライフサイクルアセスメント(LCA)はISOによる国際標準化の検討も進み,製品などのライフサイクルを通じて与える環境への負荷の評価技術として定着しようとしている.本稿ではLCAを実行する際の技術的な手順とポイントを整理し,その中でも特に取扱いが難しいアロケーション,リサイクルなどの方法上の課題について説明を加えた.
幸福な生活を送る権利が,日本国憲法第25条「生存権,国の社会的使命」によって定められている.これを本質から脅かす脅威,すなわち「幸福への脅威」ないしは「無事であることの破綻」には,「安全」が大きく関係している,この安全を脅かす要素には内的なものと外的なものがあり,内的要素としてがんなどの疾病,外的要素として自然災害や交通事故などの不慮の事故がある. 本稿は地域を対象としたリスクマネジメントの概念を紹介し,さらにすべての外的危険要因である「不慮の事故および犯罪」による被害を考慮することで,地域の危険度の指標化を試み,総合的な観点から地域の安全に関する問題を提起したものである.リスクマネジメントや危険度マップの概念・および文化的視点からの安全の把握は,地域を対象とするばかりではなく,企業や設備,さらに個人の安全問題を明確にする手段となりうるものと思われる.
可燃物タンクヤードにおける火災時に,隣接するタンクや設備に対して火災からの熱放射の影響を予測しておくことは,設計ならびに防災対策上重要なことである.本報ではモンテカルロ法を用いたプール(タンク)火災における熱放射伝熱解析の第1段階として,既往の解析値と照合し適用性を検証するとともに熱放射体の火災モデルとして使用されている,平板モデルと円筒モデルについて解析し,比較 検討した. 本手法により計算した局所値は理論解析値と良好に一致し,適用性が認められる.また本手法では適正な計算条件を設定すれば,1回の計算によって受熱対象面の局所値の分布が得られる.火災モデルとして平板モデルと円筒モデルを比較すると,一般に平板モデルのほうが大きい値を示すが,多くの場合大差ない.ただしタンク火災ではタンクに近接している受熱面に対しては円筒モデルの使用が勧められる.
道路粉じんが道路端からどの程度の範囲にまで影響を及ぼレているかを明らかにする目的で,降下ばいじんの水平,垂直方向の分布を測定するとともに,粉じんの拡散理論計算により影響範囲の推定を行った.スパイクタイヤ使用規制以前には,冬期の道路端で降下ばいじんが大幅に増加する傾向がみられたが,道路から離れるに従って降下ばいじんは急激に減少する傾向を示した.降下ばいじんの拡散式として,粒子の沈降と,地面での反射がないものと仮定して誘導した理論式が,降下ばいじんの距離減衰傾向とよく一致することが明らかとなった.降下ばいじんからみた道路粉じんの影響範囲は,測定結果と拡散理論計算のいずれからも,道路から30~40mの範囲内であると判断された.
酸化性液体の危険性判定試験方法にっいて,消防法令に定める燃焼試験法を,弱酸化性液体の試験にも適用できるように改良して,硝酸,過塩素酸,過酸化水素および種々の酸化性液体について試験を実施した.そして,これら酸化性液体の濃度と燃焼時問の関係などを求め,この改良試験法の妥当性を吟味した.さらに,燃焼試験の化学反応から燃焼熱を計算し,理論的な断熱温度パラメータを求め,有炎燃焼時問はその断熱温度パラメータに依存することがわかった.
化学プラントは各種の危険物質とこれを保有するユニット群が集積している.事業所の防災体制の目標は危険規模の大きさに基づいて設定することが望まれている.危険規模は多くの要因に支配されているが,防災体制の目標の設定に際しては危険規模が総合的に評価でき,かつ一貫したわかりやすい形で表現できることが求められている. ここでは,危険規模の平明な表現方法として言語表現(ファジィ推論)を用いる方法を例示した.神奈川県内にある事業所群を対象に,言語表現を用いて潜在危険規模,発生被災規模,想定被害規模を例 示した.
企業が海外に進出し現地で操業を開始するためには,設備や施設の安全性について,初期の設計段階から注意を払っておく必要がある.その際検討すべき基本となるリスクに「火災・爆発・労働災害』の 三っが挙げられる. シリーズ第6回目は,「ドイツ」を取り上げ,上記三つのリスクに関する安全防災法令規則の種類と概要,その運用実態について紹介する.
昨年,製油所内の屋外タンク貯蔵所において,ポンツーン内部の塗装工事中の爆発火災により,作業に従事していた塗装工2名が死傷するという労働災害が発生した,市原市消防局では,本災害を重視し,災害原因の究明と同種災害の再発防止対策の樹立を図るため,事故調査と検討を行った. 本稿は,爆発火災事故による被害状況と災害原因の推定を通して明らかにされた問題点およびその対策などの検討結果にっいて紹介するものである.