阪神大震災で危機管理が叫ばれているが,ここで述べるリスクマネジャーはもちろん危機管理も担当するが災害の事前予防がおもな仕事である。まずなにが起こるかわからない初めての事故例を取り上げ,いかなるシステムがどんな対応をしたらその事故は起こさずにすんだかを考察し,実際リスクマネジャーがいたら事故は防げたか否かを検証した.つぎにプラントの計面・建設から運転・保守に至る間にリスクマネジャーがいかに安全上大切かを述べた.しかし,リスクマネジャーも自己の安全性判断には甘くなる恐れがあるので安全性の判断は第三者機関に轟たらせる.損害保険との連動があればさらに効果がある.プラント関係の過去の大事故もリスクマネジャーの活用で防げた可能性が大きい.安全と性能や経済とはトレードオフの関係にあるため本来同一人の任務とするのは不適当であり,ラインから切り離した組織としてリスクマネージメント部を設ける必要性がある.現行の安全規制は技術導入時代にはおおいに役に立ったが,制度疲労を起こしており,さらに,初めての事故防止には無力であるから,企業側の自主保全体制が整った段階で新しい制度に切り替える必要がある.
ボロンと13種類の酸化剤の混含系について静電気感度試験を行った.それらの感度の最小値は,発火確率50%の発火エネルギーで約10μJから320mJと広範囲にわたった.ボロンー酸化剤混合系の最小50%発火エネルギーは,約100mJを境にして二つに分類された.一つは,それより高い発火エネルギーで,試験電気回路は50kΩよりも大きい直列抵抗と0.9mmよりも長い電極間隙長で鋭感な混合系である.もう一つはそれよりも低い発火エネルギーで,20kΩよりも小さい直列抵抗と0.2mmよりも短い電極間隙長で鋭感な混合系である.
土-壌中のBaP含有量の季節変動にっいて調べる目的で盛岡,釜石両市内の土壌を期別に採取して分析を行った.土壌中のBaP含有量は,冬期>春期>秋期>夏期の順であり,特に夏期のBaP含有量がほかの季節と比較してかなり低くなる季節変動がみとめられた。その原因の一つとして,紫外線によるBaPの分解が考えられることが,紫外線強度の測定およびBaP含有量の経日変化の測定から明らかとなった.土壌中のBaP含有量を測定することにより,その地域のBaPによる大気汚染状況をおおむね把握することが可能である.ただし,夏期においては,土壌中のBaPはほかの季節に比べて低くなっている事実から,大気中のBaP濃度を必ずしも反映していないことが考えられる.
合成樹脂などの燃焼性試験方法について,日本工業規格に定められている酸素指数式燃焼試験方法を粒状の合成樹脂類を試験できるように改良し,実際に市場に出回っている粒状合成樹脂類に対して適用した.また,これら粒状合成樹脂類に対して,従来の酸素指数の求め方と異なる新しい方法により酸素指数を求めた.この改良試験方法の妥当性を吟味するために,いくつかの試料に対して従来法により求 めた酸素指数と比較検討した.
欧州の化学プラントの安全に関する指令(セベソ指令)が改正される.新指令に関する欧州委員会提案では,(1)土地利用計画の策定の義務化,(2)重大事故防止ポリシー策定と安全管理システムの導入がはかられ,従来に増して管理面が強化された.また,土地利用計画への住民の参加が打ち出されている.ここでは,欧州委員会ジョイントリサーチセンターへの滞在期間中における討論をもとに,改正提案の概要と上記(1),(2)について述べ,新指令の導入後の展望を考察する.
前回の米国に引き続いて,欧州の化学系廃棄物の処理施設を訪問し,最新の廃棄物処理技術およびマニフェストシステムの状況などについて調査した.欧州では廃棄物の最終処分場が不足しているなど,日本と同じような条件の国が多いことから,産業廃棄物などは焼却を中心とした中間処理が広く行われている.このため,焼却処理技術の開発に積極的であり,この部門の技術レベルは世界最高水準にあるなど,日本にとって参考となる点が多い、 本稿では,今回訪問した諸機関が実施している最新の廃棄物処理技術について報告する.
ラベルのはく落などにより内容が不明となった化学薬品が,教育・研究機関の実験室などに蓄積されてきており,それらの発火・爆発性や毒性などの潜在危険性が指摘されている.しかし,不明薬品は大学などの実験廃棄物処理施設でも回収対象外であり,処理できないまま放置されているのが現状である.東京大学工学部では,東京大学環境安全研究センターの協力を得て不明薬品の調査,分析および処理を実施した.ここでは,その過程で明らかとなった,不明薬品の蓄積状況,および分析方法,処理の問題点について考察した.
企業が海外に進出し現地で操業を開始するためには,設備や施設の安全性について,その設計段階から注意を払っておく必要がある.その際検討すべき基本となるリスクに『火災・爆発・労働災害』の三つが挙げられる. シリーズ第10圃目は,「オランダ」を取り上げ,上記三っのリスクに関する安全防災法令・規則の種類と概要,その運用実態について紹介する.